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第40話 初めてのオリジナル作品

「それじゃあ人数も増えて早速だけど、みんなは何の映画作りたい?」


 先輩が皆を見回すように問いかけると、真っ先に陽毬が挙手をした。


「はいはいはい!ウチ、ロミオとジュリエットやりたい!めっちゃロマンチックな話だしよくない!?」


 ロミオとジュリエット、か。


 シェイクスピアの代表作であり、知らない人の方が少ないくらいの名作だ。


 大抵の人は話のあらすじを理解しているだろうしそういう意味ではやりやすい話である。


 しかしあれは恋愛ものでロミオ役とジュリエット役になった2人が気まずくなったりしないかだけが心配になる。


 振りとは言えキスシーンも入ってくるわけだしな。


「あ、確かにロミジュリいいかもね。あたしも賛成」


「めっちゃいいじゃんロミジュリ!やるならあたしジュリエットやりたいかも!そんで湊がロミオやったりして!」


 友里と彩葉の2人も基本的に賛成のようだ。


 ただ彩葉が最後不穏な事を言っていたのでそこはきっちり否定しておかなければならない。


「俺は主役はやる気ないからな。やるとしたら海斗だ。うちの主演女優と主演男優は彩葉と海斗って決まってるからな」


 俺はそう落ち着いて彩葉に告げただけなのに彩葉は何故かムクれた顔をしながらこちらを見る。


「えー、湊がロミオやらないならあたしはやっぱ反対にする」


 180度意見を変えた彩葉に対して皆からは呆れたような視線が注がれる。


 陽毬が「それじゃあ仕方ないかぁ」と言った事でロミオとジュリエットの意見は却下となった。


 そこで俺の隣に座っていた風間が少し考える姿を見せてから口を開く。


「……せっかくだしオリジナルを作るのはどうですか?」


「「「「「「「「オリジナル?」」」」」」」」


 風間以外の俺を含む8人全員がオウム返しの如くそのまま聞き返す。


「はい。確か花園先輩は脚本を書けるんですよね?なので先輩が書いた脚本を元に映画を作るのはどうかなって」


「あーなるほどね。それ面白そうだね」


 風間の意見に真っ先に賛同したのは海斗だった。


「確かにそれはいいかもな。先輩の実力も見てみたいし」


 俺も海斗に続くように賛成を示しながら先輩に向かってチラリも目線を送る。


「う、結構恥ずかしいけどみんなが賛成するなら、私も頑張るつもり」


 先輩は可愛らしく拳をギュッと握りながら緊張した面持ちであたりを見回す。


 みんな概ね賛成のようで反対意見を述べるものはいなかった。


「それじゃあ次はジャンルだけどどうしたい?」


 先輩の言葉に対して次は各々勝手に意見を話し始める。


「やっぱりここはスポーツ一択だろ!」


「それ好きなの健人だけだから」


「何だと!?秀!じゃあお前は何がいいんだ?」


「俺はやっぱ青春系かな。なんていうか友情を感じさせる物語っていいよね」


「えーでも風間、青春と言えば恋愛っしょ。友情とかより恋愛の方が絶対今人気あるって!」


 彩葉はやっぱりJKだからか恋愛ものがやりたいみたいで、それに友里と陽毬の2人もしきりに頷いている。


 それに対抗するより風間は友情の何がいいかを熱く語り始めているが、それを無視して俺は海斗に視線を送る。


 こういう時の海斗は一切口を開こうとせず、みんなに任せるままだ。


 自分は一歩引いて傍観者の立ち位置へと行く。大人びた対応と言えばそれまでだがもっと自分の意見も曝け出していいと俺は思う。


 そんな事を考えている間に風間と3人娘の話し合いバトルがどんどん苛烈を極めていった。


 聖先輩はどうやって止めようかあたふたし始めたし、二宮先生は興味なさそうに教師としての作業に取り掛かっている。


 俺はここらで一旦落ち着かせる為に声を発する。


「お前ら一旦落ち着け。先輩も困っているから。それでとりあえず学園ものから離れて異世界ものをテーマにするのはどうだ?」


「異世界もの?」


 彩葉がキョトンとした顔をするので俺は今頭の中に描いた簡単な構想だけ話す。


「最近漫画とかによくあるだろ?勇者が魔王を倒すやつ。あれを撮るのはどうかって思ったんだ」


「あ、それめっちゃいいかも!」


 俺が話題転換の為に話した構想を気に入ってくれたのか、先輩がこれだ!っていう顔をしながら立ち上がった。


 他のみんなの顔を見る限り反対もいなさそうだったので今までの話し合いは何だったのかというレベルで話が纏まった。


「それじゃ物語の構成とかキャラクターとかを考えて配役決めまで今日終わらせちゃお!」


 話が纏まると先輩は仕切り始めてくれるので頼りになる。


 こうして俺たちは次の議題へと話し合いの舞台を移すのだった。

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