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第38話 演技指導依頼

 5月も中旬に差し掛かってきた頃、俺は彩葉に呼び出しを食らっていた。


 場所は屋上であり、ちょうど昼休みの時間だ。


 普段は侵入禁止な為他に人は見当たらない。


 ただ侵入禁止とは言っても扉がボロく簡単に開けやすいので一部の生徒の間では案外使われてたりもする。


 状況等を考えると、もしかして告白なのでは?と考える場面かもしれないが彩葉の顔を見ればそうでない事が分かる。


 俺は一向に口を開こうとしない彩葉を見て痺れを切らしこちらから話を聞く事にした。


「それで何の用だ?彩葉」


 俺がそう問いかけると彩葉は一度口をギュッと結び、それから緊張した面持ちで口を開く。


「えっと、湊に演技指導をして欲しくて……」


 何故か自信なさそうに声も小さくこちらをチラチラと見てくるばかりだ。


 そんな事でいいのなら頼まれればいくらでもしてやるつもりだ。


 彩葉が必要以上に緊張していて、必要以上に勇気を振り絞ったというところは理解できる為俺は真っ直ぐと彩葉の瞳を覗き込みその想いに答える。


「そんな事でいいならいくらでもやってやる。それで何で唐突に演技指導なんだ?お前はモデルだろ?」


「まぁそうなんだけどね。実はあたし、6月の中旬に行われるドラマのオーディションに申し込んだんだけど、今のあたしの実力じゃ不安で湊に演技指導してもらったら上手くなるんじゃないかって思ったんだよね」


「なるほどな。まぁ放課後の暇な時間であれば大丈夫だが、それでいいか?」


 俺は彩葉の話を聞き、特に断る理由もないので放課後の空き時間を使う事を約束する。


「ただ俺がアルバイトある日や彩葉が仕事ある日は無理だろうからそれ以外の日になるな」


「うん、全然それで大丈夫だよ」


「あとは映画研究部は普通に部活動だし優先せざるを得ないけど構わないか?」


「それもいいよ。ただ、その、終わった後の帰りとかに少しだけ演技指導してもらえたら嬉しいかも」


「それくらいなら全然構わない」


 俺がそう言うと彩葉は花を咲かせたような笑顔に変わり、嬉しそうに俺の目を見つめる。


「ありがと!それじゃそーゆー事でお願いね。オーディション終わった時には合否に関係なくあたしが報酬としてデートしてあげるから楽しみにしてて!」


 どこか恥ずかしそうな顔をした彩葉が頬を染めながらそう言葉を発する。


 それに対して俺は別に報酬を要求してないのもあってかあまり彩葉の負担にならないように言う。


「いや普通に菓子折りとかでいいから。なんなら自販機のペットボトル1本とかでもいいし」


 俺の言葉を聞いた彩葉はむぅとどこか不満そうな顔を俺に向けてきてから「絶対デートしてあげるから!」とだけ言葉を残してこの場を去っていった。


 別にそこまでデータに拘らなくてもいいと思うんだが、と俺は思ったが口にする事なく彩葉の去っていた扉を見つめていた。


 彩葉と時間差で教室に戻ると俺はまだ昼飯を食っていない事に気づき、鞄からスティックパンを取り出す。


 俺はたまに通学路にあるコンビニでスティックパンを買ってから登校する事がある。


 勿論これだけでは腹は膨れないが、休み時間にこっそり食べる分にはもってこいなのだ。


 しかし今日は午前中の休み時間は板書を写したりであまり時間がなかった為食べれていなかったのだ。


 今更購買行ったところで全部売り切れているだろうし、朝買っといてよかったと思う。


 俺がスティックパンを美味しくいただいていると、今外から戻ってきたばかりの風間に話しかけられた。


「よ、星宮。あいつら元気すぎるよな」


 そう言って窓の外を見つめる風間の視線を辿るとそこには外で汗水垂らした様子の海斗と荒井、その他陽キャと思われしき男子達が数人サッカーをして遊んでいた。


「風間は混ざらないのか?」


「俺?俺はああいう汗流す事はあんま好きじゃないな。涼しい教室で友達と会話していた方が楽しいし」


「そうなんだな」


 俺は風間の言葉に一旦相槌を返して、スティックパンを再び口に含む。


「そう言えば星宮ってさっきまで何処にいたんだ?」


 ふと疑問に思ったのか風間はそんな質問をしてくる。


「別に何でもねえよ。風間には関係のない事だ」


「そう言って本当は告白とかだったりするんじゃねえのか?だってお前そんなボサボサな髪や眼鏡してて分かりにくいけど、めっちゃイケメンだしな」


 最後の方は声を小さくして俺の耳元で呟いてくる。


 俺は「告白ではなかった」とだけ答えてからまたスティックパンを口に放り込む。


 風間はそんな俺の様子を見ながら笑い、「そうか」とだけ言って再び窓の外に目をやる。


 こんな何気ない会話が俺にとっては部活関係なくできた初めての友人とした会話であって楽しく感じていた。


 風間も俺もその後は基本無言だが、何故か心地いい時間を過ごし、俺はこういう時間が1番いいな、と思えたのであった。

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