第37話 風間秀
翌日の放課後、俺はゲームセンターにいた。
勿論1人寂しく遊んでいるわけではない。
一緒に遊んでいるのは海斗とその友達の風間秀、荒井健人の2人だ。
風間は銀髪のイケメンであり、我がクラスでも海斗の次にモテていると言っても過言ではない。しかし海斗と比べたら少しチャラい雰囲気を纏っており耳にピアスを飾ってたりする。
それに対して荒井は熱血漢と言った感じの容姿をしていて、体格も大きい。立っている赤髪や肩幅の広さから初見では少しビビってしまったくらいだ。部活はバスケ部に所属しており、いつも汗を流している。
そんな2人に海斗と俺を含めた4人で今レースゲームをしている。
何故こんな状況になっているのかを思い返してみる。
俺は放課後にいつも通り部室に行こうとしたら3人娘は仕事で、先輩は私用で部活に参加できないという連絡をもらった為真っ直ぐ家に帰ろうと教室を出ようとした。
そんな時だった。
風間に声をかけられたのは。
俺は突然の事すぎて瞬時に頭が理解できなかった。
海斗ならまだ映研の繋がりがあるから声を掛けられるのは分かる。しかし海斗は教室では俺が関わって欲しくないのを知っている為決して声を掛けてこない。
だからまさか風間に声を掛けられるとは思わなかった。
唐突に「星宮、今帰り?じゃあゲーセン行かね?」と、ほぼ喋った事ない人間に声かけられれば誰だってビビるはずだ。
俺はどうしようかと少し迷ったが結局行く事にしたのだ。
「おい海斗!さっきのアイテムは反則だろうが!あれのせいで俺は負けたんだぞ!」
「あはは、ごめんね?僕も勝つ為に必死になっててさ」
「いや海斗が謝る必要性ないでしょ。てか健人は普通に下手だったし」
「なんだと!?秀!俺に喧嘩売ってんのか!?」
一旦ゲームが終わり俺たちはそれぞれの椅子の背にもたれながら先程の最後のレースに関しての議論が始まる。
高校生らしくギャーギャー言い争っているのを横目に見ながら、何故風間が俺を誘ったのか未だ理由を考えていた。
少しして白熱していた論争も落ち着いたのか海斗と荒井が立ち上がりトイレに行く為にこの場を離れる。
残されたのは俺と風間であり、少しの間沈黙が場を支配した。
俺は何か話した方がいいだろうかと考え、口を開こうとした瞬間、先に風間が話しかけてきた。
「ねぇ、星宮。星宮ってさ、あの星宮湊で合ってるよね?」
この一言で俺は目が細くなる。
言わんとする事は分かる。
しかしいつ気付かれたのか、その疑問が残る。
「……いつから気づいていた?」
自分でも普段より声が低くなっている事が分かる。
「……あんま怖い顔しないでよ。俺も誰かに広めるつもりはないしさ。でもいつからって聞かれれば最初から、かな」
まさか最初から気づかれているとは思わず、俺は目を見開いて風間の顔を見る。
「……その様子じゃ俺の事覚えてないみたいだね」
「悪い、会った事あるのか?」
「結構昔にね。小学生の時になるんだけど、実は俺も子役やってたんだよね。将来も有望視されててさ」
俺は話の意図が見えず首を傾げて先を促す。
「まぁだけどそんな時だった。君に出会ったのは。小学4年生の頃だったかな。今でも覚えてるよ。俺は映画では脇役もいいところのちょい役として出演してたんだけど、同じ映画で君はメインキャストとして出演していた。君のことは噂で聞いてたし、テレビでも良く見ていたから知識として同年代に凄い人がいるというのは知っていた。でも、実際目の当たりにして君の演技を目にして僕は自分と君との差に愕然としたよ。ああ、俺は永遠に君の領域には辿り着けないと瞬時に分かってしまうくらいには。だから俺はその後演技を辞めた。いや逃げたんだ。君という圧倒的な才能を目にしてから演じる事が出来なくなった」
そこまで一息で風間は言い切ると、こちらに顔を向けてから続きを口に出す。
「でも俺は幸運なのかもしれない。また君に出会えるなんて。それも昔みたいに役者同士ではなく、普通の高校生として出会えた事は本当に嬉しかった」
そう言葉に出す風間の顔は本当に嬉しそうだった。
俺は凄く申し訳ない事に彼の事を全く記憶にない。
しかしそれでも彼はまた一から俺と接してくれようとしている。
それが俺にとっても嬉しい事だった。
「あの、さ。こういう事改めて言うのは結構恥ずかしいんだけど、俺にとっては君は憧れで尊敬できる存在で背中を追いかけたい人でもあるんだ。なんで芸能界から去ったかは聞かないけど、俺と友達になってくれないかな?」
そう言う風間の表情は普段教室では絶対見ないほど赤らめた顔をしていた。
常に人に囲まれてる印象のある風間だけど、こういう事を言うのは恥ずかしいみたいだ。
俺はその様子を見ながらふっと笑って固くなっていた顔を崩し笑って見せる。
「ああ、全然構わないぞ。レイン交換するか?」
「ああ!」
風間は本当に嬉しそうに頷いてくれた。
過去の俺に憧れていた人がいたという事実に少し嬉しく思う反面、今の俺を見て幻滅されないかは不安である。
しかしそんな事を考えても仕方がないので今は新たな友人として接するとしよう。
それから数分が経ち海斗と荒井が戻ってきてから、また数回ゲームをやって帰る事になった。
帰りにはせっかくだし皆でラーメン食いに行こうという話が出てきて母さんに連絡を入れてから4人で近くのラーメン店で夕食を済ましたのだった。




