第34話 親睦会
部活が始まってそろそろ30分が経つ頃だろうか。
俺たちは今机を6つ真ん中にくっつけてその周りを椅子に座りながら囲んでお互い睨めっこしている。
机の上には誰もが一度は見たことあるだろう見覚えしかない薄い紙のものが複数枚散らばっている。
皆真剣な表情で中央を見つめている。
俺の目の前の先輩が深く深呼吸してから1枚の紙を反対側に裏返す。
そこで何かに気づいた先輩はニヤリと笑みを浮かべてもう1枚少し離れたところにある紙を裏返す。
その2枚に書かれている数字が同じ事を確認すると、花が咲いたような笑顔を皆に見せつけて言い放った。
「やった!これで6組目!まだまだ加減しないよ!」
そう、俺たちは今トランプで遊んでいるのだ。
それも神経衰弱という名前の記憶力と集中力が必要なゲームだ。
始まりは映研の部活が始動してすぐに、先輩が「せっかくだし今日はトランプで遊ぼ!」と言い出したのが始まりだった。
この部室には何故かトランプどころか人生ゲームや麻雀、オセロや将棋など様々なボードゲームが置いてあり、過去の映研の人たちは一体何してたんだと思わずにはいられない程沢山の遊戯があるが、今考えても仕方がないので俺たちは先輩の案に乗って今日は遊ぶ事にした。
4月は廃部の危機にあり、それどころではなかったのでたまにはこういう日があってもいいだろう。
……まぁ生徒会に見つかったら相当ヤバいかもしれないが、あの人たちも暇ではない為ここに来る事はないだろう。
それに何よりトランプを通じてお互いの理解度を深められるのもいい傾向だ。
例えば聖先輩に二宮先生、海斗は結構トランプが上手く毎回1位争いをしている。
逆に彩葉、友里、陽毬の3人娘はそんなに得意ではないらしく毎回最下位争いをしている。
こういう事が分かったのもトランプをしたおかげだろう。トランプをしなければ先輩が思った以上に記憶力が良いことなど気づかなかったはずだ。
ちなみに俺はというと3〜5位のあたりをうろうろしていて特段上手でも下手でもない真ん中くらいの実力だ。
1番面白くない成績である。
まぁそんなこんなで時を過ごしているといつの間にか神経衰弱が終わり、結局今回は先輩の圧勝で幕を閉じた。
今回の結果は先輩が10組でダントツ1位、2位には6組の先生が続き、3位に5組の海斗が入った感じだ。
その下は4位が3組の俺、5位は2組の友里、6位は1組の彩葉で最下位に1枚もトランプを手にすることができなかった陽毬が続いた。
「むぅ、神経衰弱やめよ!うち大富豪やりたいんだけど!」
流石に1枚もトランプをゲットできなかったからか不満もあるらしく、次は大富豪の提案をしてきた。
そんな陽毬相手に彩葉は呆れた視線を向ける。
「陽毬はゲーム全般苦手じゃん。神経衰弱でも大富豪でも結果変わらないと思うけど?
そんな彩葉に対して陽毬は頬を膨らませる。
「ふーん、そんなこと言うんだ。大富豪でボコボコにしてやるから!」
「へー、えらい自信じゃん。あたしだって何であろうとゲームで陽毬に負けるつもりないから」
めちゃくちゃ視線をぶつけ合ってバチバチな状態になっているが、彩葉だって一般的に見たらゲームが得意な部類ではないという事は黙っておこう。
そんな2人の様子を眺めながら、先生と友里はケラケラ笑っており、海斗は生暖かく見守っている。
先輩はすぐに次のゲームをしたいのかもうトランプを配り始めていて準備に取り掛かっている。
今回の配り方から見て陽毬の要望を聞き入れて大富豪をやるようだ。
トランプを全部配り終えた先輩が皆を見回すように一応確認する。
「それで大富豪でよかったよね?」
「「はい!」」
絶賛バチバチ中の2人が間髪入れずに即答する。
その様子に外野である俺たちが口を挟めるはずもなく、静かにトランプを手に取るのだった。
トランプの数字を確認して、大きいものから順に並び替える。
大富豪で1番大きいのは数字で言えば2、小さいのは3だ。
今俺の手持ちにある最大の数字は2であり、最小の数字が5。最強のカードでありワイルドカードとも言われるジョーカーが手元にないのは残念だが2が2枚にAが2枚あるのは中々良い手札を引いたのではないだろうか。
俺は自分の手札をすぐ並び替え終わったのであとは他の皆を待つだけだ。
全員が手札の並び替えが終わった頃を見計らって先輩が声を発する。
「それで今回のルールはどうする?大富豪っていっぱいルールあるよね?」
確かに大富豪は特殊なルールが沢山ある。
革命に階段、スペ3返し、4止め、5スキップ、7渡し、8切り、9リバースなど挙げればキリがないほどだ。
俺は少し考えてからおそらく全員が知っているであろうルールだけ設ける事を提案する。
「革命と8切りだけ入れるのはどうですか?」
「確かにそれいいかも!流石にみんな革命と8切りは分かるよね?」
そう先輩が皆を見回すと各々頷いて応える。
その様子を見て先輩は満足したのか声高々に開戦の狼煙を上げる。
「それじゃあダイヤの3持ってる人から時計回りでスタートしよっか!」
こうして俺たち映画研究部の真剣勝負が今幕を開けたのだった。




