第33話 新メンバー
今日の全ての授業が終了し、放課後に突入した。
終礼を終わらせると同時に二宮先生はすぐに教室を出ていく。
いつもは少し生徒と言葉を交わしてから教室を出ていくので、少し早いなと思いながらもあまり気にせず俺も鞄に教科書類を詰め込む。
「じゃあな」
俺は荷物を片付け終わると三浦さんに挨拶だけしてから、教室を後にする。
「はい、ではまた明日」
三浦さんもこっちを見てニコッと微笑んでから挨拶を返してくれる。
彩葉と海斗はまだ友人と喋っていたようなので、俺は先に部室へと向かう。
もう最近では見慣れた部室の扉に手をかけ開けると既に先客がいたようだ。
「聖先輩、今日も早いですね」
「湊くんも相変わらず早いね」
俺はいつも通り早く来ている先輩とお互い挨拶してから最近では定位置になりつつある席へと座る。
そして何故か教室の左前方の席に自然と座っている教師に目を向ける。
「……なんで二宮先生もいるんですか?」
「顧問なんだからいて当然だろ?」
「いや、それはそうなんですけど……」
確かに顧問なのだから部室にいても何ら不思議ではない。
しかし俺が言いたい事は何であんたが俺より先に部室に到着しているか、だ。
確かに今日はいつもより早く教室を出て行ったと感じた。
それでも職員室へ向かってから部室に来るとなれば必然的に俺より後になってもおかしくはない。
そこのところを疑問に思ったのだがすぐに結論は出た。
「……さては教室から直接来ましたね?」
俺が少しジト目を向けると先生は俺の事を不思議そうな顔して見てくる。
「当たり前だろ?職員室なんて息苦しいところには1秒たりともいたくないな。それに対してここは広くて静かで本当にサボ……作業しやすい場所だな」
今サボりやすいって言いかけたろ。
この教師は本当に生徒の見本となるべき教師なのか疑わしく思えてくる。
「……まぁいいですけど、昼休みには結構難癖つけたくせにノリノリなんですね」
「ふっ、私は自分にとって心地いい空間を手にするためなら何だってやるつもりだ」
どこか誇らしげに胸を張る教師だがちっとも格好良くない。
こりゃダメだ。思った以上にダメダメすぎる。
根本的に教師向いてないんじゃなかろうか?
頭を抱えたくなる気持ちも少し芽生えたが、俺は気持ちをリセットしてからスマホを触りだす。
聖先輩は俺と先生のやりとりに口を挟まず見ていたが、どこかツボったのかククッと声を押し殺すように笑っている。
……まぁ先輩が楽しそうならいいか。
俺はそう思う事にしてしばらくの間SNSをチェックする事に集中する。
それから数分が経過し、部室の扉が開かれた。
姿を現したのはなんと赤羽友里と如月陽毬の2人だった。
「えっと……」
事情を知らない聖先輩が戸惑いを見せているので、説明をする事にした。
「この2人は彩葉の幼馴染で新しい映画研究部のメンバーらしいです」
「あ、なるほど。うん、了解」
俺が軽く紹介すると先輩はちゃんと把握してくれたようで頷いてくれる。
そして俺が2人に目線を向けると2人は意外にもきちんとした自己紹介をした。
「1年A組の赤羽友里。一応モデルやってます。これからよろしくお願いしまーす」
先に自己紹介をした友里はスラッとしたモデル体型の美少女だ。
黒の長髪に耳にはピアスを空けており、正直可愛いよりも怖いが先に来てしまう容姿をしている。
友里自体は結構気さくに絡んでくれるが、自分からは絶対に話しかけようと思わない人種だ。
「同じく1年A組の如月陽毬です!先輩仲良くしましょ!」
そんな友里に対して陽毬の方は小柄で桃色のツインテールが似合っており、小動物をイメージさせる容姿をしている。
友里が綺麗系に当てはまるとすれば、陽毬は間違いなく可愛い系だろう。
「うん、よろしく!」
元気な先輩の挨拶を聞いてから、2人は適当な席に座り全員が揃うまで談笑し始める。
その会話には先輩や先生も混じっておりすっかり仲良くなったようだ。
陽キャのコミュニケーション能力の高さには毎度驚かされる。
俺はその様子を眺めながらスマホを取り出して目線を落とす。
流石にあの輪に入ってくというのはまだ俺には酷であるので、俺は静かに待っているとしよう。
それから数分も経たないうちに外から足音が聞こえてきて扉が開く。
姿を現したのは海斗と彩葉の2人だ。
2人は一緒に来たようで先生の姿を目にして驚いている。
「え、なんでメイちゃんがいるの!?」
「まさか顧問だったりしますか?」
彩葉は単純に驚きに目を開き、海斗はすぐに解を導き出す。
その2人の様子に笑いながら先生は口を開く。
「そのまさかだ。今日から私がここの部活の顧問になるから、そういうことでよろしくな」
「え、めっちゃ嬉しいんですけど。知らない先生よりメイちゃんの方が圧倒的にいいし」
彩葉は結構二宮先生に好感持ってるようで素直に喜んでくれている。
「僕も驚きました。まさか先生が顧問になるとは思わなくて。それにしても面倒くさがりそうな先生が顧問を引き受けるなんて何かあったんですか?」
流石は海斗と言ったところか。先生の性格をよく理解していらっしゃる。
そんな海斗の疑問に先生はニヤニヤしながらこちらをチラッとだけ見てから答える。
「いやー実はな?最初は私も引き受けるつもりはなかったんだが、星宮のヤツがどうしても私に引き受けて欲しいと熱くお願いしてきたものだから私も引き受けるしかなかったんだ。僕には先生が必要なんです!先生じゃないとダメなんです!そんな風にお願いされたら断れないってものだろ?モテる女は辛いねぇ」
……この人は何を喋っているのだろうか?
俺がいつそんな頼み方をしたか教えて欲しいものだ。事実を曲解して伝えないで欲しい。
海斗は流石に嘘だと気づいてるようで苦笑いをしているが、先輩と友里と陽毬の3人は少し引き気味で俺の事を見ている。
彩葉に至ってはめちゃくちゃ頬を膨らませながら睨んできている。
俺はため息を吐きながら先生に抗議の目を向ける。
「……変な事みんなに伝えないでください。俺はちゃんとメリットデメリットを明確に伝える形で勧誘しましたよね?」
「いやーわりぃわりぃ、なんつーか生徒を揶揄うのも面白そうでな」
言葉では一応謝っているが、その姿勢には反省の色が見えない。
他の女子4人がほっとため息を吐いているのを見て俺は一安心する。
ここはせっかくできた俺にとっての居場所なんだ。変な誤解で距離ができるのはできるだけ防ぎたい。
「じゃあ気を取り直して早速映研の活動始めて行こう!」
聖先輩が両手を自身の胸の前でパンッと合わせてから皆を見回す。
全員が先輩の視線を受けてからコクッと頷きメンバーが増えて初めての映研が始動したのだった。




