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第31話 隣人さんとダメ教師

 週が明けて月曜日。悲しい事にゴールデンウィークが終わってしまった。


 大事な事なのでもう一度言う。


 ゴールデンウィークが終わってしまったのだ。


 5連休あったゴールデンウィークだったがほぼ毎日バイト先と家を行き来するだけの毎日だった。


 初日は彩葉たちがバイト先に来るという事があったが、それ以来学校の人間とは誰とも会わず寂しいゴールデンウィークを過ごした。


 来年以降はもっと有意義にゴールデンウィークを過ごそうと密かに決意しながら学校に登校する。


 学校に到着し、教室に入るといつも通り彩葉や海斗がクラスメイトたちに囲まれている様子が見える。


 友里や陽毬は別のクラスなためこの教室にはいないが、それでも誰とでも喋れる彩葉は凄いと思う。


 俺は彩葉に向けて素直に感心しながら自分の席へと着席する。


「やっぱ凄いよね、あの2人」


 俺がクラスの中心人物の2人に目を向けていたからか隣の席の三浦萌音(みうらもね)さんが話しかけてくる。


 ちなみに彼女とは隣の席だという事もあり、4月終わりくらいには少しだけ喋るような仲になっていた。


 見た目は銀色に染めたショートカットに一目で美人だと思うような整った顔立ち、背もそんなに高くはなく160cmないくらいだと思う。


 彩葉みたいなギャルではなく、どっちかというと落ち着いた文学少女ってイメージがピッタリな子だ。


 そして何よりクラス内で俺が唯一話しかけられる貴重な人間でもある。


 この関係を言葉で表すなら知り合い以上友達未満というのが1番しっくり来ると思う。


「そうだな」


 俺は三浦さんに相槌だけ打ってから教科書などを机の中へと仕舞う。


「星宮くんはゴールデンウィーク何かした?」


 三浦さんが突然そんな事を聞いてきたので俺は首を横に振りながら答える。


「何も」


 そしてそんな俺の様子を見ながら三浦さんはクスクスと笑いながら同意する。


「私も」


 この距離感が心地いい。


 俺と三浦さんの関係は気軽に話せるけど友達とまではいかなく、お互いにあまり踏み込んだ事は聞かない。


 実際、三浦さんは既にこちらを向いておらず小説を開いて担任が来るまでの時間を有効活用している。


 俺も彼女に習うように小説を開き、朝の時間を過ごす。


 彼女とはたまにおすすめの小説を紹介しあったりする読書仲間でもあるのだ。


 やはりこの時間がとてつもなく心地いい。


 なんか視界の隅で頬を膨らませたような様子の彩葉がこっちを見てきているが気にしたら負けだと思おう。


 なんせ教室では俺とあいつは赤の他人なのだから。


 そんなこんなで時間を過ごしていると、いつの間にか朝礼の時間になったようで担任の先生が教室に入ってくる。


 俺が小説を閉じると、隣人は既に小説を仕舞ったようで背筋を正して先生の方に目を向けている。


 相変わらず小説仕舞うの早いな、と謎に感心しながら俺も前を向く。


 今入ってきた担任の先生の名前は二宮芽衣(にのみやめい)。黒髪をポニーテールに纏めており、鋭い目つきをした女性だ。しかし女子生徒たちからはメイちゃんの愛称で呼ばれており、親しみやすい先生なのだと思う。


 最初の自己紹介で好きな物は酒やギャンブルって言っていた事からロクな大人ではない事は確かだ。


「はぁ、だりぃ」


 ……聞いただろうか?


 あのロクデナシ教師はあろう事か生徒の前で平然とあんな事を言ってのける。


 この1ヶ月で生徒たちも慣れてしまったようで担任の態度に対して笑いが上がるほどだ。


 今日はそんな生徒に人気な態度悪い女教師がターゲットだ。


 何故なら俺はあの人に映研の顧問を任せるべきだと思っているからだ。


 正直人選的にはミスと言っても過言ではない。


 だからと言って他を探したところで廃部寸前だった部活の顧問を引き受けてくれる先生はそう簡単に見つからないだろう。


 なので俺は少しでも引き受けてくれる可能性があるあの人にお願いする事にしたのだ。


 面倒くさがり屋なダメ教師だがあの人は何よりも面白い物が好きな事をこのクラスにいる誰もが知っている。


 俺は昨日考えてきた策を頭の中に思い浮かべながら朝の朝礼の時間を過ごすのであった。

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