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元天才子役だった俺は平穏な高校生活を謳歌したい  作者: 86
第1章

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第29話 3人娘

 結局あの後は部員全員で夕食がてらファミレスで祝勝会をしてから家に帰った。


 そして1日挟んでゴールデンウィークへと突入した。


 と言っても特に我が家では予定がないのでバイト漬けの毎日だ。


 母はいつも通りゆったりと家で過ごしており、妹はモデルや映画の撮影だったり友達と遊んだりでほぼ毎日家にいないようだ。


 俺はせっかくの暇な時間なので朝の10時から17時までバイトの予定を入れている。


 一度土日でバイトしたからかだいぶ接客にも慣れてきて少しずつ戦力になりつつあると自負している。


 時計が16時を過ぎ、俺がバイトもあと1時間かと思い始めた頃チリンチリンと入り口付近から入店音が響き渡り客の来店の知らせが聞こえる。


「いらっしゃいませ」


 俺が最近ではもう言い慣れた言葉を発して扉付近を見るとそこには見慣れた顔1人と初めて見る顔2人が突っ立っていた。


「……何名様ですか?」


 俺は今身バレ防止の為眼鏡はしているが髪の毛をセットして普段の学校とは違う印象が持たれるような格好をしている。


 その為気付かれない事を願って店員らしくスムーズに人数を聞いてみるが、彼女にはこの格好をしたところですぐバレてしまい気付かれてしまった。


「え、湊じゃん。もしかしてここでバイトしてんの?」


 彼女、七瀬彩葉は少し嬉しそうな顔を作りニヤニヤとこっちを見つめてくる。


 はぁ、あまり同級生にバレたくなかったんだけどしゃあないか。


「……ふーん、あんたが星宮湊か。彩葉から聞いてるよ。あたしは赤羽友里。よろしく」


「うっわ。眼鏡で分かりにくくなってるけど結構なイケメンじゃん。あ、ウチは如月陽毬!よろしく!」


 スタイルが良い美人系ギャルの赤羽さんと小動物感がある小柄な美少女の如月さんか。


 おそらく彩葉の友人なのだろう。


 しかしどっかで聞いた事あるような……。


 そこで俺は思い出した。


 彩葉から過去を聞いた時に出てきた名前だ。


 確か幼馴染兼親友であり彩葉が大切に思ってる存在だったはずだ。


 俺はいつまでも入り口に立っているわけにもいかないので3人を奥のテーブル席へと案内する。


 今は比較的空いてる時間な事もあり店内はガラガラだ。


 3人に注文する物が決まったら呼んでくれとだけ伝えてから厨房の方へと戻る。


「ねぇねえ、湊くん!さっきの3人湊くんの知り合い?」


 俺が今の時間暇だなぁと思いながら厨房の入り口付近で立っていると突然同じ時間に仕事をしていた紗希先輩に声をかけられる。


「……えぇ、まぁ。と言っても知ってるのは1人だけで他の2人は同じ学校かどうかも知らないんですけど」


 俺の返答に何故かニヤニヤしながら紗希先輩が面白い玩具を見つけたように膝で突いてくる。


「へぇ、なるほど。もしかして彼女だったり?」


 紗希先輩がいきなり変な事を言い始めたので俺はバッサリと否定しておく。


「そんなわけないじゃないですか。俺はそもそもあんまりモテないというのに」


 俺が自虐気味にそんな事を言うと今度は「え?」という少し呆けた顔をして否定してくる。


「いやいやいやいや、湊くん結構モテてるよ?実際まだ数回しか仕事してないのにファンがいるくらいには」


 この人は冗談が上手い。


 俺がそんなわけないでしょって感じで先輩にジト目を向けると先輩は「ん」と感じでとある一角の席を指差す。


 流石にお客様にはバレないようにこっそり指を差していたが、俺がそちらに視線を向けるとそこに座っていた女子高生2人組が顔を赤くしながら逸らした。


 ……え?


 今度は俺が呆然としつつ先輩に目を向ける。


 そんな俺の様子を見て先輩は呆れたような顔をする。


「……だから言ったでしょ。湊くんってあの子達以外にも女子高生や女子大生の子達に結構人気なんだよ。まさか自覚してなかったとは思わなかったけど」


 いや自分の顔が整っていることは自覚しているつもりだ。


 なんせ親があの星宮千秋で妹が最近人気の星宮月なのだ。


 遺伝子的には自分がそれなりに顔が整っていることを子供の頃から自覚はしていた。


 しかし今の自分は髪の毛はセットしてあるが、地味な眼鏡をかけており正直あんまりモテる風貌をしているとは思えなかった。


 そこでピンポンと店員を呼ぶベルが聞こえたので俺は紗希先輩の呆れた視線を背中に受けながらテーブルへと注文を取りに向かう。


 俺が注文を取りに向かったテーブルは先ほど案内した彩葉たちのテーブルだった。


「……ご注文承ります」


 彩葉が凄くジト目を向けてくるが俺はあまり気にしないようにして注文を取ろうとするが、彩葉はそれよりも聞きたい事があるようで静かに口を開く。


「……湊ってモテるんだね?」


 彩葉は普段あまり見ないような笑顔を向けてくるがそれが今は怖い。


「……いやそうでもないと思うぞ」


 俺は歯切れ悪く否定してみるが、彩葉は全く信じる気がないようでさらに追い討ちをかけようとしてくる。


「ふーん、でもさっきJKの子達にキャーキャー言われてたし、あのバイトの女の人とも結構親しいみたいじゃん?」


 何でこんなに俺は尋問されてるみたいになっているのだろうか。


 そもそも俺と彩葉は恋人でも何でもないしただの部活の仲間だ。他の女と俺が仲良くしていようが彩葉には関係ないはずだ。


 ……まぁそれを言うのは野暮ってものかもしれないが。


 俺が助けを求める形で彩葉と同席している2人に視線を向けてみると2人は知らん顔しながらスマホを触っている。


 どうやら今俺に味方してくれる人はいないようだ。


「……まぁいいや。今は湊もバイトみたいだし、あとでじっくり聞くことにするから」


「まさか……」


「うん、湊がバイト終わる時間まで待ってるつもりだから」


 ……。


 この言葉に他の同席していた2人は流石に可哀想に思えたのか憐れむ者を見るかのような視線を向けてくる。


「湊ってバイトいつまで?」


「……17時までだけど」


「分かった。あと1時間無いくらいね。それまで待ってる。そんで遅くなったけど注文はキャラメルマキアート3つお願い」


「……はい、かしこまりました」


 俺は注文を受けただけのはずがどっと疲れた気がする。


 しかしまだバイトのシフト時間なのでとりあえず厨房へと注文を伝えに戻る。


 そして紗希先輩に捕まり再度さっきと同じ事を聞かれる。


「……本当に彼女じゃ無いの?」


「……はい、違います」


「……そっか」


 さっきと似たような会話なはずなのに先輩には何故か心の底から同情したような視線を向けられる。


 俺はその視線に気づかないふりをして残りの時間をバイトに集中する事にした。

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