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第27話 回想

 土日の両方ともバイトをして過ごし、ついに週が明けた月曜日。


 俺たちにとって映研の存続がかかった時がやって来た。


 日中は普通に授業を受けて過ごし、放課後になると俺はすぐ映研の部室に向かいいつも通り小説を読みながら他の皆を待っていた。


 今日は一番乗りのようで、先輩の姿もまだ見えない。


 俺はいつも自分が座る椅子に腰をかけてこの1ヶ月の回想に耽る。


 思えばこの1ヶ月、正確に言うと入学してからの3週間は密度の濃い時間を過ごした。


 まず授業始まってからすぐに先輩と出会った。


 半ば脅されるような形で映研に入部したのがつい3週間前のはずなのにもう結構昔の事のように思えてくる。


 それだけ俺にとってこの部活は居心地が良かったという事だろう。


 それから海斗と彩葉が入部していた事にも驚いたな。


 陰キャである俺からしたら人目見て一生関わる事のない人種だと思ってた2人と同じ部活に所属し普通にコミュニケーションを取れるようになってるだなんて今でも信じれない。


 海斗は最初から友好的だったけど彩葉は結構当たり強かったな。


 彼女がチンピラに絡まれてたのをきっかけに過去の話を聞き今では向こうがどう思ってるかは知らないが俺は友人と呼べる間柄になっていると思う。


 他にも彼女の過去のクラスメイトたちとも遭遇して一悶着あったのがついこないだの事だなんて信じれない。


 映画制作でも2人は熱心にやってくれて何回リテイクがあった事か……。


 そう考えるとふっと笑みが溢れてくる。


 でも結局は皆で1つの映画を作ってる時が1番楽しかったんだよな。


 俺に演技をする楽しさを思い出させてくれた。


 たった1回で終わらせたくない。


 もっとこれからもこの時間が続いてほしい。


 不覚にもそう思ってしまったのは事実だ。


 まだ出会って間もない俺らだけど、この3週間は本当に楽しい時間だった。


 もし生徒会の審査に落ちた場合、俺は今後あの3人と関わる事がなくなるのだろう。


 先輩はまず学年が違うし、海斗と彩葉は普通だったら絶対関わらないような別世界の人間だ。


 映研が無くなるとあの3人とは関わる機会がなくなる。


 そう思うと少し悲しさが込み上げてくる。


 ……ああ、そうか。


 俺はこの関係性を壊したくないと思っている。


 今まではこんな事を思うことは無かった。


 そもそもそこまで親しい間柄の人間が少なかったというのもあるが、俺はほとんど全ての人に対して仕事上の関係、または好奇心で近寄ってくる有象無象程度にしか考えていなかった。


 俺の事を星宮湊として見てくれて、接してくれたあの3人の存在を俺は自分が思っている以上に俺の中で大きい存在になっているのかもしれない。


 そこで足音が聞こえてきたので俺は小説を閉じて時計を見る。


 時計はまだ17時前だ。


 少ししてから扉が開きもう最近は聞き慣れた明るい声が耳に入ってくる。


「相変わらず早いね、湊は」


 そう言って俺の次に到着したのは彩葉だった。


 金に染まった髪の毛、短いスカートの丈、耳に空いているピアス、相変わらず校則的に注意を受けないのが不思議なくらいだ。


「ああ」


 俺はいつも通りそれだけ答えてから口を閉じる。


 今日はやはり緊張しているのか彩葉の口数も少ない。


 それでも緊張を紛らわす為か彩葉の口が動く。


「……映研無くなってほしくないなぁ。もしさ、もし無くなっても湊に話しかけていいよね?」


 彩葉も心配なのだろう。


 この関係が壊れてしまうのが。


 普通の人だったらここで彩葉を励ますような言葉をかけるのだろう。


 しかし俺にそんな事は似合わないのでいつもみたいに容赦なくそれを否定する。


「それはダメだな。俺は目立ちたくないし」


 俺の正直な答えに彩葉は少しむくれながら抗議する。


「むー、こういう時は普通OKするもんじゃないの?」


「まぁ安心しろ。映研が無くなる事はないから」


 俺はそう言ってから扉の方に目を向ける。


「……そうだね」


 彩葉も俺の言葉に頷いてから俺と同じ方向に目をやる。


 そして足音が2つ扉の外から聞こえてくる。


 おそらく海斗と先輩のものだろう。


 それからすぐに扉が開かれ俺たちの待ち人がやってくる。


「ごめんごめん、お待たせ。さっき先輩とばったり会ってさ」


 そう軽快に言いながら入ってきたのは海斗だ。


 そして俺たち全員はもう1人の方に目を向ける。


 先輩は皆の事を見回してから、笑顔を作って声をかける。


「……うん。全員揃ってるね。よし!じゃあ早速生徒会室に乗り込みに行くよ!!」


「「「おー!!!!」」」


 俺たち3人は先輩のその声に合わせる形で今までにないくらい声を張り上げた。


 こうして映研の存続がかかった最終決戦の狼煙が上がるのだった。

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