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第24話 初仕事

「湊くん、11番さんオーダー行って!」


「はい!」


「星宮くん、このお皿持って行って!」


「はい!」


「湊くん、あそこの席片付けといて!」


「はい!」


 バイトが始まってもう2時間は経過している。


 俺もこの店の接客に慣れ始めたばかりでまだ半人前にすら程遠いが何とか接客を覚えて仕事をできるようになっていた。


 ホールで一緒の紗希先輩は何かとすぐフォローしてくれるし、キッチンの安城先輩も優しく指示を出してくれる。


 高崎先輩は相変わらず黙々と仕事をしているが、ここは比較的バイト先としては良い方だと思う。


 ディナーのピーク時が過ぎて人が徐々に減って来た頃、ようやく落ち着くタイミングがやって来た。


「お疲れ様、湊くん。初日とは思えない程接客上手だったよ」


 そう言いながら水の入ったコップを渡してくれたのは紗希先輩だ。


 まだ俺が一人前として仕事ができないので、紗希先輩はほぼ1人でホールを回していた事になる。


 それなのに全く疲れを見せない涼しげな顔をしているからこの人も結構凄い人だ。


「ありがとうございます」


 俺はコップを受け取ってから水を口に含む。


 俺のバイト時間はあと2時間近くある。


 ピーク時も過ぎてこれ以上混むとは考えられないので少し気は楽だ。


 少しの間俺と紗希先輩の間で沈黙の時間が流れるが、唐突に紗希先輩が切り出した。


「そう言えばさ、湊くんって彼女いないの?」


 いや本当に唐突過ぎて驚いた。


 そういう話題は女子同士で話すものじゃ無いだろうか。


 少なくともバイトの先輩と後輩が初日で話す内容では無いと思う。


「え、何でそんなこと聞くんですか?」


 俺は少し怪訝な顔を作って聞き返す。


「んー、ちょっと気になるから?で、どうなの?」


 先輩はあまり深く考えてないようでさっさと答えを促してくる。


 俺は少しの間どう答えるべきか迷いながら結局正直に答えることにした。


「……いないですよ、出来たこともありません」


 俺のその返答に驚いたのか紗希先輩は少し驚いた表情をする。


「え、いないの!?普通に顔いいしモテそうだと思ったんだけどな」


 紗希先輩は知らないのかもしれないが中学までは色恋を意識してる場合ではなかったし、高校入ってからは学校ではダラシない格好をしているのでモテる事はないだろう。


 俺は先輩のその言葉を聞かなかった事にして声を発する。


「それより紗希先輩、仕事しますよ。暇になったからと言っても一応バイト中ですからね」


「分かってるよ〜。それよりあたしが彼女候補に立候補しちゃおうかな?」


 俺はその瞬間自分の顔が少しずつ赤らんでいくのを自覚していたが、これは揶揄われているだけだとすぐに気付き落ち着きを取り戻す事が出来た。


「紗希先輩、高校生を揶揄わないでください」


 俺が先輩の方を振り返ってそう言葉を発すると先輩は悪びれることも無く言葉だけの謝罪をする。


「ごめんごめん。つい可愛くってさ」


 この先輩にも困ったものだ。初めて会う後輩相手にここまで距離を詰めれるのだから相当なコミュニケーション能力の持ち主なのだろう。


 俺はコップに残った水を飲み干してから今立ったお客様の会計を行う。


 結局その後は全く混むことなくバイトのシフトの時間を終える事になった。


 初めてのバイトで結構疲れたが、初めてにしては上々なんじゃないだろうか。


 俺は帰ってからすぐに母さんの作ってくれた料理を食べて風呂に入り、ベッドに倒れ込むように眠ったのだった。

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