第23話 バイトの先輩達
「じゃあもうそろそろ始めようか」
店長のその言葉によって俺の初のバイトが開始する。
まずは口座の登録や書類の確認など最初に必要な事をやっていく。
必要書類に全て書き込み終わると今度は店長にタブレットを渡されて映像を見るよう促される。
映像ではホールの接客の仕方や気をつける事などが詳細に説明されている。
約10分の映像を見終わるとようやく実践するようだ。
店長に「早速ホール行こっか」と言われて俺は店長の後について厨房へと顔を出す。
厨房で料理を作っていた背の高い人と目が合ったので軽く会釈をする。
「彼は大学3年生の高崎亮くん、でこっちは高校1年生の星宮湊くん。まぁホールと厨房であまり関わらないかもしれないけどよろしくね」
高崎先輩は背の高いクールっぽい人だ。
店長に紹介されて、「よろしく」とだけ言葉を発してからすぐに料理へと取り掛かり始める。
そしてホールに出る前に店長に打刻のやり方と手の洗い方の説明を受ける。
打刻は厨房にあるタブレットを使い行い、手はホールにあるお客様も利用する水道を使う。
俺はとりあえず言われた通りに手を洗ってからホールへと出る。
ホールでは先ほど控え室で少しだけ喋った紗希先輩と優しそうな男のイケメン先輩がテキパキと働いていた。
俺は店長の後をついて2人のところへと挨拶に向かう。
「あ、紗希先輩」
「ん?あ、湊くん!一緒に頑張ろうね!!」
紗希先輩の名前を読んだだけなのだが、紗希先輩は俺と働く事を喜んでくれてるのか嬉しそうに笑顔を向けてくれる。
紗希先輩みたいな人がいて良かったと思う。
俺からしたら既に関係が作られていて輪に入りにくいバイトだが、紗希先輩のおかげで少しバイトが楽しくなりそうだ。
先輩の笑顔を見て男性客が頬を赤らめているのを見ると彼女は客からも人気なのが分かる。
そして次は優しそうな男の先輩に声をかける。
「あの、俺新しくバイトとして働く事になった高校1年の星宮湊って言います。よろしくお願いします」
俺がそう言って頭を軽く下げると、その先輩は優しそうな声音で応対してくれる。
「うん、よろしくね。僕は安城樹、大学2年生だよ。一応ホールも厨房もどっちもやってるかな。それとあんまり緊張しなくていいよ。僕は後輩の子結構好きだしさ、バイトだけじゃなくてプライベートでも今度どっか遊びに行こうね」
この人は神様なのだろうか?
これは女子は惚れる。てか俺も女だったら惚れている自信がある。
俺は少し緊張した面持ちで「は、はい」と応える。
「それじゃあ後でレイン交換しようね」
そう言って安城先輩は手を差し出して来たのでそれに合わせて握手する。
「はいはい、そこまで!樹くんは湊くん来たからさっさと厨房行って!それと湊くんはこのあたしと先に遊びに行くんだからね!」
いつそんな事が決まったのか俺は紗希先輩に腕を引かれて安城先輩と引き離された。
「……相変わらず紗希は強引だね」
安城先輩はそう苦笑してから厨房の方へと姿を消して行った。
その様子を見ていた店長が俺と紗希先輩を交互に見ながら言葉を発する。
「それじゃあせっかくだし椎名さんに星宮くんの指導お願いしようか」
「はーい店長」
まさかの展開に俺は少し目を見開くが、紗希先輩は嬉しそうな表情をする。
……俺の指導する事がそんなに嬉しいんだろうか?
「あたし弟みたいな子欲しかったんだよね〜。ここのバイトは基本的に大学生ばっかだしさ、弟みたいな子全然いないんだよね。そうだ!良かったらあたしの事お姉ちゃんって呼んでくれていいよ!」
「全力でお断りさせていただきます」
紗希先輩の変なお願いに対して俺は即答で断る。
何故バイト先でそんな恥ずかしいプレイをしなければならないのか。
紗希先輩はむぅと少し頬を膨らませたが、すぐに気を取り直して先輩らしく俺にバイトの指導を始めてくれるようだ。
「それじゃあ早速料理の提供を始めよっか」
「はい」
俺は紗希先輩の言葉にそう頷いてからカフェ店員らしく接客を始めるのだった。




