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第22話 美人な女先輩

 火曜の放課後は海斗と彩葉のどっちもが仕事だった為必然的に部活動は休みとなった。


 そして水曜の放課後。


 今日はなんと俺の初バイトが入っている為珍しく俺が部活に参加する事ができないのだ。


 申し訳なく思いながらも部活のグルレイに『今日はバイトなので行けません』とだけ送っておく。


 するとまだ教室にいた海斗と彩葉がチラッといった感じで俺の方を軽く見てくる。


 数秒後、グルレイには3人の了解スタンプが送られてくる。


 俺はそれを確認してからスマホをポケットに仕舞い教室を後にした。


 学校を出て家に帰らず直接バイト先に向かうつもりだ。


 一度家に帰る事もできるのだが、個人的に家に帰ってからまた外出するのは面倒なので直接バイト先に向かうのだ。


 そして10分ほど歩くと目的地の場所が見えてくる。


 喫茶店Believe。相変わらずお洒落な店だ。


 早速扉を開けて中に入る。


「いらっしゃいませ。1名様ですか?」


 面接の時は美人な人が出迎えてくれたが、今回な顔が整ったイケメンのお兄さんが出迎えてくれた。


「あ、いえ、今日からバイト始める星宮です」


 俺はイケメンのお兄さんに向かってできるだけ笑顔を向けながら応える。


「あーバイトの子か。厨房の奥にスタッフルームあるからそこに行ってていいよ」


 イケメンのお兄さんは優しい笑顔を向けてくれながら厨房の方を指差す。


 俺は少し緊張しながらも厨房の方へと入っていく。


 厨房にはバイトと思わしき背の高い若い男の人とこの前面接事に会った店長が料理を作っている様子だった。


「あ、星宮くんおはよ。17時からだったよね。あっちの控え室で着替えて待ってて。ちょっとキリがついたら僕もすぐ行くから」


 俺も店長に「おはようございます」とだけ返してから控え室へ向かう。


 男の人の方は俺の方をチラ見しただけで声をかけてくる事はなかった。


 控え室に入ると何やら机に突っ伏して寝ている女の人がいた。


 ただ寝ているだけなのにこの人がどれだけ美人かが分かる。


「んんっ」


 ちょうど起きたのかその人と視線がぶつかる。


 改めて正面から見るがとても美人だ。


 赤く染まった髪の毛はポニーテールに結んであり、まつ毛も長く瞳はぱっちりと大きい。そしてスタイルも良くすれ違えば絶対に振り返る自信がある程の美人だ。


 俺は目が合ったことで少し気恥ずかしさを覚えて視線を逸らす。


 すると美人さんが突然声を上げた。


「あ!この前のイケメン君だ!」


 俺はその言葉で思い出した。


 そう言えばこの人はこの前面接事に接客をしていた人だな。


 俺は「……どうも」とだけ挨拶をしてから1人用の着替え室を使って面接時にもらったバイトの制服に着替える。


 着替え終わると同時に女の人にスマホを差し出される。


「ええっと……」


 俺はその訳が分からない行為に戸惑う。


「レイン交換しよ!せっかく一緒の仕事するんだしさ」


 どうやらレインを交換したかったようだ。


 そしてこの様子を見て俺はしみじみと思う。


 あ、この人絶対陽キャだ、と。


 俺も仕方なくスマホを取り出してQRコードを使ってレインを交換する。


 女の人のレインのアイコンがsakiとなっている為、それが下の名前なのだろう。


「ふむふむ、湊くんね。上の名前聞いてもいい?」


「えっと、星宮湊です」


「星宮湊……なんか聞いたことあるような……」


 少しギクリとしたが、どうやらあまりパッと来てないようで正体はバレずに済んだようだ。


「あ、あたしの名前は椎名紗希(しいなさき)。今はピチピチの大学2年生です!湊くん高校生だよね?あたしの事紗希先輩って呼んでくれていいからね!」


 なんていうか凄いコミュニケーション能力の高さを感じる。


 このビジュアルでこんなにグイグイ来られると普通の男子であればすぐに惚れ込んでしまうのではないだろうか。


「はい、椎名先輩」


 俺は流石に名前を呼ぶ事は抵抗があった為先輩の要望を無視して苗字で呼ぶ事にする。


 しかし先輩はそれを許してはくれないようだ。


「あたしさ、苗字で呼ばれると少し距離あるように感じちゃうんだよね。だからね、名前で呼んで欲しいな?いい?」


「……はい、紗希先輩」


 俺は観念したように名前で呼ぶ。


 別に絶対に名前で呼ぶ事が嫌というわけではないので、ここは新参者である俺が先輩の要望を聞いておいた方がいいだろう。


「よろしい!」


 先輩は少し嬉しそうに喜んでくれた。


 俺はロッカーに鞄を預けてから、店長が来るまでの間に身支度を完了させる。


 身バレはしたくないので眼鏡は必須道具だ。


 なのでそれ以外でできるだけこの店で浮かないように髪の毛等をセットするのだ。


 俺が身支度を完了させると紗希先輩は何やら見つめてくる。


「……どうしました?」


「え、ううん。すっごく格好いい男の子来たなぁって思っただけ!」


「お世辞でもありがとうございます」


 俺は営業スマイルみたく先輩に向けて微笑む。


 それに対して先輩が「お世辞じゃないんだけどなぁ」って呟くのが聞こえる。


 と、そこでちょうど店長が「ごめんね、お待たせ」って感じで控え室に入ってくる。


「あ、いえいえ。全然大丈夫です」


 と応え、先輩の方を見る。


「あたしは先ホール行ってるね。最初は上手くいかない事もあるかもしれないけど頑張ってね!きっと湊くんなら大丈夫だよ!」


 先輩はそう言い残してから控え室を出て行った。


 その様子を見ていた店長は「ずいぶん仲良くなったんだね」と微笑ましそうに声を発した。


 俺はそれに対して「まぁ、そうですね」と何の面白味もない回答をするのだった。

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