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元天才子役だった俺は平穏な高校生活を謳歌したい  作者: 86
第1章

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第19話 OKテイク

 初面接があった土曜日から怠惰に過ごした日曜日を挟んでまた新たな1週間が始まった。


 来週の終わりからゴールデンウィークが始まる為、今週中には映画の撮影を完成させなければならない。


 しかし先週の様子を見るに海斗や彩葉は週2回くらいそれぞれの仕事で部活動に参加できないことは分かった。


 2人が仕事をする日が被る日もあるので大体全員が集まれるのは2回と見た方がいいだろう。


 ただ今週から俺のバイトの予定も入っている為運悪ければ1日しか全員が集まれないかもしれない。


 そんな映画の撮影の事ばかり考えていたら、いつの間にか今日の学校の授業が全て終了していた。


 俺はすぐに荷物を片付けて部室へと向かう。


 部室に到着し扉を開けるといつも通り先輩が机に伏せて寝ているのは普段と変わらないが、今日は彩葉も先に来ていたようだ。


 確かに俺が教室を出る時にはもう彩葉はいなかったような気がする。


 あまり疑問に思わなかったがまさか先に部室に来ているとは思わなかった。


 俺は少し驚きに目を開いて彩葉に声をかける。


「今日は来るの早いんだな、彩葉」


「まあね、てか普通に考えて4月中に映画撮影終わらないといけないなら今週と来週の最初しかないわけじゃん?あたし的にもこの部活無くなってほしくはないし、やる気も出てくるってわけ」


「お前にしては結構愛着持ってるんだなこの部活に」


「まぁそれもあるけど……この部活なくなったら湊と喋れる機会なくなっちゃうし」


 最後の方はボソボソと小声になっていて聞き取りにくかった。


「すまん、あんま聞こえなかったがなんて言った?」


「んー秘密!てか湊は聞こえなくていい事だから!」


 何故か少し頬を染めた様子の彩葉が慌てたように誤魔化しだす。


 俺はなんか納得いかなく思ったがそれ以上追求するような事はしなかった。


 それから少し経つと扉が開き海斗が入ってきた。


「ごめん、遅くなった」


 海斗が手ですまないってジェスチャーと共に謝罪してきたのが俺は気にしてないという風に首を横に振る。


「全然気にしなくていいぞ、先輩も寝てるし」


 俺はそう言って先輩の方を顎で指す。


 海斗は苦笑いしながら先輩を見て「そっか、ありがと」とだけ言ってから俺の隣の席に腰を下ろす。


 海斗が座ると同時にセンサーでも付いているのか先輩が眠そうな顔をあげて起き全員の顔見回す。


「よーし全員揃ったし早速撮影始めよー」


 まだ眠たいのか欠伸をしながら覇気のない声を出す。


 その様子に俺たち3人は苦笑いを向けながら撮影の準備に取り掛かり始めるのだった。


 先週は結局ヘンデルとグレーテルがお菓子の家に到着するまでを撮影したので、今日はその続き、つまり魔女と出会うシーンを撮影する。


 俺は先週とは違い今日は白髪のウィッグを付けて黒い帽子、黒いローブを着ていわゆる一般的に想像されている魔女の格好に着替えた。


 海斗と彩葉も既にヘンデルとグレーテルにそれぞれ変身しておりもう既に準備万端だ。


 お菓子の家のシーンは部室で撮影し、先輩の編集でお菓子の家に見せるようだ。


 最初にシナリオを貰った時にシナリオの内容は全て頭に入ってる為いつ撮影が始まっても大丈夫だ。


「じゃあヘンデルとグレーテルがお菓子の家に入るところからスタートするよ!天童くんと七瀬ちゃんは廊下で準備して!湊くんは教室の中でいつでも演技できるように待機していて!」


 俺たち3人はすっかり目が覚めた様子の先輩の指示を聞いてそれぞれの立ち位置で待機する。


 ヘンデルとグレーテルを演じる2人は扉の前で待機し、俺は教室の中で先輩の指示があるまで待機する。


 先輩もカメラを持った状態で外に出ていき、2人の後ろ姿にカメラを向けながら教室の中にある俺にも聞こえるくらい大きい声を発する。


「それじゃあ撮影スタート!!」


 先輩の声に合わせて2人が演技を始めた声が聞こえてくる。


「あ!あんなところにお菓子の家が!さぁ、少しご馳走になろう。僕は屋根を一切れ、グレーテルは、窓を食べてもいいよ」


 声しか聞こえないはずなのに海斗の本気度が伝わってくる。


 たかが部活の撮影だというのに一切手を抜くつもりがないのは海斗の美徳だろう。


 俺はその声を聞きながらシナリオにある台詞を発する。


「……私の家を齧っているのはどこの誰かしら?」


 声変わりした高校生の俺からしたら女声を発する事はできないが、それでもできるだけ女声に聞こえるように似せた声を発する。


 それから少し間があって2人の合わさった声が聞こえてくる。


「「それは風です。風なのです」」


 流石芸能界で活動している2人だ。


 2人で打ち合わせをしていたのかもしれないが、上手な間の取り具合からの揃った言葉。これには少し感心してしまった。


 演技を経験すれば分かるが、2人で言葉を揃える事は大分難しい事だ。


 そしてそれから数秒待ってから扉を開ける。


「おや、まあ、なんてかわいい子供たち。さあ、家に入っておいで。何にも怖い事はないからね」


 俺がニコリと2人に微笑んでみると、2人は少し表情を固まらせたような顔に変わる。


 2人ともやはり演技が上手い。


 海斗の方は元々演技が上手いと思っていたが、彩葉の方も完全とは言わないまでもトラウマを払拭した事により先週よりも演技が上手く感じる。


 やっぱり俺の目に狂いはなかった。彩葉も女優の卵だった。


「はいカット!カット!」


 そこで先輩の声が廊下に響き渡り、俺たちの撮影はとりあえず終了した。


「3人とも演技上手かったよ!これはやり直す必要ないんじゃない?」


 先週は主演の2人が納得いくまでリテイクを希望し続けていたので先輩は少し緊張した面持ちで2人を見る。


 2人とも今回の演技には納得がいったのかコクッと頷いて初めてリテイク無しとなった。


 先輩もほっと一息ついているのを見ると先週のリテイクの連続は大分疲れたのだろう。


 ヘンデルとグレーテルが2人でお菓子の家に辿り着くまでの撮影を何回もやり直しているところは少し同情したものだ。


 既に退場していた俺としては先輩に憐れみの視線を送るしかなかった。


 先輩はそんな俺に助けてくれって目で訴えてきたが、俺は知らんふりを決め込んでいた。


 それくらい2人の撮影は大変だったので、先輩は少しビクビクしながら2人に聞いたのだろう。


 今回はリテイクが無くて本当に良かった。


「よし、今回は1発で撮影撮り終わったしこの先も撮影しよっか!」


 俺たちは先輩のその言葉に頷くとそれぞれの立ち位置へと向かうのだった。

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