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第1話  新しい生活

 俺は腕を伸ばしながらベッドから降りる。


 今日は高校生になってからの初めての授業だ。


 鞄の中身を軽く見てチェックしてから部屋の中にあるクローゼットを開けて制服を取り出す。


 とりあえずパジャマを脱いでからズボンを履き、ワイシャツのボタンを止めてベルトを締めてからネクタイを通し、そしてブレザーに腕を通す。


 俺は眠気まなこを擦りながら制服を着替え終え、脱ぎ捨てたパジャマを抱えながら1階に降りる。


 先に洗面所でパジャマを洗濯カゴに入れて、顔を洗ってからリビングに顔を出す。


 リビングに入ると2人の美女と美少女がテーブルで朝食を取っていた。


 美女とは言わずもがな、()日本のトップ女優だった俺にとっての母、星宮千秋である。


 そして美少女とは俺にとって2つ下の妹である星宮月(ほしみやるな)である。ちなみにルナは現役中学生モデルだったりもする。


 俺の分の朝食は既にルナの隣に置かれており、無言で着席してから手を合わせ「いただきます」とだけ口に出してから食事を始める。


 それと同時に隣では「ごちそうさま」とだけ言ってからルナが席を立つ。


「それじゃ私学校行くから」


 ルナは母に向かってそう声をかけてからさっさと家を出ていってしまう。


 俺も嫌われたもんだな。


 もうルナとまともに会話しなくなってから結構経った気がする。反抗期なのか、他に理由があるのか。


 心当たりはあるがそれを確かめる気はない。


 母も困ったような顔でルナが出ていった扉を見つめながら俺に顔を向ける。


「はぁ、ルナちゃんも本当は湊くんの事が好きなはずなのにね……」


「いいよ母さん。俺も嫌われるような事をしたのは事実だしな」


「でも……」


「はい、この話はおしまい。俺もさっさと飯食ってから学校行くから」


「そう、分かったわ。これからの高校生活頑張るのよ」


 今の母に過去の面影はない。


 年齢の割には若く見えるし、そこらの女の人よりは圧倒的に美人だと思うが昔の撮影中に纏っていたようなオーラはない。


 今はただ美人なだけの専業主婦なのだ。


 俺は朝食を食べ終えてから「ごちそうさま」と口に出し、学校の鞄を肩にかけてからリビングの向かいにある部屋へと足を踏み入れる。


 そこにあるのは父の仏壇だけだ。


 俺は父に向かって手を合わせる。


 父の死因は交通事故だ。


 原因はトラックの運転手が居眠り運転をしていた事だった。


 相手の運転手も怪我を負ったが命に別状はなかった。


 その時母さんと俺は後部座席に一緒に座っていた。


 父が運転していた理由は母さんと俺を撮影場所へと送るためだった。


 妹は幸い母方の祖父母に預けていたが、この不運な交通事故により俺たち家族は大切な人を失った。


 その後スムーズに葬式は進んだが、母さんの心が癒えるまで時間はかかった。


 その時行う予定だった撮影は母さんと俺の分だけ後日行ったがその作品を最後に母さんも俺も表舞台から姿を消す事にした。


 大切な人を失ってから母さんから笑顔が消えた。そしてそんな母さんの様子を見ていた俺にとって自分だけテレビの前に立つなんてできないと思い一般人になる事にしたのだ。


 最近は母さんも笑えるようになってきたが、俺はもうテレビの前に立つ気はない。


 消えた天才、それが星宮湊なのだ。


 俺は父さんに手を合わせてる間はいつも時間が止まったように過去の回想が頭の中を駆け巡る。


 そして目を開けるとまた現実へと連れ戻される。


 俺は立ち上がり父さんに「行ってきます」と声をかけてから部屋を出る。


 そして再度リビングにいるであろう母さんに向かって大きな声で「行ってきます!」と言ってから外へ出る。


 これは平穏を求める元天才子役の俺が色々な人に出会いまた芸能界へと復帰する物語である。

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