第17話 バイトの面接
映研のみんなとファミレスに行った日から数日が経った。
今日は土曜日ということもあり、俺はバイトの面接に行く予定が入っている。
というのもやはり高校生にとってバイトというのは遊ぶために必要なものだ。
俺はもう少しでゴールデンウィークに入るという事もあり、その前にバイトを始める事にしたのだ。
ゴールデンウィークにもしかしたら遊ぶ事があるかもしれないし、予定がなくてもバイトをしていれば普段より稼げる事は確実だろう。
だから先日、給料が良さそうなところに電話で面接の予約を入れといたのだ。
バイトの面接は午前10時からなのでもう30分を切っている。
確か私服でも良かったはずなので俺はいつも通りの服を着て、髪の毛を清潔感が出るようにセットしそして普段から愛用している鞄に筆記用具と履歴書だけ入れて家を出る。
家を出てから20分後、目的の場所へと到着した。
結構お洒落なカフェである。名前は喫茶店Believe。
個人経営店だと聞いている。俺は店の扉を開けて中へと入る。
店内を見渡してみると客層は比較的若者が多く、男性よりも女性の割合の方が高い気がする。
客席も凄く多いわけではなく、店員も接客してるのは2人しかいない。
「いらっしゃいませ!1名様ですか?」
俺の存在に気がついた女性店員が元気よく声をかけてくる。
「あ、いえ、面接に来た星宮ですけど……」
俺はバイトの面接が初めてという事もあり少し緊張した面持ちでそう言葉を発する。
「あ、面接の方ですね!かしこまりました!店長呼んでくるので少々お待ちください!」
女性店員さんは笑顔を崩さずそう言うと、店長を呼びに厨房の奥へと姿を消していった。
それから少しして女性店員は中年の男性を連れてホールに姿を現した。
おそらくあの人が店長だろう。
見た目は比較的優しそうな人だ。
女性店員は俺の方を見てからニコッと微笑んでから元の接客へと戻っていった。
「それじゃ早速面接始めたいんだけど、あっちの席に座りながらやろっか」
店長だと思われる男性に案内され俺は1番奥の4名席に座ってから面接を受ける事になる。
「じゃあまず履歴書見せてもらっていいかな?」
俺は「はい」と頷いてから履歴書を取り出して店長に渡す。
それを店長は「ふむふむ……」とじっくり眺め始める。
少し沈黙の時間が訪れる中俺は心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
バイトの面接と言えどここまで緊張するとは思わなかった。
俺は店長が履歴書を眺めている間に、心を落ち着かせる事にした。
これをバイトの面接だと思わず、演劇の舞台上だと思えばいい。
そうだ、海斗を演じる事にしよう。
海斗の人当たりの良さ、コミュニケーション能力は正直俺にはないものだ。
俺は一旦演技集中する為に目を閉じる。
そしてゆっくりと目を開く。
店長はようやく履歴書を見終わったのかこちらに顔を向けてくる。
「まずは星宮くんの長所と短所教えてくれるかな?」
今の俺にとってそれは簡単な質問だ。
そして俺は店長に向かってにっこり微笑んでからスラスラと答える。
「はい、まず私の長所ですが、それはコミュニケーション能力にあると思います。誰とでも円滑にコミュニケーションを取ることができて、良好な人間関係を築く事ができます。逆に短所は優柔不断なところにあると思います。私は飲食店でのメニュー選び等に時間がかかってしまう事があります。しかし、それらにも事前に情報を集め優先順位をつける事によって克服できると思っています」
一息でそう応えると店長は「そっか、そっか」と言いながら笑顔を見せてくる。
「うん。君合格」
「え?」
俺は思わず素の惚けたような声が出る。
まだ長所と短所しか言っていないのに合格を言い渡されてしまった。
「君は合格だよ。それじゃあ最初いつ来れるか決めようか」
「いや、え、ちょっと待ってください!」
「ん?どうした?」
「えと、本当に合格なんですか?」
「うん、だからそう言ってるじゃん」
「合格理由とかって聞いてもいいですか?その、てっきり数日後に電話掛かってくるものだとばかり思ってたので……」
「あー全然いいよ。まぁ確かに数日後に電話掛ける所も多いしね。この店も基本はそうだし。でも君はまずカフェで働くには必須の清潔感がある!そしてさっきから女の子たちの目線が突き刺さるその美貌!それで最後の決め手は受け答えがしっかりしてる!もうね、合格させるしかないでしょ、こんな優良物件。あと僕は人を見る目には自信あるしね。て事だから次来る日決めよっか」
「……はい」
俺はバイトの面接に合格した事にあまり実感が湧かなかったが、とりあえず次この店に来る日だけを店長と決めてから喫茶店Believeを後にする事にした。




