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第15話 リテイク

 また同じ場面の撮影のため俺の台詞からスタートする。


 俺はもう一度目を閉じ自分は継母だと思い込み、役へと没入する。


 そして目を開いてから決められた言葉を発する。


「ああ、うちはとても貧しい。遠くに仕事に行った夫は帰って来ないし、家には2人もの子供がいる。毎日を生きる事でさえとても大変なのに子供の面倒なんて見れるわけがない。……そうだわ!明日の朝早く、子供たちを森の一番奥へ連れて行き、そこでたき火をたいて、私はそのまま仕事に向かう。こうすれば子供達も帰り道分からなくて帰って来れなくなるわ!」


 ここまではさっきと同じ。


 次はグレーテルの台詞だ。


「私たちもうおしまいだわ!」


「しっ、静かに!なくのはおやめ。僕が何とか助けてあげるから」


 2人とも演技経験があるから中々に上手い。


 海斗に至っては現役で俳優やってるからかやっぱり同年代だと抜け出てるんだろうと感じる程に上手い演技を見せてくれる。


「グレーテル、安心して。神様はきっと、僕たちを守ってくださるよ」


 ヘンゼルは既に寝静まったグレーテルの顔を見ながらそう静かに呟く。


 ヘンゼルのこの言葉を最後に最初の場面の撮影は終了するのであった。


「はいカットカット!3人ともすっごく良かったよ!」


 最初の場面を撮り終え先輩が興奮した様子でそう話しかけてくるが海斗と彩葉はどこか表情が晴れない。


「……先輩が良いなら良いんですけど、やっぱ湊の後だとちょっと見劣りするかなぁって」


「確かにそれ分かるかも。てか湊が演技上手すぎなだけだけど」


 2人とも少しだけ自分の演技に納得いっていないようだ。


「2人とも納得いかないならもう一度撮影する?」


 先輩は気を効かしてかそう2人に問いかけると2人とも即座に「撮り直したい」と先輩に伝え、もう一度撮り直すことになった。


 しかし結局その後2人が納得するまで何度も撮り直す羽目になり、撮影が終わったのが18時過ぎたあたりだった。


⭐︎⭐︎⭐︎


 俺たちは既に大幅に下校時刻を過ぎており、このままだと活動どうこう以前に廃部にされかねないためすぐ部室に鞄を取りに戻り学校を後にすることになった。


 昼間はガヤガヤと騒がしい学校だが、夜になると真っ暗で何か出るんじゃないかと言うくらいには静かだ。


 グラウンドにいた運動部の人たちもいつのまにか姿を消しており、最後は俺たち映研部だけ取り残されていた。


 俺たち4人は普段と打って変わり静寂に満ちた学校を後にして帰路に着く。


 4人の間も静寂が支配していたが、先輩が口を開くことによってその静かな時間は終わった。


「そう言えばまだ3人の歓迎会してなかったしさ、時間よければなんだけど今からファミレス行かない?」


 俺たち3人は目を一瞬丸くしてから表情を綻ばせた。


「僕は構わないですよ先輩。親に連絡入れときます」


「あたしもさんせー!てか行こ行こ!」


 海斗と彩葉は結構フッ軽なんだろうな。


 一切の迷いなく即断即決で行くことを決めている。


 そして3人の目線が俺へと注がれる。


 俺は「……分かった。親に夕飯いらないって連絡しとく」と端的に応えると3人とも嬉しそうに表情を崩した。


 まぁ人間関係の付き合いって大事だからな。


 たまにはこういう催しに参加するのもいいだろう。


 俺はそう思い3人の後を着いていくのだった。

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