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第13話 変化する関係

 翌日、俺は登校して教室に入ってから自分の机の横に鞄を置き席に着席する。


 そして家で読んでいた小説の続きを先生が来るまで読む事が毎日の日課となっている。


 俺は鞄から小説を取り出していざ読もうとしたらふと視線を感じて顔を上げる。


 少し遠い位置で友人たちと会話を楽しんでいた彩葉が俺の方を見ていたのだ。


 俺がそちらに向かって睨みつけると彩葉はフイっと顔を逸らしてまた友人たちとの会話に混ざり始めた。


 一体なんだったのか。


 俺は少しでも怪しい動きをするのはやめて欲しい、とほんの少しだけ彩葉に対して思うのであった。


⭐︎⭐︎⭐︎


 放課後になり俺はすぐさま荷物を片付けて部室に向かうため教室を後にする。


 部室に到着し、扉を開けるとそこにはいつも通り聖先輩がスマホを触りながら席に座って待っていた。


「先輩今日も早いんですね」


「まあね。私クラスでは結構浮いちゃってるし、せっかく出来た可愛い後輩たちを待たせたくなんてないしさ。そういう湊くんもいつも早いよね」


「……俺は海斗や七瀬ほど友人がいませんから」


 どうやら先輩も俺と同じくクラスではぼっちのようだ。


 俺は少しだけ親近感が持てる気がした。


「そろそろ撮影始めたいんだけど、今日も読み合わせで終わっちゃうかな……」


 もう後2週間しか猶予が残されてないからか先輩からは前ほどの元気が感じられなかった。


「先輩、大丈夫ですよ。今日は七瀬も来ます」


 俺がそう言葉にすると先輩はまるで信じれてないように「……え?」と頭に疑問符を浮かべた。


 それから結構すぐの事だった。


 扉が開いて彩葉が姿を現したのは。


「えと、失礼します。てか湊教室出てくの早すぎなんだけど。一緒に部室行こうと思ったのに気がついたらもういなかったし」


「それはすまん。だけどよく考えたら俺がお前と一緒に部室行くわけないだろ?お前と少しでも関われば目立つからな」


「もうそれは気にしすぎでしょ」


「いやそうでもない。絶対に噂が広がる」


「えー」


 彩葉がぷくぅと頬を膨らませながらこちらを見てくるが俺は譲歩するつもりはない。


 俺と彩葉のそんなやり取りを目にしていた先輩が何が起こってるのかよく分からないみたいな表情で見てきたので簡単に説明だけしておく。


「昨日七瀬と……」


「彩葉だよね?」


 どうやら部室では名前で呼んで欲しいらしい。


 別に呼び方なんてどうでもいいと思うんだけどな。


 まぁ部室では基本他に先輩と海斗しかいないし大丈夫か。


「……彩葉と色々話をして、そしてなんとか部室に来るよう説得したんです」


「……ふーん、なるほど」


 先輩はまだ納得できてないような顔をしていたけど、これで映画撮影始められると思ったのか最近は暗かった表情も一気に明るくなった。


「それじゃあ、天童くん来たら早速撮影始めよっか!」


 とりあえず先輩も元気を取り戻してくれたようでよかった。


 俺は先輩にコクッと頷いてから鞄から小説を取り出して時間潰し始める。


 しかし俺はギャルという生き物を正直舐めていた。


「ねね湊、今度この店に2人で行ってみない?」


「まぁ時間が空いていたらな」


「ヤバ、このキャラクターめっちゃ可愛いんだけど!そう思わない?湊」


「確かに可愛いな」


 ……全然小説に集中できない。


 昨日の件で彩葉に懐かれたんだと思うけど、めっちゃ体を寄せてきてスマホを見せてくるもんだから体の柔らかい部分が接触したり彩葉の香水の匂いが漂ってきたりで全く小説の内容が頭に入ってこない。


 俺はちなみに恋愛経験がない。


 なんなら女子と関わった経験自体が少ない。


 だからこんなに近くに女子がいるというだけで胸の鼓動が脈打っているのだ。


 俺は彩葉に胸の鼓動が聞かれないように平静を装いつつ刻々と過ぎていく時間を過ごす。


 それから数分が経った頃にようやく海斗が姿を現した。


「すみません、遅れました」


 俺は助かったと思いながら救世主に目を向ける。


 救世主である海斗は彩葉の存在に気づき一瞬目を丸くしたが、俺と彩葉の物理的距離が少し近い事から色々情報を把握したようで何やら微笑ましい表情に変わった。


 海斗が来た事を確認してから先輩はパンッと手を合わせてから言葉を放った。


「それじゃあ早速短編映画のヘンゼルとグレーテルの撮影に取り掛かろっか!」


 こうして俺たち映画研究部初の映画作成が始まるのだった。

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