第123話 アイスコーヒー
場所は移動して近くの喫茶店。
彩葉と麗華の撮影が終わるのを待ってからここに移動してきた。
ちなみに麗華はこの後も仕事で色々と忙しいらしく先に帰ったのでここにはいない。
それで現在、俺の正面には腕を組んだ状態の彩葉、隣にはニヤニヤした様子の陽毬、そして右斜め前に何を考えてるの分からない視線を向けてくる友里。
俺は何故今こんなに女子3人に問い詰められるようなシチュエーションにいるのだろうか。
こうなるような事を何かした記憶もない為、弁明のしようもない。
先にこの後遊ぶ約束をしていた風間にレインで連絡を入れてから彩葉の方に向き直る。
それから誰も口を開かない沈黙の時間が数分経った後、まず最初に彩葉が口火を切った。
「……ねぇ」
彩葉はそれだけしか言葉を発していないのに俺の体は自然と硬直していく。
「な、なんだ?」
「……もう夏休みも結構経ったよね?」
俺は一瞬その言葉の意味が分からなかった。
だって……。
「……まだ3日しか経ってないけど?」
そう、3日しか経ってないのだ。夏休みは。
「……はぁ?口答えしないで。3日とか結構経ってるじゃん、夏休み入ってから」
…………。
俺はやはりその言葉の意味が分からなかったが、ギャルにとって3日はだいぶ長い時間のようだ。
一般人とギャルの感覚の違いに俺は驚きを隠しきれず、一応確認の為隣の陽毬に視線を送ってみるが、陽毬は首を横にフルフルと振って否定した。
別にギャルの時間感覚がおかしいのではなく、彩葉の時間感覚がおかしいだけなようだ。
だけど今彩葉に口答えしたら絶対に面倒な事になるので口答えはせずに言う通りにしよう。
「えっと……それで用件ってなんだ?」
今のままではいつ本題に入るのかすら分からなかったので、俺がそう促すように言葉を発する。
それに対して彩葉は俺にジト目を向けながら口を開いた。
「……湊が夏休み入ってから全然連絡くれないな、って思ってさ。あたしはずっと連絡待ってたのに」
そう言って頬を膨らませる彩葉。
ってちょっと待て。
まさか俺はそんな事でここに連れてこられたのか?
隣に目を向けると相変わらず首を横に振られ、右斜め前に目を向けるとまるで自分は関係ないとでも言うようにそっぽを向かれた。
俺は視線を彩葉に戻し、はぁとため息を吐いてから一応謝罪の言葉を言っておく。
「その……悪かったな、連絡しなくて。てか別に彩葉からいつでも連絡してくれていいんだからな?」
俺がそう発すると彩葉は目を輝かせた様子で「いいの!?」と言ってきたので俺は首を縦に振っておく。
そうして用事も終わった事だし俺はそろそろ帰るか、と思いその場を立ち上がったがそうは問屋が卸してくれない。
「どこ行くの?」
ニッコリとした笑みでそう声を発する彩葉に少しだけ恐怖を感じたが、なんとか言葉を絞り出す。
「……実は今日、風間とゲームする約束しててな。その今待たせてるから早く帰らないといけないなって」
「ふーん、秀と、ねぇ。そのゲームって面白いの?」
まさか風間との約束、ではなくてゲームの方に興味を持たれるとは思っておらず俺はポカンとした顔になりながら声を出す。
「あ、ああ。面白いな。俺はいつもやってる」
「あ、もしかして前言ってたやつ?」
「……よく覚えてるな。そうだ、前言ってたやつだ」
そういえば5月くらいに風間と部室でやってた時に興味持たれたんだっけか。
あの時に今度マルチやろう、みたいな約束をしていたのにすっかり忘れていた。
俺は今その事を思い出し、5月の時は結局有耶無耶になってしまったのでもう一度彩葉を誘ってみる事にする。
「なぁ彩葉。ちょっと今日この後は無理かもしれないが、明日一緒にゲームするのはどうだ?予定空いてたらでいいけど」
俺の言葉に今度は彩葉が呆けたような顔をする。
そしてハッと気づくとスマホで明日の予定をすぐに確認し始めてから項垂れた様子を見せる。
「明日は仕事入っているし無理っぽい……明後日なら空いてるけど……」
そう項垂れている彩葉に俺は「じゃあ明後日一緒にやろうな」と声をかけておく。
俺の言葉に彩葉は顔を上げて「いいの!?」と聞いてくる。
「いいも何も俺から誘ってるんだしな。それに幸い俺は明後日も暇なんだよ」
そう言ってから彩葉に向けて笑顔を向ける。
すると何故だか彩葉は顔を紅潮させて「……ありがと」とだけ呟いた。
その様子を見ていた外野2名が、何やらニヤニヤした様子でボソボソと囁き合っている。
「ねぇねぇ友里、湊っちってホントタラシだよねぇ」
「分かるわぁ、陽毬。湊ってああいう所あるよね」
2人の言葉を聞こえないふりして俺は目の前に置かれているアイスコーヒーに口をつける。
実は彩葉と話している時に既に注文したアイスコーヒーを店員さんが持ってきていたのだが、今まで飲むタイミングがなかったのでようやく口をつける事に成功したのだ。
彩葉たち3人もそれぞれ各々が頼んだドリンクに口をつけている。
3人も俺と同じように口をつけていなかったのか量は全然減っていない。
俺はそんなドリンクを美味しそうに飲む3人の様子を視界に収めながら再度アイスコーヒーを口の中に流し込む。
美少女3人を視界に収めながら飲むアイスコーヒーはとても美味しく感じたのだった。
いつも読んでくださっている読者の方々、本当にありがとうございます。皆様が読んでくださっているおかげで私のモチベーションも高まり今まで欠かさず毎日投稿する事ができていました。
しかしちょっと私のプライベートの方で最近忙しくなってきており、小説を書く時間があまり取れないような状況になって来たので、次回以降の投稿は1週間毎に変更しようかなと思っております。
と言っても12月にはこれも落ち着くと思っているので、11月いっぱいは1週間毎の投稿にし、12月にはまた元通り毎日投稿しよう思います。
投稿日はこの話と同じ火曜日0時を予定しております。
どうかこれからもこの作品をよろしくお願いします。




