第122話 人混み
終業式の日に彩葉を落ち着かせるのには苦労したが、とりあえずなんとか無事に一学期を終えて夏休みに突入する事ができた。
まぁ夏休みと言っても基本やる事がなく一日中家でゲームしてたり、バイトある時はバイトしたりとこれ以上ないほどに怠惰な生活を送っていた。
今日もちょうど今バイトが終わってあとは家に帰り、風間と通話しながらEMをするだけだ。
夏休みに入ってもう3日経つが俺はこの3日間風間と、あとは千影としか連絡を取り合っていない。
風間とは同じゲームをやる仲間としてよく連絡取り合う仲だが、千影には単純に今度一緒に飯行こうと誘われたのだ。
それに関しては特に断る理由もないので了承するメッセージを返しておいた。
それで他のメンツ、映研の部員達や俺の友人グループの女子達とは特に連絡を取り合ってはいない。
こちらからも用もないのに連絡する必要はないと思い特段連絡はしていない。
俺は今皆は何してるかな、と思いながらパッと腕時計を見てみるとちょうど17時10分を過ぎたあたりだった。
風間との約束の時間は18時。
まだ時間には余裕あるのでゆっくり帰るとしよう。
そう思いながら自転車を漕いでいると何やら公園に沢山の人が集まっているのが見える。
何かイベントでもやっているのか?と思い気になって自転車から降りて近づいてみるとどうやら有名なモデルの撮影を行っているらしかった。
俺は人混みを掻き分けてできるだけ近くまで行くとそのモデル達の姿が見えてくる。
モデル達、というのも実は写真を撮られているモデルは2人いたのだ。
片方はセミロングの銀髪を靡かせており、もう片方は長い金髪が風によって揺らされている……ってどっからどう見ても白石麗華と七瀬彩葉である。
俺は見なかった事にしてさっさと人混みから抜け出して自転車に跨り家まで帰ろうとしたが、自転車に跨った瞬間ポンッと後ろから置かれた手に冷や汗が出る。
恐る恐る振り返るとそこには友里と陽毬の2人がそれはそれはいい笑顔で仁王立ちしていた。
「こんなところで奇遇だね、湊」
「ねぇ、今なんで帰ろうとしたのかな?湊っち」
どうやらもう時すでに遅し状態らしい。
俺はハハッと乾いた笑みを浮かべながら再度自転車から降りるのだった。




