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第121話 フラッシュバック

 教室の前でもう後は家に帰るだけの星宮グループの面々と分かれてから俺は一学期最後の部室へと訪れる。


 と言っても夏休み中であろうが、学校の規則上部活動は行わなければならないので度々夏休み中も部室には来ることがあるだろうけど、とりあえず一学期は最後という事で顔を出すことにした。


 ……まぁどうせ何もやらないんだろうけども。


 というかこの6月と7月で映画研究部が何も行動を起こしてないからか本当に廃部にならないのか心配になってくる。


 生徒会も一応許容しているという話だし多分大丈夫だとは思うが。


 俺はそんな事を心配しながら歩いているといつの間にか部室の扉の前に立っていた。


 部室の扉へと手をかけるとこの一学期の間に起こった事がフラッシュバックしてくる。


 初4月に初めてここを訪れた日からもう既に3ヶ月が経過しているのだ。


 時が経つのが早いというのはこういう事を指すのだろう。


 俺は自然と笑みが溢れながら扉を開ける。


「こんにちは」


 もはや部活に来る時にはいつも口にする言葉。


 最初は挨拶なんか自分にとってはする必要のあるものなのか甚だ疑問だった。


 ただの礼儀としてしか挨拶はしなかった。


 でも今では俺がその言葉を口にすると部室にいる皆はこちらを振り向いて言葉を返してくれる。


「ん?湊くんやっほ。今日は遅かったね?」


 全ての始まりは聖先輩だった。


 この子供のような見た目とは裏腹に映研で1番しっかりしている皆のお姉さん的存在だ。


「あ、湊。今日はあたしの方が早かったね?」


 彩葉とも色々あったな。


 最初は結構嫌われていたはずなのに、過去の話を聞き彼女を励ましていつの間にか気軽に接する事のできる異性となっていた。


「やぁ、湊。湊が1番遅いなんて珍しいね」


 海斗はいつでもどこでも聖人だったな。


 自分の事はあまり話さないくせにいつも相談に乗ってくれて頼りになる存在。


 まだまだ海斗については知らない事も多いけど、これから徐々にそれらも知って行けたらと思う。


「……あぁ、今来たのか星宮。あまり心配はしていないが、夏休みの宿題はちゃんとやれよ?」


 そう言ってニヤけた顔を見せるのは二宮先生。


 先生は普段は怠惰で酒カスで正直救いようがない程にクズと言われるべき人間だが、それでもいざという時は教師らしく生徒を導こうとしているのを俺は知っている。


 俺たちにとってはこの学校で1番頼れる教師である事は紛れもない事実だ。


「よ、湊」


「おっせぇなぁ、何してたんだよ?」


 そして風間に荒井。


 風間に関しては子役時代の俺の事を知っていた事もあり、直ぐに仲良くなれた。


 荒井は5月の映画撮影の時に俺を助けてくれた事を覚えている。


 この2人が映研に入ってくれて本当に良かったと思う。


「やっほー、湊くん」


「湊っち、何かあったん?」


 今度は友里と陽毬だ。


 2人とも見た目は彩葉となんら変わらない美少女のはずなのに凄く接しやすくて女友達という関係を築けていると思っている。


 こう映研の部室内を見渡してみるとやっぱり俺にとって最高に居心地のいい空間なのだと実感させられる。


 ……だからこそ俺は声に出して言いたい。


 何故……何故……彩葉はあんなに黒いオーラを纏っているのだろうか。


 俺に声をかけてきた時からなんとなく察してはいたのだ。


 口元は笑っていたくせに目元が全く笑っていなかったのだ。


 そして何故……何故……他の皆は俺から視線を逸らしていくのだろうか。


 どうやら誰も俺の味方をしてくれる人間はいないようだった。


 俺は何故こんなに彩葉が怒っているのか分からず、ただただ疑問が頭の中を駆け巡るのみだ。


「……なぁ、何をそんなに怒ってるんだ?彩葉」


 俺は試しに彩葉にそう言葉をかけると彩葉は少し悩んだように空を見上げて「んー」と唸った後にニコッと微笑んで言葉を発した。


「えー別にあたし怒ってないけどぉ?湊が最近あたし達よりも二階堂さん達を優先にしている事なんてぜーんぜん気にしてませんけどぉ?」


 ……やっぱそれに対して怒ってるんだな彩葉。


 なんとも分かりやすい奴だ。


 しかしいくら彩葉と言えど俺の交友関係に口出しする言われはないので、この怒りはお門違いと言えよう。


 ただ彩葉がこう怒っていてばかりだと部室の空気も暗くなるので俺は代替案を提案する事にした。


「……なぁ彩葉。その夏休み中に皆でどこかに出かけないか?7月中にでも」


 俺のその提案は思った以上に彩葉に聞いたのか一瞬で彩葉から出ていた黒いオーラが引っ込んで今度は身体中から嬉しさが滲み出始めた。


 部員の皆も少しホッとしているようだ。


 そうして直ぐにスマホを開いて空いてる日程を調べ始めた彩葉だが、徐々に表情が曇り始める。


「ねぇ、湊。あたし、7月は基本モデルやドラマの撮影で忙しくてさ、31日しか空いてないんだけど大丈夫そう?」


 流石は人気モデルと言ったところだ。


 夏休みといってもあまり休みはないらしい。


 しかし31日か。確かその日は愛花達とプール行く約束していたんだよな。


 流石に先に約束をした愛花達との約束を断る事はできないので、俺は凄く申し訳なさそうな顔を作りながら彩葉に謝る事にした。


「悪い、彩葉。31日は愛……二階堂達と遊びに行く約束しててさ。その……無理そうだ。だからまた8月で空いてる日分かったら連絡くれ。な?」


 比較的穏便に済ませようとそう謝罪の言葉を口にしたのだが、周りの部員達からはダメだこりゃというような目線を向けられて呆れられている。


 案の定というかなんというか彩葉もワナワナと拳を振るわせながら上に向かって大きく口を開いた。


「湊の…………馬鹿ァァァァァァァァァ!!!!」


 その声は学園中に響き渡り一瞬教室が揺れたのかと錯覚するほどだった。

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