第118話 回転寿司
俺たちは思い切りカラオケを楽しんでいたらいつの間にか時間になっていたので伝票を受付に持って行き会計をする。
既に金自体はさっきの部屋で女子に渡しているので俺と千影は女子3人が会計をしている様を後ろから眺めている。
俺は先々月に映研の皆とカラオケに来た時とは違う楽しさがあり、友人というものの有り難みを一人実感していた。
映研の面々と行った時はまだ彩葉と海斗以外とは顔合わせたばかりで内心緊張していたしな。
俺はたまにはこうやって羽目外して友人と遊ぶのもいいな、と思っていたらもう会計は終わったのか愛花たちが俺と千影の方へと寄ってくる。
「2人ともお待たせ!じゃあそろそろ夕飯行く?」
「愛花に賛成。お腹も減ってきたところだし適当なところで夕飯済ませよ」
そう言えば確かに少し腹減ってきたかもな。
愛花と葵でもう夕食行く事は決定事項になっていたようで俺は家に夕飯いらない旨を伝えるレインを入れてから「じゃあどこ行く?」と言葉に出す。
正直俺は基本好き嫌いはないし、腹に入れば何でも同じだという考えなので夕飯の場所に強い拘りはない。
俺は食べる場所は皆に任せようと思ったらすぐに千影が挙手をして千影らしい意見を出す。
「ラーメンとかどうだ?」
おそらく千影の行こうとしているラーメン屋はこの前俺を連れて行ってくれたところだろう。
あそこのラーメン屋は美味しかったし、確かにありかもと思い俺は賛成の意見を示す為に口を開こうとしたが、すぐに女性陣達のため息と軽蔑したような視線が千影に突き刺さる。
「はぁ?ありえないでしょラーメンは」
「男子ってラーメン好きなのは分かるけど女子を誘うのはどうかと思うわよ。ラーメンとか太る原因だし、何より口臭くなったりもするからデートでラーメン連れて行く男はどれだけ他が良くても絶対振るね」
「……ラーメンはない」
俺は千影の意見に賛成を示す前で良かったと心の底から安堵した。
女子3人にボロクソ言われたせいか千影の目尻に涙が浮かんで見えるのは気のせいではないだろう。
千影は俺の方を振り向いてきて恐る恐ると言った感じで声を発する。
「み、湊は……ラーメン、ありだと思うよな?」
「いや普通に考えて女子いる時にラーメンはないだろ。男同士ならまだしも」
同じ男である俺に助けを求めてきた千影だったが、俺はそれを心の中ですまない、と謝罪しながらもバッサリと容赦なく切り捨てる。
先程まで内心で千影に賛成していた立場でもあり、凄く罪悪感が湧いてきたがこれは仕方あるまい。
俺だって女子を敵に回したくないのだ。
「やっぱ千影なんかより湊くんの方が彼氏として絶対いいよね!女心分かってくれるし、スポーツも出来るし、眼鏡で分かりにくいけど顔も結構イケメンだし!」
……すまない愛花。
他はともかくとして俺はおそらく女心をあまり理解できていないと思う。
女心を理解できていれば彩葉に怒られる事も減るだろうしな。
謎に愛花の俺に対しての好感度が上がり続けているので俺は愛花に対しても心の中で謝罪をしておく。
さて気を取り直して夕飯選びだが、俺は口は災いの元と言うのを先程の件でよく理解したので何も意見を出さずに女子3人に流れを委ねる事にした。
するとすぐに行く場所が決まったようで俺たちは移動を開始した。
と言っても徒歩2分。
なんなら同じショッピングモール内の1階にあるレストランが沢山並んだ区画の一番端。
俺たちはそこにある回転寿司へと訪れていた。
平日だから空いているのかそれなりに席は空いているようで入店すると同時に俺たちはすぐ席へと案内され、一旦落ち着く事ができた。
どうやらこの店はタッチパネルから注文するようで先に女子に注文してもらい、その後に俺と千影も注文する事にした。




