第116話 ある日の放課後
7月の上旬、とある日の放課後。
俺たち星宮グループは5人で水着を物色しに来ていた。
「ねぇねぇ、湊くんはこの水着とかどう思う?」
そう言って赤いポニーテールがチャームポイントの二階堂愛花が黒いビキニの水着を試着してから試着室のカーテンを開けて見せてくる。
全体を見ると比較的大人っぽい感じの水着で普段の愛花の印象とは違いギャップという意味でも似合っていると言ってもいいのではないだろうか。
俺は口を開けて愛花に似合っている事を伝えようとしたら突然横に現れた俺の友人である佐藤千影が鼻で笑いながら口を開いた。
「けっ、お前みたいなお子ちゃまにはそんな水着似合わねえよ。お前なんて大人っぽいビキニとかじゃなくてスク水でいいんじゃないか?」
千影のそんな煽る発言を受け取った愛花はやっぱりカチンと来たのか顔を真っ赤にして怒りを露わにしている。
「は、はぁ!?あんたにそんな事言われる筋合いないんですけど!だからモテないのよこの性悪男!」
「あ?今俺がモテない事とか関係ないだろうが!俺には湊がいるから今の生活充実してるからいいんだよ!」
「湊くんも友達は選んだ方がいいと思うよ!こんな性悪男なんかじゃなくてさ!」
そんな感じでバチバチと視線をぶつけ合う愛花と千影。
今回に関しては先に喧嘩を売った千影の方が悪いと思うが、普段から愛花が煽っているところもあるので正直どっちもどっちと言った感じだ。
俺はこの2人の仲裁に入るのが面倒臭いので視線を他の場所に移す。
すると今度は愛花の隣の試着室が開いて見事な美しいスタイルをした美少女である水瀬葵がポーズを決めながら自身の体を見せつけてくる。
「ねぇ、湊くん。この水着、どう思う?」
「え、いや、どうって言われても……似合っているんじゃないか?」
俺は葵の来ている水着に視線を向けてから無難な解答をする。
「ふふ、ありがと、湊くん」
そんなありふれた褒め言葉でも喜んでくれたのか葵はニコッと微笑んでからカーテンを閉めた。
おそらくもう私服に着替える気なんだろう。
隣でいつまでも言い争いをしている愛花とは違う。
飽きないものなのだろうか。
そんな呆れた視線をいつまでも言い争ってる愛花と千影に向けていると1番左の試着室も開き、小豆が姿を現した。
「……どう?」
その水着は淡い水色をしており、愛花や葵が来ていたようなビキニとは違い体全体を覆うような水着だった。
体の女子的な特徴をアピールする事はしていないが少し小柄で同級生たちに比べてまだ幼さを感じさせる小豆には凄く似合っていた。
「あぁ、似合ってるよ小豆」
俺は喉の奥からそう言葉を絞り出して小豆の水着を褒める。
小豆は俺の言葉が嬉しかったのか顔を少し赤らめてからすぐにカーテンを閉め切った。
俺は三者三様の女子たちの水着を堪能してから、何故今こんな事になっているのかを思い出す。
そう、確かあれは今日の放課後、突然の事だった。




