第100話 モテ期到来
俺たちは試合が終わってから昼食のために一旦解散する事になった。
今日は球技大会という事でクラス全体で食事を摂るのではなく、各自食べれる時に昼食を済ませるという事だったので俺は1人木陰へと向かう。
最初海斗に一緒に昼食をしないか誘われたが、どうせ彩葉たちもいるしあんなキラキラした空間に俺が入っていったら否が応でも目立ってしまう。
なので俺はそれを丁重にお断りしてから1人で木陰で昼食を摂る事にしたのだ。
母さんの手作り弁当を開けて「いただきます」と小さく呟いてからいざ弁当箱の中に箸を伸ばそうとしたら3人ほどのキラキラした女子に突然囲まれてしまう。
「ねぇねぇ、星宮くん。隣いい?」
「さっき星宮くんめっちゃ格好良かったよ!普段はあんまイメージ無かったけど運動できるんだ?」
「てかよく見たら眼鏡取れば相当なイケメンじゃない?私天童くんみたいなイケメンも好きだけど星宮くんみたいな影のあるイケメンも結構好きかも!」
「ちょ、それはあんた節操なさすぎだって!星宮くんも困ってんじゃん!」
「あ、ごめんごめん。これから星宮くん一筋になるから許して?」
俺は軽く頭がパニック状態になる。
突然俺の近くに寄ってきた女子3人はどうやら俺の事を知っているらしいが、俺にはこの3人の記憶はない。
ていうか多分同じクラスの人間なのだろうが、普段周りを気にしてないせいかパッと名前も出てこない。
「えっと、どちら様で……?」
俺が少し戸惑いながらもそう声を絞り出すと3人は女子らしい笑い声を上げてから俺に向かって自己紹介をした。
「私は二階堂愛花。私も湊くんって呼ぶから気軽に愛花って呼んでくれていいからね?」
「ああ、二階堂さん?」
「あ・い・か!」
「……あぁ、愛花」
どうやら先程俺一筋になるとか宣言していた彼女の名前は二階堂愛花と言うらしい。
それにしても女子のこういうノリにはいつになっても慣れる気がしない。
男子にとって女子の名前を気軽に呼ぶ事がどれだけ難しいかを理解してないのだろう。
「じゃあ次は私ね。私は水瀬葵。これからよろしくね!湊くん」
「あぁ、み……」
「葵だよ?」
「……あぁ、葵」
愛花の事を節操ないと表現していた彼女の名前は水瀬葵と言うらしい。
……と言うか早くこの場から逃げ出したい。
何故俺はクラスの女子たちに囲まれながら食事をしているのだろう。
今更ながら疑問すぎる状況だ。
そして最後、俺の隣に座った子が自ら自己紹介をした。
「私の名前は椎名小豆。よろしくね、湊くん」
3人の中で1番大人しそうな子だった。
「あぁ、よろしくな小豆」
俺は今度は間違えずに最初から下の名前で呼ぶようにした。
すると小豆はニコッと可愛く笑いそれに対して思わず自分の頬が染まっていくのを感じる。
それから3人の輪に加わる形で俺も一緒に今日の球技大会についての話題で盛り上がった。
しかしそんな時間もすぐに終わる事となる。
急に寒気がしてきたので顔を上げるとそこには完全に後ろに般若の幻が見えるほど怒りを露わにした様子の彩葉が突っ立っていた。
小豆たち3人は誰もまだ気づいていないようだが、彩葉が「ちょっといい?」と一言発するだけで3人とも顔を上げる。
「え、七瀬さん?どうしたの?」
「私たちに何か用?」
「……?」
愛花と葵は彩葉に向けてそう問いかけ、小豆は首を傾げて彩葉を見る。
その3人に対して彩葉は「んー」と声にならない声を発してから少し考えて俺の方を指差して言った。
「ごめんけど星宮くん連れて行っていい?なんか男子のサッカーの事で海斗が話あるみたいでさ」
「あーそれなら仕方ないね」
「じゃあまた話そーね!」
「……バイバイ」
俺は3人に見送られる形で彩葉に連れられて海斗たちの場所へと向かう。
その間彩葉と俺の間に会話はなく、無言でこっそりと彩葉が俺の二の腕をつねってくる。
何故こんな仕打ちを受けなきゃならないのか甚だ疑問だが、女子に逆らうのは怖いのでここは甘んじて受ける事にする。
そして見知った面々のところに到着すると俺は早速海斗に何を話す事があるのか問いかけた。
「そんで海斗、俺に何の話があるんだ?」
そう俺が言葉にすると海斗は何故か俺と目を合わせようとせずに「あー」と言葉を発してから目がキョロキョロと動き出す。
「いやー実は僕自体は用なんてないんだけどね……」
「え、でも……」
俺がそう言って隣に視線を動かすとそこにはいまだに般若が宿った様子の彩葉が地面を指差していた。
「ねぇ湊、とりあえず正座して?」
「え、何で……」
「正座して?」
「いや、だから……」
「そこに正座!」
彩葉が普段出さないような唐突の大声にこの場にいる全員がビクッと体を反応させる。
俺も今の彩葉に逆らったら流石にまずいと察して潔くその場に正座をする。
「ねぇ湊、何を水瀬さん達と話していたの?」
俺はなんだ、そんな事かと彩葉の質問に拍子抜けしてしまい、単純に今日の球技大会の事について話して盛り上がっていたと説明した。
しかしその説明だけでは彩葉の怒りも収まらないようで俺を上から見下ろしながら言葉を発する。
「へぇ、あたし達とは目立ちたくないからってクラスでは言葉を交わさないのに他の女の子とは言葉を交わすんだ?へぇぇぇぇ?」
「あ、えっと……その……」
俺は彩葉の言葉に何も反論する事ができず口篭ってしまう。
「あたし達はいつも湊に配慮して話しかけないようにしてるのにね?湊は普通に女の子達と楽しそうに話すんだね」
「それは……その、すまん」
「て言うか湊はさ、普段から……」
その後は俺たちの次の試合が開始されるまでずっと彩葉の説教タイムが続いた。
友里と陽毬はこれを笑いながら面白がって途中から撮影始めているし、海斗たち男子組は俺に同情するような目線を送ってくる。
俺は何故こんなに叱られなければならないのか訳が分からなかったが、やはり女子には逆らえないので彩葉の気が済むまでその場に正座し続けるのだった。
読者様方がいてくれてるおかげで無事100話という大台に乗ることが出来ました。
これからも毎日1話投稿で書き続ける予定ではいるので、映画研究部の皆を取り巻く物語を見守ってやってください。
そして引き続きこの作品の応援をよろしくお願いします。




