第0話 四年前
僕は現在沢山のカメラに取り囲まれている。
今はドラマの撮影中で僕はヒロインの弟役だ。
ドラマの名前は「僕と君の初恋」。通称ボクキミ。
原作作品は漫画であり、累計発行部数1000万部以上の超人気作である。
僕はカメラに囲まれながら決められたセリフを口に出す。時にはアドリブも入れながら役を演じる。
そして少し経ってから僕と入れ替わるように新たな登場人物、主人公の母親役の女性が姿を現す。
本名は星宮千秋。
今現在日本で1番売れている女優と言っても過言ではない存在だ。女優業以外にも歌手としても活動しており、相当異質な才能を有しており、生きた伝説とさえ言われていたりする。
そんな彼女が姿を現した途端、場の空気が変わる。
いや彼女に場を支配されたと言ってもいいだろう。
主人公やヒロインに比べて明らかにレベルが違うと言っていい程に演技が上手いのが分かる。
だからと言って目立ちすぎる事はなくあくまで母親という脇役として適度な存在感を放っている。
この絶妙な存在感を意図して出せるのがこの天に二物も三物も与えられた星宮千秋という存在感なのだろう。
僕は撮影現場の外側から星宮千秋という女優に目を奪われていた。
僕はメディアでは天才子役だったり、新時代の麒麟児とか言われているが、星宮千秋が別格だという事は否が応でも理解させられてしまう。
そしてそんな星宮千秋は実は僕の母だったりする。
僕は天才女優の息子として生まれた事を誇らしく思う。
僕の名前は天才女優の息子、星宮湊。
この頃の僕は周りにもチヤホヤされていてまさかあんな事になるなんて夢にも思っていなかった。