血と言葉2
これで私は、血を代償に、私はこの世界の言葉がわかるようになった。
「大丈夫か?」
――彼は、そんなふうに言っている気がする。
「だいじょぶ」
口パクで伝えてみた。
「おぉ、口きけなくても口パクはできるんだな。
いきなり血出すもんだからビビったぜ全く...」
そんなに早口でしゃべられても、口の動きだけじゃさっぱりわかんない……
とりあえず、文字で伝えよう。
枝で地面に文字を書く。
『村行きたい、耳聞こえない。』
書き終わると、彼の目が見開かれた。
「な、お前、耳も聞こえなかったのか……」
耳も聞こえず声も出せず、モンスターに襲われる。それがどれだけ恐ろしいことか、ウェインには想像もつかなかった。
ウェインも枝を取り、地面に文字を紡ぐ。
『そうか、すまなかったな。連れて行ってやるが、お前、大丈夫なのか?』
ウェインは心配していた。代償魔法の使い手の若者がこんな森の奥で一人死にかけていた。
一人でこんなとこまで来られるわけがない。誰かに捨てられたんだろう、きっと。
そんなヤツらがいる村に返したら、また同じ目にあうかもしてない。
代償魔法なんて魔法を手にしてしまったばかりに...
マコトは、困っていた。
文字があんまり読めないし、書けない.......
血を代償にしたのに、どうして?
少ししか言語を理解できていない。
それもそのはず。今のマコトは、この世界の5歳児ほどの言語能力しかなかった。
彼女には言語理解を可能にするほど血が残っていなかった。中途半端な代償には、中途半端な成果が帰ってくる。
でも、どうやら私を心配しているらしい。
『なんで?私、だいじょうぶ』
「あー....なんていうべきなんだ....?」
えっとな、とウェインが言うと文字を書き始める。
『村に帰っても平気なのか?』
なるほど、多分だけど、彼は私が、誰かに捨てられたり、追い出されてここに来たと思ってるのかな?
別にこの世界の人とはまだ接点ないんだけどなぁ
まぁいっか、その設定貰い。
『私、遠くから来た。だいじょうぶ。』
「胸糞わりぃ話だな...」
ウェインは見たこともない、存在をしない相手にイライラしていた。
まぁ私の存在しない過去のことはどうでもいいのですよ。そんなことより今は
『お腹空いた』
「あー.....飯でも食うか。」