森の中
マコトは森の真ん中に突如現れた。
白色のローブに白い肌。黒い髪に黒い瞳。美しい女性だ。
圧巻の美しさとは対照に、触れれば消えてしまいそうな危うさをおぼえる。
かわいくもあり、美しくもある。
矛盾しているようで、それでいて自然だった。
矛でも盾でもない。ただ「女性」という存在の象徴だった。
「 」
これが、異世界?
そう言おうとしたが、声が出ない。
喉が動いても、音がしない。
……そうだ。
やけに静かだ。
木々は風に揺れ、草木が触れる感触もあるのに、
耳に音が届かない。
ああ、本当に――
ここは異世界で、私は女性になったのだ。
私はゆっくりと自分の身体を見下ろす。
膨らんだ胸、細くなった指、長く伸びた髪。
声は出せず、音は聞こえず、きっと妊娠も――できない。
けれど、そんなことはどうでもよかった。
だって私は、女になったのだ。
代償は確かに大きい。損しかないとすら思う。
でも、それでも。
かわいく、きれいに。飾って、磨いて、鍛えて。
私はこの異世界を歩いていく。
恋愛、したいなぁ。
まずは、この森を出なきゃ。
女神は言っていた。
この世界には魔法があり、人がいる。
あの女神、性格はちょっと悪そうだったけど……
それでも、さすがに人里は近くにあるだろう。