35 ファーマル防衛線7 オークエンペラーの右目の色
「俺はシアン=ソイル。シルビドの街の冒険者だった、父であるフォスター=ソイル、母であるメイドーラ=ソイル、二人の息子です」
「な……なんだと……貴様が……お二人のご子息、だと……」
「なんと、まさかあなたがそうだったとは……」
暴走気味にオークエンペラーに突撃をしていった、ルウロウさんと弟のルウディーさん。
彼等は十年前、オークの軍勢に襲われたシルビドの街にいたらしい。
逃げようとしたが転んでしまい、巨大なオークエンペラーに見つかり恐怖で動けず、うずくまっていたところを冒険者だった俺の父さんと母さんに助けられ、命を救われた。
彼等は自分たちを守って命を落としてしまった二人に恩義を感じ、ファーマルにいる息子さんを守ろうと必死に剣技を身につけたそう。
でも二人は俺の名前は知らなかったみたい。
まぁ、故郷だったシルビドの街は十年前に滅んだし、手がかりである名前を冒険者センターに登録していたのは父と母の二人だけだしな。
冒険者でもなかった俺の名前はどこにも登録されていないし、孤児院では本名ではなく、番号で呼ばれていたからな……。
「父と母が命をかけてお二人を助けたのは、それが未来を繋ぐ最善の策だと思い行動したからだと思います。自ら重荷を背負わないで欲しい。自由に生きて、これからはそれぞれの幸せを掴んで……」
「……! すまない……! 知らなかったとはいえ、守るべき恩人のご子息に酷い言動をとってしまった……。確かに背負いこみ過ぎて視野が狭くなっていたかもしれない、だが安心してくれ、これからは私たちがシアン様をお側でお守りいたしますので……」
「ルウディーと申します、シアン様! あなた様のご両親に救われたこの命、ご自由にお使い下さい!」
俺の話の途中で二人が膝をつき、かしこまった口調で頭を下げてくる。
ちょ、どうしたんですか……シアン様って……。
つかまだオークエンペラーと戦闘中なんですって。
「と、とりあえずその話は後でいいかい!? 気を抜くと本当に命を落としてしまうぞ!」
ロイドさんが大剣を構え、オークエンペラーを俺たちに近付けないように動き回りながら叫ぶ。
「ほ、ほら二人とも、早く戦闘に復帰を……」
「分かりました。シアン様、なんなりとご命令を」
「どうぞ盾として私をお使い下さい!」
ルウロウさんとルウディーさんに戦闘態勢を取ってもらおうとするが、二人が俺の少し前に立ち、守るように剣を構える。
ちょ……いつも通りの貴様呼びでいいですってルウロウさん……。ルウディーさんも、シアンとか、呼び捨てにして下さいって。
あと側にいられるの、正直やりにくい……
「俺なんてシアンでいいですって、二人とも……」
「嫌です。シアン様、です」
「当たり前です。命の恩人のご子息は誰に何と言われようが、シアン様、です」
あああああ……もう、そういうの背負わなくてもいいって言ったんですが……て、今はそれどころじゃあないか。
「くそ……!」
「柱魔法、アルズシルト!!」
動き回り、攪乱してくれていたロイドさんにオークエンペラーの巨大な斧が迫る。
俺はすぐにロイドさんの前に柱魔法を展開。その巨大な斧を受け止める。
「はは、さすがシアン君だ。すごいね、この柱魔法ってやつは!」
「みなさん、防御は俺に任せて下さい! 俺の柱魔法は絶対にオークエンペラーの攻撃を受け止めることが出来ます! 出せる数は三本同時が限度ですが、これを壁に使えば、全ての行動を攻撃に割くことが出来るはずです!」
オークエンペラーの動きは巨体故にそれほど機敏ではない。
ロイドさんの速度で攪乱が出来、そして攻撃は俺の柱魔法で完全に防御可能。
だが、こちらの攻撃が一切通らないというのが……
「三体同時に来る……! 黒猫ニョーン!」
オークエンペラーが俺の柱を避け、三体同時に斧を構え突撃をしてくるが、ヴィアンさんが顔をめがけ黒猫魔法を放ち爆発させ視野を奪う。
顔に着弾する寸前、彼等は巨大な斧で黒猫魔法を防御。
やはり効かない……いや、待て。
「柱魔法アルズシルト! ……ん? よく見ると、目の色が違う……?」
視界不良になったオークエンペラーの前に柱魔法を二本出し、動きを制御。
爆発の煙がなくなり、ちょうど太陽の光が彼等の目に当たる。
今まで気が付かなかったが、よく見ると、オークエンペラーの目って左右で違う色なんだな。
左目は黒いのだが、右目は綺麗な黄色の宝石のような目になっている。
……そういえば、足や身体への攻撃には一切動じないが、顔を狙うとやけに反応早く、かばう動作を見せるな。
たしかに顔は鎧で覆われてはいないので、それを嫌がっているのかもしれないが……
しかしオークエンペラーの右目の黄色い感じ、なんとなく俺がリューネから貰ったネックレスに近い雰囲気を感じるんだよな。
「ルウロウさん、ルウディーさん、彼等の足元を走って攪乱をして下さい!」
「分かりましたシアン様!」
「任せて下さいシアン様、俺走るのは早いんですよ!」
俺はルウロウさんとルウディーさんに指示を出し、続いてルナにも指示を出す。
「ルナ、二人が攪乱している間、俺が柱魔法をオークエンペラーの周囲に展開する! 柱を駆け登って右目を攻撃!」
「右目……! わ、分かったわ!」
ルウロウさんとルウディーさんは速さもあるし、さすがに姉弟、コンビネーションが素晴らしく、攪乱にうってつけ。
ルナはここに来た時、オークの頭の上にジャンプし乗っかり、そのまま駆けることが出来ていた。
風の魔法を足に纏わせたのだろうが、それなら俺の柱魔法を駆け登り、オークエンペラーの巨体、十メートルを超えるところにある目にも攻撃が届くのでは。
さっきの顔を守る動作、オークエンペラーは、あの黄色い右目を傷付けられるのが嫌で顔の防御が早い、とも考えられる……。
どっちにしたって、他の個所への攻撃は一切通らない。
物は試し、やってみる価値はあるさ!




