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13 Sランクパーティー『月下の宴』の実技試験に合格したけどまとめ役がいない





「あの、試験の結果は……」


「ああ、シアン、かわいそうに……ルウロウにはあとでキチンと罰を与えておくからね」


「ヒャッハーー!! シアンの新鮮な柱だぜェェ! オラぁ!」


「ほぅっ……ほぅっっ……! 良い……お姉様の蹴りが、愛が、心に響きます……!」



 実技試験も終わり、結果をSランクパーティー『月下の宴』のリーダー、ロイドさんに聞こうとするが、ルナが抱きついて離れない。


 そしてさっき俺がルウロウさんの攻撃を防ぐために出した柱に、リューネが大喜びで激烈パンチを連打。


 足元ではさっき対峙したルウロウさんがルナに蹴られ、恍惚の顔で身悶えている。



 ……なんというか、誰も同じ方向を見ずに好き勝手やっている人の集まりって感じなんだが……



「……シ、シアン君……その、あの、さっきから柱をとんでもない剛腕で殴り続けている女性は、君の言うことを聞いてくれるんだよ……ね?」


 この集団のリーダーである男性、ロイドさんが不安気に俺に聞いてくる。


「あ、は、はい…………多分」


「合格! 実技試験の結果はシアン君、そしてリューネ君、共に合格! みんな、異論は無いね?」


 俺の言葉を聞き、ロイドさんが手を上げ宣言。


「はぁ!? ちょっとロイド、なんであの女も合格なのよ! 私が誘ったのはシアンだけよ!」


 ロイドさんの宣言にルナが怒り反論。


「多分……あの女性、とんでもなく強いよね?」


 俺が出した柱に無限パンチを繰り返しているリューネを見て、ロイドさんが冷や汗を出しながら言う。


「そ、それはそうですけど……! でもあの下品女、強さは天井突破ですけど、素行不良具合いが私たちのパーティーには合わないと言うか、私が嫌いと言うか……」


「ァアアアぁ……やっぱシアンの長くて固ぇ柱は最高だぜぇぇ! ヒャハハハハ! あァ? 誰が下品だって? それにアタシは人間のパーティーなんて興味ねぇんだよ。シアンさえいりゃあそれでいい。他はいらねぇ、勘違いすんなよ人間」


 ルナの言葉にリューネがイラっとした顔で睨みつける。


 やっば、リューネの睨みって、実力が伴っているから心底怖いんだって。


「ルナ、リューネは俺たちの大事な友人、悪く言うのはダメだよ。リューネも、トラブルを起こすようなら、柱はもう二度と出さないからね」


 頼むから落ち着いてくれ二人とも。

 

 リーダーであるロイドさんが困っているだろう。


「あ、ご、ごめんさない……悪気は無いのよ、でもシアンの今後の身の安全を考えたらね……」


「い、嫌だ嫌だ! アタシはシアンの柱がないとつまんねェ生活に逆戻りなんだ。二度とごめんなんだよ、ただ時間が過ぎていくだけの、張り合いのねェ虚無はよォ……言うこと聞くから許してくれよォ!」


 ルナとリューネにちょっと厳しい視線で言うと、二人が焦ったように身を正し謝ってきた。



「うわぁー……あのルナが素直に謝ってるー! 随分と気を許しているなー……あ、これはあれじゃないかなー、エルフと人間の少年との、禁断の歳の差婚……!」


「すごいなシアン君。よくルナレディアを……え? 二人は……け、結婚したのかい!?」


 メイメイさんが満面の笑顔でとんでもないことを言い、それを聞いたロイドさんが赤い顔で驚きの声を上げる。


 は? 結婚……? 俺とルナは出会ったばかりですって。


 こんな美しいエルフであるルナが、子供も子供、十六歳の俺なんかを相手にするわけがないでしょう。

 

 あんまり突拍子もないことを言わないで下さいよ、メイメイさん。


「き、貴様ぁぁ! だ、抱いたのか……貴様私のルナレディアお姉様を裸にしてアレやコレや……う、羨ましぁ抱いたのかぁぁ!」


「ちょ……! メイメイは面白いからって、余計な火種を投下しないの! ルウロウ! いい加減にしなさい!」


 さっきまで地面に転がって身悶えていたルウロウさんが飛び起き、殺気のこもった拳を俺に放つが、ルナがキレてルウロウさんの顔に思いっきりビンタを浴びせる。


 ル、ルナの裸……それはぜひとも、一生のうちに一度ぐらいは拝んでみたい光景だ。


「びゅはぁ……! 熱い……ルナレディアお姉様の熱い愛が私の身体に刻まれています……!」


「うわはぁ! すっごい、あの冷静ルナが表情をコロコロ変えて生き生きとしているよー? さっきまで落ち着きのあるアダルティパーティーだったのに、急にコミカル面白パーティーになったー! こういうの好きかもー」


 ルナのマジビンタを喰らったルウロウさんが吹っ飛び、それを見たメイメイさんが大爆笑。



「うふふ、こっちへおいでシアン少年。さっきのあなたの戦えない人を助けたいという言葉、とても格好良かった。それでね、柱魔法のこととか、爆発を無効化したこととか、あなたに聞きたいことがたくさんあるの。そうね、その代わりに経験豊富なお姉さんが……色々と教えてあ・げ・る」


 気付いたら突然俺の真横に黒いドレスのアダルティな女性が立っていて、ぐいっと俺を引き寄せ、その大きなお胸様に俺の顔を押し付けてくる。


 ふぉあああああ……!


 な、なんだこの大きさ……ルナ以上の物量……!


 あと足元にいる黒猫、超絶かわいい。


「うわぁ、今度は男に興味無しだった鉄の女、ヴィアンが仕掛けたよー? まずいよー、ルナの種族を超えた歳の差婚危うしー!」


 メイメイさんがチラチラとルナを見ながら、ニヤニヤ顔で大げさに煽る。


 うわぁ……この人、悪魔みたいな微笑みでこの状況を楽しんでいるぞ。


「うそでしょヴィアン……! あなた猫一筋じゃあなかったの!? 無垢なシアンを妖艶に誘惑しないでよ! この子は私が見つけてきたのよ!」


 ルナが焦った顔で黒いドレスの女性、ヴィアンさんから俺を引きはがそうとする。


「単に興味のある出会いが無かっただけ。でも、シアン少年にはとっても興味がある。このあと私の研究室においで……そうね、対価としては、ルナレディアの勝負下着がどれか教えてあげる。今後の参考になるでしょう?」


「ちょ……! 素直なシアンに変なこと教え込まないで!」



「……シアン、君、ルウロウの動き、全部目で追えていたよね。……すごい動体視力。……その才能、私の下で、開花させない……? ……ちょうど私、弟子が欲しかったの……」


 なんか太ももあたりが柔らかいと思ったら、さっきの狐耳パーカーの女性がしゃがんで抱きついてきていて、俺の筋肉をなぞる。


 ホァァ……! くすぐったいからやめて……!


「アイリーン……? 弟子って……あなた人間を殺すか暗殺するか、にしか興味ないでしょう? シアンはダメ、悪影響!」


「……酷いルナ、私だって恋愛に興味はある……」


 狐耳パーカーの女性はアイリーンさんと言うのか。


 殺すか暗殺か恋愛……?


 それを聞いたルナが顔真っ赤。



 ああ、ええと、これ以上ルナをイジるのはみなさんやめて下さい。


 キャパシティーオーバーです。


「あっはっは、いやぁ急にパーティーが楽しくなったね。あ、そろそろご飯にしようか。シアン君、お腹減っているだろう?」


 いい加減みんなを止めて……と、リーダーであるロイドさんを見るが、爆笑しながら食堂の厨房に入っていく。


 ちょ、あの、お願いだから放置しないで……これ、自然解散出来るような熱量じゃあないですよ、みなさん。


 昼ご飯……ぜひ食べたい……けど女性陣が暴れていて、俺なんかじゃあどうしようもない……



 お腹が……すいた……














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