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2-2.夜会の前に

キリの誕生日が迫っているある日、キリは箱を眺めていた。

この箱の中にある紙に書かれている内容が家族に直結すると聞いて複雑な思いがあった。

結界はまだ解けそうにない。が、キリはこの結界を壊すことが出来る。

しかしながら実の家族と言われて引き取られることになれば友人たちと離れなくてはならないかもしれない。

何より……クレイと離れたくない。

その思いから結界を壊せると告げられなかった。

初めは隠す意図は無かった。

しかしこれが家族を探す手がかりになると聞いて『嬉しい』よりも『戸惑い』が勝った。


(……おれの家族が貴族かもってほんとかな)


不安で胸が苦しい。婚外子かもしれないと聞いて婚外子について調べた。

いい意味ではないと知って不安はさらに募った。

家族の中に異物が混ざるようなものではないのか。

不安は恐怖に変わる。


箱に追加の結界を張ろうか、など考えて流石にそれはダメだと辞めた。


「……」


怖い、それは新しい環境よりも……キリが居なくなることを皆が許容することが……


「じっちゃんが帰る場所って言ってたのはこれのこと?」


箱に問うても返事などあるはずはなかった。





数ヶ月ぶりの任務はまた淑女学園の護衛だった。

数名は成人を迎え、残りも成人間近でデビュタントの準備も順調に整っていた。

今回の夜会は大きな王家主催の夜会……同学年の合同デビュタントの予行演習とも言えるものだった。


デビュタントの少女達は白いドレスを着用する。

男の方は紺色に白地のスーツを推奨されているものの女性に比べ自由度は高かった。

お揃いのような白いドレスの中でどれ程目立つかと少女達は躍起になっている。


このデビュタントにキリは『クレイのパートナー』として出席することになっている。

白いドレスは最早キリの部屋になっているクレイの邸の一室に準備された。


その前の夜会は護衛として出るが、女として、初めての夜会のほうに意識が行くのも当然だった。


クレイが用意したドレスは目立ちすぎず地味すぎずという無難なものだった。

ただし素材は最高級のものだったし、宝石は王国の国家予算に匹敵するほどの希少なものだった。

しかしキリにそれがわかるはずもなくドレスと言うだけで萎縮してしまう為、誰もその事は口に出せなかった。



とは言えその前に護衛任務があるのだからと気持ちを切り替える。



「せんせーとザッカは……あれ??ユーリ先生?」


集合場所にはクレイとザッカが見当たらずイオリ達の担当教諭が立っていた。


「こんにちは、キリ。二人は用事で少し遅れるそうです。貴方が一番乗りですがうちの班の者ももうすぐ来るでしょう。質問は?」

「え、あ、えっと、合同班だったんですか?」


ユーリは顬を押さえるとため息を吐く。


「ああ、先輩がまた伝えてないのね。そうです。先輩……クレイ先生の班は人数が少ないですから。それにうちの班との連携は初めてでは無いので今後もうちとの合同が多くなるでしょうね」

「分かりました、あのせんせーとザッカはすぐに戻るんですか?」

「……一度は戻るでしょう。ただ、先輩とザッカは任務に戻れないかもしれませんが」


不思議に思いユーリを見る。


「……王国の貴族としての責務が有るという事です。詳しくは語れませんが、おそらくはもうすぐ発表があるので」


やはり言葉の意味が分からずにいるとモカイがキリ達を見つけ走り寄った。


「先生、こんにちは。キリが一番乗りだったんだね。今日もよろしくね」

「はい、こんにちは。」


すぐにイオリやマシューも合流した。


「あれ、ワイアットは?」


時間が差し迫っても姿がないワイアットに疑問に思うとマシューが口を開いた。


「デビュタントは男子より女子の方が大変だからね、ワイアットもドレスに慣れないとって事で今回は護衛される側って訳だよ。本人より実家の意向らしいけど。貴族の子女なら仕方ないよね」

「なるほど……ん??慣れる必要が、ある?」


キリが首をこてりと傾げうんうんと考え込む。


(おれって大丈夫なのかな……そもそもドレスどころか所作が……)


ふわりと頭を撫でられ、また気配もなく……と見やると案の定クレイが微笑みながら立っていた。


「遅くなったね、ごめんごめん。ザッカはもうすぐ来ると思うよ。だけどオレはすこーし用事が出来ちゃったんだよねぇ……」

「そうなんだ。せんせーの用事も頑張って!」


応援するように言うと複雑そうに微笑むクレイに疑問に思う。


「……まぁ程々にがんばりますよーっと」


キリから離れるとユーリと二言三言会話してクレイはその場を離れた。


「先輩は貴方の事が本当に大事なのね」


小さな声を拾ってしまいユーリを見るが感情は読めなかった。

読んでくださりありがとうございました

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