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4.マリアとミヤ

淑女学園の生徒が割り振られた。

キリとザッカの班には2人の女生徒がつくことになった。


「マリアです、よろしくお願いしますわ」

「ミヤ⋯⋯よろしく⋯⋯お願い⋯⋯いたします」

マリアは金髪の綺麗な子だった、ミヤは黒髪の大人しげな可愛い雰囲気の少女だった。



マリアもミヤもこの模擬試験には乗り気ではなかった。

お互いに理由は違えど同じ気持ちだったことで仮のチームを組んだのだ。

マリアは家の方針で優秀な人物との婚約を取り付けるようにと指示されていた。

マリアにとってその言葉は絶対だったしそれが当たり前だった。

入学してすぐの頃から他校の成績を調べあげ候補者を絞った

もちろんそこにはザッカの名があり、キリの名はなかった。

そうやって調べていくにあたりザッカに興味を持ったがザッカに交流を持とうと接触しても嫌がられるばかりで手応えはなくマリアは自信喪失しつつあった。

そんな中での演習、誰に当たったとしてもザッカの姿を見ることになる。

そしてきっと彼は自分を覚えていない。



「それなのにまさかの同じ班ってどういうことですの」


マリアは護衛対象用の馬車で独りごちた。


「ま、マリアちゃん、どうしたの?」


独り言は思ったより大きな声だったらしく同じく護衛対象のミヤがこちらを覗き見た。


「なんでもありませんわ」


前を見ると御者台で少年ふたりが話をしているのが見えた。声が聞こえないのは遮音効果のある魔法石のおかげだろう。


やっぱり覚えてないんだ。


出そうになった声を抑えて心で呟いた。



ミヤの家は由緒正しき公爵家である。

そのために厳しく育てられてきた。公爵家に縁付きたいものは多く、自分には『家柄』のみが魅力だと気がついた時にミヤの自己肯定感は底辺まで落ちた。

もちろんそれだけが理由ではない。

厳しく育てられたと聞けば公爵家だから仕方ないと思うかもしれないが、その実ただの虐待であった。

その理由のひとつはミヤが前妻の子で後妻に子供が出来なかったという背景がある。

ミヤを憎らしく思っても排除できない。

だから後妻の美しき女性はミヤの尊厳を根こそぎ奪ったのだ

そのうちなんにでも怯えるようになり、可哀想なミヤが出来上がった。

後妻は酷く喜んだがそれに気がついたミヤの父、つまり公爵により離縁を申し付けられ家を追い出された。

しかしその期間は長く、5歳から始まった虐待は10歳まで続き、幼少期の思い出はミヤを逃がしてはくれなかった。

14歳になり、あと1年でデビュタントできる年齢になってしまった。

卒業まできっと待ってもらえるが卒業後は婚約、数年後には婚姻になるだろう。

こんな自分を誰かが愛してくれるとは思えず、得体の知れない恐怖がミヤを苦しめていた。

そのため交流会も避けていたのに学校行事の一環として演習に参加させられた。



「私なんて、守られる価値ないのに」


ミヤの独り言は御者台を真剣に見ていたマリアには届かなかった。



短めですがきりがいいのでここで区切ります。

読んで下さりありがとうございました

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