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20.合同班



休みが終わって訓練の日々が戻ってきたが、特に大きな問題はなく、いつも通りザッカはひとりよがりで、クレイは放任主義だった。


「なんも解決してねー⋯⋯」


よく良く考えれば、みんなで仲良くしたかったのに進展がないのである。


変わったことといえば、昼食後にクレイがデザートを持ってくるくらいだ。

小さい発言はいまでも許してない。

大きくなってやる、クレイの持ってきたケーキを食べつつ意気込む。


「はいはーい、キリもザッカもちょっと話があるよー、聞いてー」


クレイは人前だと軽い感じの話し方を好む。

キリと二人の時と少し違ってどっちが素なのだろうと混乱しかける。


「なんだよ、ダメ教師」

「ザッカは一言余計だねぇ、そんなにオレを好きアピールしても、ちょっとごめんねー」

「おい、気持ちわりぃ」


放っておくとこういうやり取りがいつまでも続く。


「2人とも仲良くしてよ、せんせー、話って?」

「うんうん、キリはいい子だね。話っていうのは来週にある淑女学園のパーティの護衛についてだよ」


護衛、え、なんの話?

そう思ったのはキリだけはなかったらしい、ザッカが少し青筋を立てて声を出した。


「だーもう、なんだって毎回ギリギリに言うんだよ!?」

「別に過ぎてから言うわけじゃないんだし、いいでしょーが、それで、うちってオレ合わせても3人だから、合同班で警護にあたるって話になったんだよ」

「このクソ教師が!で、合同ってどこと?」

「イオリ、モカイ、マシュー、ワイアットってなってる、引率は、ああ、魔道学園のユーリだな」


騎士学園の生徒は知る名前で、なおかつキリをハズレと呼ばない人達だった事に胸を撫で下ろす。


「あーそれでか、ユーリに話があるって言われてた、おそらく護衛の前に合同練習とでもいいそーだわ、一応聞くけどお前らはどうしたい?」


どうしたいと言われザッカと顔を見合わせる。


「どうって、どうなんだ?」

「俺に聞くな、けどめんどくせぇ」

「そう言ってもさ、仕事?だし?」


仕事のあとに疑問符が着くのは仕方がない。

だってよく分からないから。


「だよな。めんどくせぇけど、同意する、ダメ教師」

「はいはい、ダメでもなんでもいいけどー、他のやつの前ではその態度改めようなー?」

「せんせー、その話っていつ頃するの?」

「んー?今日の昼休憩に呼ばれてた気はする」


昼休憩とはなんだ?

もう15:00だ、昼休憩なんて終わってるし授業も終わって訓練に入ってる。

そうじゃないとキリとザッカが揃ってるはずもない。


「本当にいい加減だな、お前」


ダメ教師と言わないようにするとしても、お前もアウトでは無いだろうか?

呆れた様子のザッカに今度ばかりは同意せざるを得なくて、少しだけ頭を抱えた。


「んー、あ、あそこにいるな、ちょっと話してくるわ、お前らは自主練がんばれー」


手をヒラヒラと振るといつもの様に消える。

どうやっているのだろうか、少し気になる、出来れば教えて欲しい。


「クソ教師め」

「たぶんダメでもクソでもアウトだと思う、普通にせんせーって呼ぼうよ」


半ば諦めがちにザッカの言葉を訂正した。






遠くから声がした。

振り向くとクレイがイオリ達を連れて戻ってきた。


「そういうとこ、悪いんだと思って。先輩」


仕事のできる女という感じの女性がクレイにくどくどと文句を言っていた。


「はいはい、ごめんごめん」

「っ!悪いと思ってないでしょう!先輩!」

「先輩じゃなくてちゃんと先生と呼んでよね、ユーリ」

「先輩も私のこと先生なんて呼んでないでしょう!?」

「はいはい、悪かったね、ユーリ先生」

「ぐっ!?先輩、じゃなくて、ミリートンはく」

「クレイ先生だ、それはちょっといただけないな」


はくってなに、ミリートンって誰?

そう思ったのはキリとモカイだけだったようだ。

周りは落ち着いたものである。

有名人なのかな?

もしかして貴族の名前で呼ぼうとしたのかな、だとしたら、『はく』は伯爵⋯⋯?

そこまで考えたら少し怖くなった。

貴族様だとは思っていたが、多分、すごく、偉いんだ。


(待って待って待って、おれ次の休みに伯爵の家行くの?先生は伯爵令息ってこと?伯爵様ってこと?どっちにしてもおれが行っていい場所なの?!)


決めつけるのは良くない、他に考えがつかないが、キリの知らない何かがあるかもしれない。

そして、もしもそうだとしたら、モカイとキリ以外は貴族に詳しいと言うことで、おそらく貴族様って事になる。


(考えないようにしてたけど、学園ってやっぱりすげー)


そして、そこに虚偽の申告して偽りの姿でいる事がまずいと今更ながらに自覚した。

ぶるりと震えるとイオリが肩をぽんと叩いた。


「久しぶりやな、どないした?心配事か?」

「あ、いや、ちょっと気になることあっただけだよ。イオリはモカイと班組んだんだね」

「せやで、モカイ見つけて、キリ探そうと思てたら、上位者ってバレてもーて囲まれとった。ほんま勘弁やと思てたら、同じように囲まれてたこいつらと目があって以心伝心やね、班組んでたって訳や」


こいつらと言って親指でしめされた場所を見ると2人の生徒がいた。


「あ、初めまして、おれはキリです」

「ボクはマシューだよ、敬語はやめようよ、ボクたちは一時的と言っても班を組むんだからさ」


マシューと名乗った物腰柔らかそうな男は一見したら、優男だ。

魔術に体の鍛錬はいらないからか、強そうには見えなかった。

どちらかというと、もろな貴族という感じだった。


「私はワイアットだ、実は言っておきたい事がある」


ワイアットといった人物は中性的だがとても綺麗な顔立ちで、これはモテそうだと思った。

こちらも強そうには見えない。


「言いたいこと?」

「ああ、私はその、隠しては無いんだが、男として見られることが多くてな。名前の問題もあるが、見た目がそう見える事が多いと知ってからは男装してはいるが、別に男と言ってはいない。つまり、私は女、なんだ。班を組むなら言うべきだと判断した」


その発言にキリは衝撃を受けた。

女って言わずに男装。そんな手段があったなんて!

今更だが女として申告しても良かったんじゃと後悔した。


「あの、その極意教えてくれ!」


女とも男とも見える男装、キリの目指すものに見えた。


「は、い?ご、極意?」

「うん、あ、いや、今すぐは無理だけど、いつか教えて欲しいというか」


今は女に戻っていないので、男装の極意など聞いても無意味と思い出ししりすぼみになる。


「それは私が女であっても気にしないということだろうか?」

「へ?なんで女だとダメなんだ?」

「いや、そうか、そうだな。ザッカはどうだろう?」

「別にどうでもいい」


というものの、ザッカは1歩距離を取った。


「そうか、その言葉だけでも有難い」

「え、まって、女ってだけで何が悪いんだ?ザッカもそういう態度よくねーぞ?」

「いや、気にしないでくれ。キリ、と呼んでいいものか?」

「うん、ワイアットにマシューって呼んでいいか?」

「もちろんだ、マシューもいいな?」

「当然だよ」


モカイとイオリも混ざって話をしているがザッカは距離を取った。


(あれ?ザッカとせんせーと仲良くなるって決めたのに、ザッカに至っては悪化してねーか?)


前途多難でキリは頭を抱えた⋯⋯

読んで下さりありがとうございました

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