18.味方
チョコレートと言うのはすごく凄かった、語彙が死ぬほど美味しかった。
滑らかな黒い物体なのに口に運ぶと蕩けて周りが薔薇色のような感覚になる。
美味しいし匂いもいい。
これどこで売ってるんだろうと思ったけど、多分貴族御用達だと思うと少し元気が萎む。
でもクレイはキリのために、またもって来てくれると言うので嬉しくなってきた
「せんせー、せんせー、次はいつお茶会する?」
「もうすぐ夏休みだから、そこに合わせるか?」
「いいの?!俺は家に帰ることないけど大体の人は帰るって言ってたのに」
「俺は帰省に興味はないから特に帰らないし、野暮用もあるから残るよ」
野暮用と聞いて少しもやっとする。
優しく頭を撫でてくれる手であの女性に触れるのだろうかと考えたら少し嫌だった。
「それはそうともうひとつの相談の内容は聞かせてくれないのか?」
「⋯⋯あ!?忘れてた!」
そうだ女性に戻るにはどうすればいいか聞く予定だった、そう思うとマントを脱ぐ。
「せんせー、おれ女として生きていきたい、どうすればいい?」
クレイは少し考える仕草をした。
「それが本題か、今になって女にという動機は気になるがそれは置いとく。そうだな、手順をふむ必要はあるな、まず戸籍を確認して、おそらく女で登録はあるだろうが、無くてもすぐに手配するとして。それから、学園に虚偽の申告した理由がいるな、魔術と剣術の行使の実験とでもすれば或いは⋯⋯、今日の午後にあの人に相談すればそこも解決だろう」
半分以上言ってることは分からなかったけどとても大変な事だけはわかった。
「明日も時間取れるか?」
クレイの目は真剣だった。だからキリもすぐに頷いた。
休みは2日ある。明日の予定も特にはない。
クレイの方がいいのかと聞きたいくらいだった。
「明日は、夕刻だけだから⋯⋯今日と同じ時刻でいいか?」
夕方からまたデートなのか、今日もそうなのかな、そう思うとジト目になりかけるが自分のために動いてくれているのは確かなのでそこはグッと我慢する。
「せんせーは大変じゃない?」
「俺?全然平気だけど?そもそも優先順位が⋯⋯、いや、土産を期待しているなら明日も持ってこれるかはちょっと自信ないけど」
「いやいや、そうじゃないって!おれのことなのにせんせーに無理させたら良くないなって思ったんだって!」
「そういう意味なら問題ないよ、ただ今日決めたから明日には女に戻るって言うことは出来ない。少し時間がかかるのは覚悟して欲しい」
「そっか、おれは女に戻って良いのかな?」
「お前がそうしたいなら⋯⋯その理由も知りたいような、怖いような気もするが⋯⋯」
理由なんてじっちゃんがそう言ったからだけど、と思うがじっちゃんのこと聞かれてもないのにどう答えればいいのかと思っていたらクレイが微笑んだ。
「まぁオレだけは味方だよ」
無条件で味方だと言ってくれるクレイに感動する。
嬉しくて涙が出そうになったけど我慢して笑顔を見せるとクレイも嬉しそうに微笑んでくれた。
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