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13.カフェデート※クレイ目線


デートと言われびっくりはしたが、なにかあるのは分かったから即座に受け入れた。

少し胸が高鳴ったのはきっと気の所為だ。

キリにその気が無いのは明らかだが、それでも頼りにされるのは嬉しい。

例えそれが自分の心を抉るようなお願いであってもだ。


(デートって言葉は口をついて出たって感じだったな、本命とのデートの予行演習とかしたいのかもしれないな)


自分の思考に傷ついていることに気がついて苦笑する。


(たしかにキリは俺のすべてだ。けど、まだ子供だ、本気になったって意味はない。キリにとって俺は、先生でしかないんだから)


しかも態度のいいとは言えない先生だ。

だが、自分にとってはどうなのかと自問する。


(学園での生活はスラム時代とは違って安定しているはずだ、食事もしっかり取ってるはず、だけどあの子は小さすぎだ。幼いと言ってもいい、恋情なんて)


否定しようと思うが、倒れて血の気の引いたキリを思い出すと心が凍りそうになる。

それに1人の時には辛いと泣きながら人前では笑顔で頑張るキリを思い出すと守りたいとも思う。

無邪気な笑顔を見たら独り占めしたい。

その感情がただの独占欲なのかは分からない。


思考に耽りすぎる前に隣を歩くキリを見る。

どことなく緊張しているようで可愛いと思うと少し笑顔になった。


(まぁ『デート』を楽しみましょうかね)


最近はキリを気にかける人間が増えてきて喜ばしいはずなのにやきもきしてしまう自分に嫌気がさしていた。

自分はそばにいるべきじゃない。

そこまで考えたがクレイにとってのキリは無くてはならない存在だ。

そう思うと邪魔になるくらいなら死んだ方がましなのではとまで考えていた。


英雄の自分に価値があるならそれでもいい。

先生がいいならそれでいい。


どんな立場でもいい。

ただキリのそばに居たかった。



「せんせー、あのさ、最近疲れてる?」


なにかお願いごとでもされると思ったクレイは虚をつかれたというばかりに瞬きをしてキリを凝視した。


「な、んで、そう思ったのか聞いていいか?」

「⋯⋯だって、せんせーの目が雨の日みたいだから」


そういうとキリはじっとクレイを見た。


「明るい空だったのに、いまのせんせーは雨だよ、なんかそれって悲しいじゃん」


遠く感じたキリの存在がまた近くなる。

まだ自分の目を空のようだと言ってくれるのかと嬉しくなる。


「はは、参ったね、これは参った」


降参だとクレイは内心で思った。やっぱりキリには勝てない。


「せんせー?」

「うん、そっか、雨だったか」


幼いキリが1度だけそう告げたことがある。あの時はクレイが泣いた後だった。


『にーたんのおめめがあめになったらきりがかなちい、だからあめになったらきりがにーたんのとこいく。あのね、そちたら、きらきらしてきれーなおそらにもどれるよ』


そういうと抱きついてきた。あの頃と心根は一切変わらない。

そしてクレイを守りたいと思ってくれる心さえ尊い。



(本当に敵わない。俺なんかが敵うわけないけど、この子は自分がつらいのに俺を心配してくれた、もう充分じゃないか)



「少し、心配事があったんだ、解決は多分しないが、それでも⋯⋯いいと今なら思える。だから大丈夫だよ、ありがとう、キリ」



愛だろうが恋だろうが執着だろうが独占欲だろうが、もう関係ない


キリを守ることだけがクレイにとっての全てだと再認識した





クレイにとってキリかキリ以外かで周りは分けられる。

それは14歳の頃から不変だった。

だから恋愛なども興味はもてなかった。


女性経験がないとは言えない。

遊びというより魔力を使いすぎるとそういう欲が溢れる。

ただの処理の延長で女性と関係を持った。

相手も後腐れのない人間ばかりを選んだ。

特定の女性は作らず、貴族はもってのほか。

商売女も何度か相手した。

色々な依頼をこなして爵位を手にするには無茶もしなければならなかった。

無茶をすれば体がおかしくなる。

その回復に1番いいのは欲の発散である。

ただの手段でしかなかった。


だから、恋愛などを楽しむという概念がなかった。

そのせいで今でも自分の気持ちが分からない。

恋愛に対して知識が全くないから仕方のないことだった。

読んで下さりありがとうございました

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