1.プロローグ
ストックは多少あるので少しずつでも更新したいと思います
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「わたくし、は、あの、第一王女、で、です!!」
行方不明になっていた王女が帰ってきたパーティで紹介された王女の第一声はこれだった。
そもそも王女が見つかったのは、とある学校で、見つけたのは王家でも1目置く存在である英雄だった。
その英雄は王女の後ろ盾になると宣言しているのだから、王女の挨拶がいかに王家や貴族の作法から外れていようと誰も何も言えなかった。
王女が生まれた年は飢饉で内乱が起きた。
混乱に包まれた中、王城も火の手が回った。
そんな日に王女は生まれた。
逃げる途中の皇妃が急に産気づいた。
馬小屋の端で生まれたその子には名が付けられる前に王家のものとして命が狙われる存在になっていた。
皇妃は命懸けで産んだ娘を信頼おけるものに託し、お産で疲れきった体に鞭打ち這うように反乱軍の前に出た。
皇妃を見つけた反乱軍は皇妃を縛り上げ人質にと考えたのだが、娘が逃げたのを見て命を絶った。
混乱は6年にも及んだ
その後、隣国や側妃の祖国からの援助により王家は持ち直したが、混乱の傷跡は大きく豊かになるには時間を要した。
それから8年、生まれた子達は13歳になっていた
国が混乱を漸く忘れられそうになった頃、とある学園に1人の子供が入学した。
王都には大きくわけて3つのエリート学校が存在する。魔道学園、騎士学園、淑女学園である。
13歳から入学でき5年を過ごした後、社会に出ていく。
18で淑女学園の生徒はほぼ婚姻するが魔道学園と騎士学園の生徒はその限りでは無い。就職の道がある。
その学園出身というだけでエリートとされるため学園の生徒は10名程度の募集しかないので狭き門である。
そもそも適正検査が厳しく、受ける生徒も少ないのでギスギスとした雰囲気がないのが救いである。
この国、エアルドレッド王国では5歳になった子達に天のお告げと言われる検査を行う。適性がない場合、無記入が基本である。適性は、魔術、剣術、弓術、気品、運気の5項目で大体の平民は1つ適性があれば御の字である。
貴族は気品とあとひとつが適性があればよしとされる。
適性も1から5までのレベルがあり、1ならその技術が使えるレベル、2で仕事にできる、3で一流、4は国お抱えレベル、5はほぼ存在しないレベルだ。
適性レベル3以上で学園への入学が許されるのである。
魔道学園は魔術の項目、騎士学園は剣術、弓術の項目、淑女学園は気品の項目が必須となっている。
貴族の子はこの学園とは別に貴族の淑女紳士のためのブローサム学園が存在するため、ほとんどはそちらに入学する。
しかし、精鋭を育てるという意味では王都のみっつの学園に入る方が良いとされているためレベルの高い子達はそちらに入学する。
レベル3以上は非常に稀なため学園に入学できた時点でエリートと呼ばれていた。
そのようなエリートが巣食う学園に、孤児のキリが入学するところから物語は始まる。
「うわー、でっけぇ⋯⋯」
キリは王都でもはずれの路地に面した孤児院で育ち、12歳で孤児院近くの空き部屋に引越したが小部屋のみで寝る場も困るような狭さそんな生活をしていた。
そんなキリに案内された宿舎は2部屋を1人で使う広さだった。一部屋は寝室となっており、もう一部屋は勉強部屋と説明を受けたが寝室にも机はあるので、勉強はこれで充分だと思うし、勉強部屋と言われた部屋は大きく居心地が悪い。ミニキッチンが付いている廊下を含めたら実質3部屋あるんじゃないかと思った。
「⋯⋯こんな大きな部屋なんに使うんだよ」
小さく纏まった荷物を大きなクローゼットに入れる。隙間はありまくりだ。
コツコツと扉が叩かれる音がする。
「は、はい!!」
慌てて扉を開けると勢いにびっくりしたような表情で職員がたっていた。
「っ!?⋯⋯入学式の準備が整いました」
びっくりさせたことに申し訳なく思いつつもどうするのが正解か分からないのでとりあえず分かりましたと返事をする。
執事のような格好をした職員が一礼をして過ぎ去ったのを見てほっと息を吐く。
「おれ、ここでやっていけっかな⋯⋯」
不安から眉毛がへの字になるがパンパンと頬を叩くと頷く。
「ベリードじっちゃんも言ってたじゃん、やらねば何も生まれんって」
おれはできる!!そういうと部屋を出て入学式の会場に向かった。
リハビリ作品ですが読んでいただけたら幸いです。