トリックが思いつかない問題
小説を書くのって意外と難しい。色々な難しさはあるけれど、私の場合ミステリを書きたいから、トリックを考える必要がでてくる。これが、全然できないんだわ。
プロのミステリ作家さんって、どうやってトリックを思いついているんだろう。人によっては、5分も考えれば斬新な犯行トリックを思いつけるらしい。(それもセルフプロデュースかもしれないけど)
私はとてもそんなことできない。ずっとパソコンの画面を眺めて、自分が書いた小説を読み返しながら、「うーん、どんな事件が起こったことにしよう」と唸り続けている。唸ってトリックを思いつけずに、捨てた物語の種が30000個くらいある。これにあてた時間を勉強に使っていたら、今頃英語がペラペラだったに違いない。
そもそもの問題として、事件が起こらないんだよね。なんでかと言えば、キャラがないから。というか、キャラ設定をちゃんと考えていないから。事件を起こそうというモチベーションを持ってるキャラが一人もいない。そこまで主体性と行動力をもっているキャラがどこにもいない。どうしてそれでミステリを書けると思ったんだよ。
あと、舞台設定を全然考えていないというのもある。ミステリを読んでいるとたまに出くわすけれど、小説の最初に(舞台となる)洋館の見取り図が書かれていて、それをもとにして推理するというパターンがある。あんな風に事件現場を詳細にイメージしなければ、多分トリックとか思いつけないんだろうな。私は全然考えていない。
具体的なことを何も考えずに、ただ「うーんなんかいいトリック思いつかないかなあ」とやっている。それでは思いつけない訳である。当たり前じゃん。もっと事件現場の詳細とか登場人物の関係とか、そういうものを積み上げていかないといけないんだろうな。そのために作家さんは取材に行くのかな。知らないけど。
話は変わりそうで変わらないんだけど、私がミステリを書きたいモチベーションとして、「他人を驚かせたい」というのがあるんだよね。あっと言わせたい、「そういうことか」とびっくりしてほしい。だからどうしてもインパクト重視になって、「こんな展開になったらきっと驚いてくれるだろうなあワクワク」が先に来る。だから私の小説では、突然主人公が犯人になったりする。もちろん、そうなるまでの理路は何も考えていない。その結果出来上がるのは、ただ展開が突飛なだけのシュールな小説である。なんの伏線も張ってないのに死神が出てきたり、なんの経緯もなく国家が爆発したりする。サルバドールダリも頭を抱えると思う。なんだこれ。
私が具体的なことを積み上げていけないのも、多分これが理由なんだよね。とにかくインパクト、そのびっくり展開までの経緯は後から考えます、みたいな発想。これがよくない。一気に空まで舞い上がって、安全に着地する方法は後から考えます、みたいなものだよ。
もう、この失敗し続ける試みに時間を使いすぎた。あえて遠回りして、というかちゃんと基礎から積み上げていって、少しずつ進めた方がいいかもしれない。絶対そっちの方がいいな。着地する方法を考えてから、空に飛び上がろう。
ここまで書いてきて思ったけれど、私はミステリを犯人目線になって書いた方がいいかもしれない。私は今まで、探偵目線で考えてきた。でも探偵目線ということは、つまりミステリの読者目線だということだ。犯人である作者に謎を提供してもらい、それを解決するという、いわば受け身の姿勢だ。
でも自分が作品を書くときは、当然その謎を自分で考えなければならない。つまり、探偵役ではなく犯人役にならなければならない。犯人の目線になってみれば、事件を起こそうというキャラがいない問題も解決しそうな気もする。
そう考えると、まず私が人を殺そうと思えるような、もっともらしい理由を考えるべきだな。いやそんな理由ないよ。どんなことがあっても、人を殺そうとなんて思えないよ。私真面目だから。
まあミステリなんてそんなものかもしれない。ミステリ小説の中なら、多少不自然な理由で殺害事件が起きても「うーんそういうものかな」で流せる気もする。とにかく、私は犯人だな。犯人になるべきだ。たぶん。