第19話 みんなでほのぼの
「八神ないわあー!またハメ技使って私ばっかり狙ってくるやん!なんか恨みでもあるん!?美桜と恋人やからってゲームでまでそんなイチャイチャせんでもさあ‥‥」
「いや別にそんなつもりねえよ!お前が俺に絡んでくるからだろ!大体お前が‥」
「へっへー!たいが隙ありー!!ドカーン!!私の勝ちー!!」
「ふふふ、甘いね柚希。最後に勝つのはこの私だよ?」
明日は美桜と大切なデートの日。俺としては出来れば前日は身体を休めてデートに万全に挑みたかったのだが‥‥。
この通り俺たちは四人集まって、美桜の家でゲームをしていた。今全国で人気の四人対戦型ゲームである。美桜や柚希とはよく遊んだりするが、こんなふうに家に来てゲームで遊ぶのは久しぶりな気がする。
集まるきっかけになったのは柚希だった。
『二人でだけなんてずるい!私だってたいがと遊びたーい!
あっ、せっかくだし茜ちゃんも一緒に遊ぼう!!』
いきなり二年の教室に入ってきて、勢いよく突っ込んでこられたのが昨日の事である。なんか美桜と恋人になってから、柚希の身体的接触が激しくなってきているのは気のせいだろうか。
どうやら今週ずっとソワソワしていた美桜が、柚希に問い詰められてデートする事を言ってしまったらしい。
何とも可愛い理由である。てか、美桜が俺とのデートを楽しみにしてくれているってだけで最高に萌える。
昨日いきなり決まった事ではあるが、何やかんやで俺もかなり楽しんでいた。この四人だと俺も気を張る必要もない。
凛人と麗奈が再登校してから、クラスの雰囲気も相変わらずの状況。被害者の俺が率先してどうにかするべき問題でもなく、放置状態である。といってもやはり見ているだけでストレスは貯まっていたのだが今日で相当発散できそうだ。
それに明日は美桜と二人で初デート。幼馴染だからそりゃあ二人で出掛けたりする事はこれまで何度も会った。しかし恋人となれば話は別だ。思い浮かべただけで今から頬が緩んでしまう。
「ううっまた最下位確定やんっ!くやしいいー!」
「あはははっ!!茜ちゃんめっちゃ弱ーい!お姉ちゃんも私の敵じゃないよー!」
「私を舐めていたら痛い目を見るよ?こんな事もあろうかと練習して‥‥あっ、待って柚希‥!それはだめええええ」
美桜と柚希の姉妹一騎討ちを見事制したのは柚希。昔っから柚希はゲーム全般が異常に上手い。てか事遊び全般において柚希に俺は勝てた試しがない。
それでいて、柚希は勝ったらいつも凄く調子に乗るから腹立つんだよな。そんで意地になって挑戦して、また負けて腹立っての無限ループに陥った事が幼い時何度あった事か‥。
「ププッ、茜ちゃんいっつも最下位でかわいそう」
「ぐっ‥ほんまにその顔腹立つわあ‥!も、もう一回やったら絶対勝てるし!」
案の定柚希が最下位の等々力を煽って、子供みたいな喧嘩がまた始まる。といっても勿論本気ではなく、二人とも心底楽しそうだ。
「本当によく飽きないよなあ‥」
「可愛いよね。私と大河以外と喋る時に柚希があんな楽しそうな所見るの久しぶりだもん」
微笑んで二人を見守る美桜。ちゃんとお姉さんしてる美桜の笑顔の方が俺的には可愛いのだが、ここは空気を読んで言わないでおく。
確かに彼女の言う通りだ。生意気な態度を勘違いされがちな柚希は男子からの人気はあるが、女子の友達は少ない。本人は全然気にしていないのだが、こうやって自然体でいられる友達が出来て俺も嬉しい。
「はい、もうそこまでだよ!ねえねえ、もう気づいたらこんな時間だし皆でご飯でも食べにいかない?」
「「賛成!!」」
「‥本当にお前ら出会ったの最近か?」
いがみ合っていた等々力と柚希がその一言でパッと口喧嘩するのをやめた。
明日も美桜と夕飯は食べて帰る予定だし、今日はどうしようかと思っていたが美桜がそう言うのなら行くしかない。それに正直詩音と紬の事で、なるべく家に居たくない俺にとって外食は有難い。
母さんにメールを一言打って、わいわいと行く店を決めている皆の会話に参加する。食べる店ときたら頭に銀蔵さんと美羽さんの店が浮かんだ。
だがあそこは流石にどうなんだろう。お世辞にも外観が綺麗とは言えないし、女子三人連れていくには少し敷居が高いか?
「大河、なんかいい所知ってるの?」
「ん?いや、あるにはあるんだけど‥ちょっとな。銀蔵さんと美羽さんっていうめっちゃいい人達がやってるんだけど‥距離も少しだけ遠いし」
「ふうーん。ちなみにその美羽さんって人は美人さん?」
「ま、まあ‥‥年上のお姉さんって感じかな?」
「よし、決めた!柚希!茜ちゃん!大河がオススメの店あるって言ってるしそこに行くよー!」
心なしか圧が凄く、笑顔の美桜の目が笑っていないような気がするのは気のせいだと思いたい。えっ?俺なんかまずい事言ったか?
「ええええー私も皆と行きたい店あったのにー!!デザートが美味しい店とか!可愛いお店知ってるんだよ?」
「私もや!関東には王◯ってあるんか?チェーン店の中華料理店やねんけど、これがまた安くて美味しくてなあ!美桜にも--」
「‥‥行くよね?二人とも??」
「「は、はひいっ!!」」
不満タラタラだった二人が、途端にガタガタと震え敬礼し出す。
「み、美桜さん?分かってると思うけど、美羽さんは客として一回会っただけでなんでもないからな?」
「うん!大河が浮気なんてしない事は知ってるよ?でも、大河が仲良くする女の人は、彼女として全部知っとかないとでしょ?‥‥いつ女狐になるか分からないんだから」
最後の方は聞かなかったことにしよう。美桜さん、凄く怖いです。
等々力と柚希が身体を寄せ合いヒソヒソと話をしている。何を話しているのかまでは分からないが、二人とも顔に汗をかいていた。
「柚希ぃ‥美桜ってもしかしてヤンデレって奴?流石に怖すぎん?」
「うーん、どうなんだろ?でもたいが絡みの時のお姉ちゃんはヤバいよ‥‥」
「ふふふ、全部聞こえてるよ?」
「「ひ、ひいい‥!」」
美桜さん、恐るべき地獄耳。ガタガタ震える二人を見て、絶対に浮気だけはしないでおこうと心に誓うのだった。




