第14話 最強の漢
尋常じゃない程の強者の雰囲気を纏った等々力の兄らしい男は、ドシンドシンと地割れが起きそうな程の音を立ててゆっくりと奥へ歩き出した。
「八神‥お兄ちゃんが来てくれたんならもう大丈夫やで」
もう安心とばかりに、等々力はすっかりもう落ち着いた様子だ。
ふんっ!と男の一言と共にシャツが粉々になり、筋肉の鎧が顕になる。筋肉が肥大化した事で細道が男の横幅で完全に塞がれた。まるで、俺たちを守るかのように。
ありえない‥‥。俺は一体何今を見てるんだ?
「来たか‥‥」
こちらからは筋肉の盾で状況は掴めないが、どうやらあの三人が追いついたらしい。
「貴様らか‥‥?我が妹を泣かせたのは‥‥?」
「「な、なんだよありゃあ!?」」
顔が見えなくても分かる。ヤンキー達の声には先程の余裕はどこへやら、確かな恐怖が感じられた。等々力の兄が発する殺意に、後ろにいる俺まで身体が震えてしまう。
「は、はは。なんだかわからんがどうせ図体だけだろ!おいお前ら!びびんじゃねえよカス!三人がかりでヤッちまうぞ!」
俺からすれば無謀な勇気にしか思えないが、どうやら連中はこの大男に挑むつもりみたいだ。リーダー格ヤンキーが虚勢にしか思えない言葉を言った後、何度も鈍い音が響き渡る。
「な、何なんだよテメエ‥?本当に人間なのか?」
「兄貴、マジでヤバいです‥。殴ったこちらの骨が折れそうです。てか、めちゃくちゃ痛え‥多分もう折れてます」
「逃げましょう!兄貴!!勝てる訳がねえ!!」
驚き慄くヤンキー達。しかし男はというとまるでノーダメージと言わんばかりに首をポキポキと鳴らした。そして地獄の底から湧き出たかのようなドスの利いた声を連中に向ける。
「‥この程度か。妹を傷つけられて、我が無傷で逃すと思うか?」
そう言った瞬間、男が右腕を大きく振り払った。逃がさないと言わんばかりに、デカい図体からは考えられない速度で拳が何度も振り上げられる。そして、一際大きい鈍い音が響き踏み潰された虫の如く声がヤンキー達から発せられた。
「「「ふげえら」」」
流石にやりすぎな気もするが大丈夫なのか?俺達のせいで等々力のお兄さんが殺人犯になりにでもしたら‥‥。
「大丈夫だッ。茜の友達よ。我は数々の奥義を体得している。相手が死ぬようなマネは断じてしないから安心して見ておれ」
心を読まれた!?いよいよ人間じゃねえな‥。等々力の兄マジでやばすぎるって!!
妹の方はというと、先ほどから無言で兄の事を見つめていた。その目からは兄に対する確固たる信頼が見て取れる。
「それはさておき‥まだだ‥」
「「ひ、ひいいいいいいいい」」
「お、おい!た、頼む!もうお前の妹には手は出さないから!これ以上は勘弁してくれ!!何でも言う事を聞くから!!」
死の恐怖を感じたのだろう。これ以上やられたら堪らんとばかりにリーダー格のヤンキーがプライドをかなぐり捨てて命乞いをする。
「我が妹を傷つけた罪、これしきで許す訳にはいかぬッ!それだけではない。貴様らがこれまでに傷つけた全ての人々の悲しみ、我が一身に背負い晴らしてやらねばな。今更許しを乞うても遅いわッ!!」
しかしそんな事、目の前の怒り狂った男にはどうやら無意味らしい。ヤンキーの言葉を完全に無視した男は、何の力も持たない俺が可視化できる程のオーラを見に纏った。
コレ、何てアニメ‥‥?
「ハアアアアアアア‥!!恐怖を以って改心せいッ!!!」
オーラを纏った凄まじい一撃は三人のヤンキーを悲鳴と共に容赦なくぶち抜く。
暫しの無音の時間が過ぎていく。‥終わったのか?‥てか本当に死んでないよな?
暫くヤンキー達が心配になる程の無音の時間が流れた。




