第2話 仕掛けられた罠。崩壊
は?
どうゆう事?俺が性犯罪者??
頭が全然追いつかない。
クラスの連中も、突然俺が性犯罪者呼ばわりされた事に何事かとざわつき始めた。
目の前で俺を睨みつける女子は斎藤麗奈。俺たち幼馴染3人と高校一年からの付き合いで、俺の女友達だ。
主に俺の妹目当てで家に遊びに来る事も多かったので俺も仲良くさせてもらっていた。黒髪ロングで目元がキリッとしている為、第一印象はキツイ印象を抱いたが、優しく社交的で異性との付き合いが苦手な俺でも気兼ねなく話せて名前呼びしている貴重な女子。彼女もその美貌と性格から男女問わずクラスからの人気が高い。
そんな麗奈が俺を仇のように見つめている。原因はまるで皆目見当がつかない。
「れ、麗奈?どうしたんだ?何をそんなに怒ってるんだよ。俺何かお前を怒らせるような事したか??」
「‥麗奈。どういうつもりだ??」
とりあえず理由を聞かなければ始まらない。混乱する頭で冷静を装い、俺はいつも通り話しかける。隣にいる凛人も驚いた様子で麗奈に尋ねる。
すると麗奈は一層大きい声を出して、とんでもない事を言い始めた。
「とぼけないでよ!!昨日の放課後私を襲おうとした癖に!!スマフォの動画で撮って脅して私に逆らえないようにした癖に!!しかも私に昨日あんな事しておいてあなたは美桜と付き合う事になったですって‥!?そんな事、許される訳ないじゃない!!」
俺が昨日麗奈を襲った??コイツは一体何を言ってるんだ??何でコイツはこんな嘘をつく??何か恨まれるような事を俺がしたのか??
言葉の意味が分からずしばらくフリーズしてしまう。
そんな俺とは関係無しに目の前で泣き始める麗奈。
一秒が何時間にも思える中、聴覚だけは敏感になり外野の声が鮮明に聞こえてくる。
「斎藤を襲っただって?しかも動画で撮って‥おいおいおいマジかよ‥」
「待って‥。本当ならやばすぎでしょ。警察呼んだ方がいい?」
やばい。事態が非常にまずい事になっている。何もしてないので俺が捕まる事はないと思うが今はそういう問題じゃない。
社会的に死ぬ。とにかくまずは反論しないと。これまでにないくらい焦る俺は必死に言葉を紡ぐ。
「み、みんな聞いてくれ!!!俺は何もしてない!命を賭けてもいい!!トチ狂っても女の子に、しかも大事な友達にそんな事しねえよ!!なあ、皆わかるだろ?なあって‥」
俺は精一杯大きな声を出し否定しようとする。しかし外野達の声は大きくなる一方で、俺の声が聞こえているのかすらも分からない。
美桜はというと、俺と同じで訳が分からないといった様子で顔を真っ青にしている。不安そうに俺の制服をギュッと握りしめながら。
無理もない。彼女は優しく大人しい性格だ。こんな喧騒の中にいたらそれだけで不安にさせてしまうだろう。彼女の為にも一刻も早く事態を収めないといけない。
身体から大量の冷や汗が拭き出しながら何か言おうとした時だった。
「‥スマフォで動画を撮ったんならまだ動画残ってるんじゃないか??」
先程まで驚きながら隣で立ち尽くしていた親友の凛人がそんな事を言った。
そうだ、それしかない‥っ。
俺はクラスの連中を掻き分けるように自分の机へとダッシュする。
そんな俺にクラス中の視線が集まる。
俺は震えた手つきで鞄の中のスマフォを探す。
見つかった‥。
俺はスマフォを持ち上げ、ずっと俺を目で追っているクラスの皆に聞こえるように叫ぶ。
「みんな!!!俺が麗奈を脅して動画を撮ったっていうんならまだ動画が残ってるはずだ!!ここに俺のスマフォがある!!俺は何も撮ってない!!信じてくれ!!」
これで証明出来るとほんの少しだけ安心した俺に、また麗奈が突っかかる。
「そんなの、今動画消したかもしれないじゃない!!」
「消したって‥。みんな今俺の事見てただろ!?どこにそんな余裕があったんだよ!!」
俺は泣きそうになっていた。そんな事まで疑われたらもうどうしたらいいんだよ‥。
そんな時声を上げてくれたのは‥親友の凛人だった。
「大河はそんな事今やってなかった。言っとくが、これは親友だから庇ってるんじゃないぞ?みんなも見てたろ?」
クラスで1番慕われている凛人の言葉にクラスの皆も一斉にうなづき始める。
俺は涙を堪え、凛人に心の中で礼を言う。子供の時からピンチの時ずっと守ってくれてたのは‥凛人‥お前だったよ。
悔しげな麗奈に凛人が続けて冷静に言う。
「とは言っても、麗奈が言ってる事が事実なら大河の行動全てが疑われてもしょうがない。でも今大河が動画を消していない事は見てただろ。で、だ。ここはみんなの前で誰かが大河のスマフォを確認するってのはどうだ?俺が確認したい所だが非常にデリケートな動画だろう。俺は男だし無理だ。確認するのは絶対女子がいい。勿論音が流れないようにイヤホンも付けてだ。それでどうだろうか?」
凛人は麗奈に尋ねる。なるほど‥麗奈に配慮しつつの最適な解決方だ。やっぱり凛人は頼りになる。
「‥わかった。それでいいわよ」
麗奈の同意も得た所で、誰が確認するかだが真面目で正義感の強いクラスの委員長の女子が確認する事になった。
パスコードを入れないとスマフォが開けないので、俺は彼女に教える。本来プライバシーの塊のような物を教えたくないが、今はそんな事言っている場合ではない。
彼女が確認するまで俺にとっては数時間、いや数日間に思える時間が経過した。
すると委員長から悲鳴のような声が上がる。
「こ、これは‥!?!?」
スマフォを見ていた委員長の顔が真っ赤になる。スマフォをその様子を見たクラスの皆がまたざわつき始める。
一体委員長は何を見たのだろう。不安で胸が押しつぶされそうだ。
口をパクパクさせている委員長を麗奈が急かす。
「立花さん、何を見たのか言って」
「で、でもでも‥これは‥。い、いのですか!?
「‥いいわ。言って」
一瞬俺の顔を見た委員長は顔を伏せながら恐ろしい事を言った。
「服がはだけて泣いている斎藤さんを‥その‥押し倒そうとして斎藤さんが逃げて‥。その他にもたくさんの斎藤さんとえ、えっちな事をしている動画が保存されています‥‥。斎藤さんの言葉から催促すると2人は元々付き合っていたみたいです‥‥。」
は。え?
ふざけるなよ俺はそんな事してない。俺は美桜をずっと好きだったんだぞ。俺に恋人なんかずっといなかった。
「‥そう。実はこの最低男とは昨日まで付き合ってたの。‥でも昨日美桜と付き合う事になったって言って一方的にフラれたのよ。‥そこまではまだ仕方ないって思えた!でもこの男は昨日嫌がる私にセフレになれって脅してきたのよ!だからわざとみんなの前でコイツを晒してやろうとした!!」
この女。どこまで俺を‥‥。俺が一体お前に何を??
だがこれでようやく確信した。
この女、俺を完全にこの場で殺す気だ。
まだ友達だと思ってたから我慢していた。
だが‥、もう我慢の限界だ。
「ふざけんなこのクソ女ああああああああああ!俺はそんな事してねえええええええ!!そもそもお前と付き合った事なんかねえええええ!!!」
俺は叫びながら委員長からスマフォを強奪する。体当たりする形になり彼女を突き飛ばしてしまったがどうでもいい。
画面には一杯の斎藤麗奈の裸の画像、一目見てそれ以上の事をしているであろう動画が保存されている事がわかった。
何で‥どうして‥頭が真っ白になる。誰かが俺をハメてるのは間違いない。
斎藤麗奈は間違いない。それに最低でも相手の男がいて2人。他にもっと協力者がいるかもしれない。
もしや委員長もグルなのか?いや流石に演技をしているよう雰囲気じゃなかった。
頭が割れるように痛み、過呼吸気味になる。足元はおぼつかず気を抜いたら今にも内容物を口からぶちまけてしまいそうだ。
麗奈がそんな俺の手からスマフォを奪い取る。俺にはもう奪い返す気力もない。
黙って事の顛末を聞いていたクラスの連中は、もはや麗奈が正しいと確信したのか容姿なく言葉の暴力を浴びせる。
「このクズ野郎!恥を知れ!!」
「最低ね‥。そんな人だなんて思ってなかった」
俺は何もやってない。ただ普通に生活して‥。みんな‥おい‥信じてくれ‥。
誰かが俺に帰れと言ったのを皮切りに、クラス中から俺に帰れコールが送られる。
俺は虚な表情で凛人を見る。凛人‥お前なら‥。
「もう庇い用がないな‥見損なったよ‥。‥大河‥」
親友から放たれた無慈悲な言葉で、鈍器で殴られたような痛みが心臓に響く。
誰か‥誰か俺を信じてくれる人‥。
そうだ‥美桜‥美桜‥。
必死で美桜を探す。
「そん‥な‥」
美桜は‥見た事もないくらい涙で顔を濡らしていた。凄く、凄く悲しそうな顔で俺を見つめていた。
やっと付き合う事ができたのに‥。美桜だけはずっと笑顔にさせたかったのに‥。
彼女の泣き顔を見るのがどうしようもなく辛くなった俺は、おぼつかない足取りで逃げるように教室を出た。
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