第4話 「今」じゃなかった転入
「うわっ!びっくりしたあ!!何だよいきなり!」
「しかも儂って‥‥。流石に私達年頃の女の子が使う一人称じゃないでしょ‥‥」
転入生の渾身の叫びに引き気味のクラスメイト達。
「いやいや!アレはお約束の展開というか‥‥普段から一人称儂な訳ないやん!!あ‥‥。儂な訳ないよ!!でもさ!私転入生だよ!?まあまあ話題になりそうな美少女だよ!?自分で言うのもアレだけど、転入早々めちゃくちゃやらかしちゃったんだよ!?そんな皆してこっち来てくれたら慰めてくれるのかなって思うじゃん!?友達になってくれるのかなって期待しちゃうじゃん!?!?」
そのまま関西弁で話せばいいのに、何か事情でもあるのかぎこちない標準語で立て続けにツッコミを入れる転入生。
まあ期待するのも無理はないか。普通の人間だったらトラウマ物の恥ずかしすぎる事を初日からやらかした訳だし、こんだけゾロゾロこっちきたらなあ。
自分で美少女とかいってしまう奴アニメ以外で本当にいるとはな。改めて関わりたくない。
「‥‥と言われてもなあ」
「ねえ‥‥?今はそれどころじゃないというか、何で今転入して来たの?というか‥‥」
「「ごめん、正直今いらないわ‥‥」」
口々にそう言われる彼女を少しだけ気の毒に思う。何となく振り返ると転入生と近くで目が合ってしまった。
「あ、隣の人ー!キミも酷いよっ!!さっきも目ばっちり遭ったのに無視するし、授業の時だってページ聞いても教えてくれなかったし!!」
「うるさいなあ」
「ひゃう!?」
さっき真横で叫ばれたせいでまだ耳がキンキンしているのだ。そのせいか、少し強めに当たってしまう。
もしかしてかなり打たれ弱いのか?自己紹介では大見得切っていた割に、情けない声を出して涙目になってしまう転入生。
「そ、そんな怖い目して怒らんでもええやんかあっ‥!」
そんな怖い顔してたか?
そんな顔で言われると多少ではあるが申し訳なくなる。関わりたくないというのは間違いない。だが彼女には何もされていないし、別に傷つけたい訳じゃない。
「大河‥っ!!何度だって言わせてくれ!本当にす--」
「もういいっていってるだろ!!本当にいいから!!今後一切もう謝らないでくれ!!!」
おかしな空気になった場を変えるかのように、真田がまた謝ろうとするが言葉を言い切る前に俺は拒絶する。
どいつもこいつもうっとうしい。謝罪に何の意味があると言うのか。はい分かりましたと俺が許して、ニコニコ馬鹿みたいに、前みたいに仲良くしましょうねとなるとでも言うのか。
どうせコイツらは自分の中の「罪の無い人間を傷つけてしまった」という罪悪感を少しでも軽減したいだけに過ぎないに決まってる。今の俺にはどうしてもそうとしか思えない。
たとえそうじゃなくとも、もうあんな想いはこりごりなんだよ。
本当は話すのすら億劫で、だからこそ出来るだけ短文で強い拒絶を示した。
もうどうでもよくて、今後一切関わりたくないから意味もない謝罪はするなと。よっぽど馬鹿でもない限り言葉の真意は分かるだろう。
クラスの皆にとっても、俺一人関わらなくなった所で何の問題もない筈だ。お互いにもう干渉しない。それがお互いにとっての最善策。
ましてやクラスメイトなんてせいぜい高校からの付き合いだ。簡単に切り捨てられる関係だろう。
10年深く付き合ってきた筈の凛人ですらそうなのだから。
俺の言葉の真意を理解したのか、皆は一応は苦渋の表情をしながらもそれぞれの席に戻っていった。
すると美桜が心配そうにこちらを見てくれていた事に気付く。
何の問題もない。俺には美桜がいるのだから。
「何か知らんけど隣の人やるやん‥‥。あんな大勢を一瞬で許してあげるなんて‥‥」
隣では聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声で何かを言っている転入生がいたが、俺は特に気にもせず次の授業の準備を始めた。




