第3話 茜ついに転入ッ!‥‥するのだが
4月29日、朝4時頃に登場人物紹介を第一部分に割り込み投稿しました。もし宜しければ、フルネームは初出しのキャラもいるのでご覧になって下さい。今後も人物が増え次第どんどん追加予定です。
俺の様子を心配して美桜がゆっくりと歩いてくれた事もあって、学校に着いた頃にはもう朝のホームルームが始まるギリギリの時間だった。
彼女と共に教室に入る。予想通り俺に気付いた途端にクラスメイトが一斉に話を辞め、何か言いたげに俺を見る。
彼らなりに罪悪感を感じているのだろう。けれど酷い仕打ちをした分、中々いい具合の謝罪の言葉が思い付かずにいるのかもしれない。
クラスメイトが見守る中、俺は別にもう謝って貰おうとも思っていない為、特に何も言わずに席に着いた。
賑やかだった教室が、まるでお通夜のようだ。鉛のような重い空気が教室を包む。
この空気を何とかしようと、離れた席にいる真田が何か俺に言おうと口篭った時、チャイムが鳴り結城先生が教室に入ってきた。
「よし、始めるぞー。‥‥霧島と斎藤はやはり休み、か。仕方ない。おいみんな!ホームルームの前に今日からお前らのクラスメイトになる転入生を紹介する!‥‥等々力、入っていいぞ。軽く自己紹介を頼む。
転入生?そういや昨日帰り際先生が言っていた気もするな。まあ、これから新たに友人を作るつもりもない俺には何の関係もない話なんだが。
それにしても転入する日として、ここまで最悪な日があるのだろうか。俺のせいではないにしても、空気が余りにも悪すぎる。今の俺ですら、少し気の毒に感じてしまう程に。
どうやら転入生の子は、運が死ぬ程悪いようだ。
先生に呼ばれて、一人の女子がまるでロボットのような動きでゆっくりと入ってきた。
歩く時に同じ側の手と足が両方出ており、相当緊張しているのが見て分かる。今にもギギギと音が出そうな程カクカクと手足を動かして、教壇の前に立つ。
相当内気なようで、正面を向いた顔は既に真っ赤だ。
それでも容姿が異常に整っているのが分かる。身長は160程度だろうか。紅く艶めいた髪が印象的で、顔のパーツ一つ一つが、美少女と言うに相応しくアニメから飛び出してきたと言われても信じてしまいそうな程だ。おまけにどことは言わんが、体型にも恵まれている。
普段の空気なら、クラスの男子連中が「美桜ちゃんに並ぶ天使が学園にキターッ」とか言って喜びそうなもんだが、生憎今は全員が無言。緊張感が凄まじい。
転入生は、大きく深呼吸したかと思うと、急に何か覚悟を決めたかのように、勇ましい顔つきになった。
「やあやあ!!我こそは〜、嗚呼、京都から〜、嗚呼、やってきた〜、嗚呼、よいしょっ!いずれ天下に名を轟かす超強くて超絶可愛い美少女也〜!!」
あろうことか歌舞伎者のポーズで理解に苦しむ事を言い出す転入生。この場にいる誰もが、何が起きているのか理解が追いつかず、重い雰囲気の中ひと笑いすら起きない。
駆け出しの芸人が初舞台で滑り散らかしている様を、実際に今この目で見ているかのようだ。
正に地獄。いや地獄の鬼すら泣き出す独り舞台かもしれない。
それでも無駄に勇気を出した、紅髪の変な女子の意味不明な暴走は止まらない。
勢いよく自身のはちきれんばかりの胸を持ち上げ、高らかに堂々と宣言した。
「我が名は等々力茜ッ!!貴様らッ!!よく名を覚えておけッ!!私はいずれ世の全ての女子が憧れる漢女となる者だッ!!」
一体何を見せられているのだろう‥‥。クラスの連中、結城先生までもが口をあんぐりしている。
ようやくクラスの雰囲気で、正気を取り戻したと思われる転入生が恥ずかしさのあまり下を向いてしまった。
「‥‥‥‥あの‥その‥よろしくお願いします‥‥‥」
さっきの堂々とした威勢はどこへやら、蚊の鳴くような声で挨拶する転入生。
流石にこりゃ可哀想だと思ったのか委員長がパチパチと口をあんぐりしながら拍手を始める。
それを皮切りに一人、また一人と拍手の輪が広がっていく。
その様子を見て転入生が一瞬喜んだ途端五人目くらいで拍手が止んでしまった。
最後に目が遭ってしまった俺を子犬のようにウルウルした目で見つめる転入生。拍手して欲しいんだろうな。
でもすまん。俺はそれを華麗に無視する。
たった今、俺の中で絶対に関わらないでおこうランキング一位にこの転入生がぶっちぎりでランクインした。
誰とも新たに親交を深めないように決めた俺だが、特にコイツはやばい。やばすぎる存在だ。
俺に無視され肩をガクッとさせる転入生に、ようやく思考を再開させた結城先生がぽんぽんと彼女の肩を叩く。
「お‥おう‥‥。まあ‥その‥なんだ?頑張れよ?私がついてるからな?席は‥うん、八神の隣がいいだろう。ちょうど空いてるし」
先生この野郎。
やばい奴がトボトボと歩いて俺の横に座った。まるで生気を感じられない。放心状態になっているようだ。
「よ、よーし授業を始めるぞ!丁度一限目は国語だから私はこのままだ。前回は--」
◇ ◇ ◇
授業が終わった休み時間、ふと横を見ると目を期待にキラキラ輝かせた転入生の姿が。
授業中、ずっと放心状態だった彼女だが今ではこの調子である。恥ずかしくて真っ赤になっていた顔も、本来の色白に戻り見るからに生命力に溢れてそうな顔つきになっている。
まさかアレか?あんなデビューをかましておきながら、転入生特権のアレでもコイツは期待しているのか?漫画やアニメでよく見る、転入生が休み時間になった途端にチヤホヤされるアレを??
クラスメイト達がこっちに来る。隣でははわーんとか言って嬉しそうな声を出す転入生。
そんな転入生を尻目に、クラスメイト達はみんな俺に向き直った。
「ごめん、大河‥‥。本当に、ごめん!!」
「八神くん、ごめん‥‥。本当に、何て言えばいいか‥‥」
いや、もういいし、話しかけてくれなくて大丈夫なんだがな。
「別にもういいから。気にするな。本当に大丈夫だから」
本当にもういい。クラスメイト達は俺の反応が冷たいように聞こえたのか、そう言ってもその場で固まって向こうに行ってくれない。
「いや‥‥わしわあああああああああああああい!!!!」
耳をつんざくような叫び声が隣から聞こえた。
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