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第10話 晴らされる冤罪(2) 混沌と化す教室

 一体何なのコレは?この声は凛人で間違いない。私が聞き間違える訳がない。


 なら私たち幼馴染の友情は?10年間の絆は嘘だったというの?私達はずっと一緒に3人で支え合ってきたよね?


 凛人‥‥あなたは一体何を考えているの?


 それにこれだけハッキリと大河の冤罪を証明できる証拠があるのに、何でももかちゃんは一ヶ月も黙っていたの?


 何か事情があるのは分かる。でも遅すぎるよ‥。もっと早く言ってくれたら大河がこんなに傷つく事はなかった。


 私だってそうなのに‥‥っ。


 後輩としてだけじゃなく友達としても仲良くしてきたももかちゃんに対しても、どうしても怒りが湧いてきてしまう。


「間違いありません!私が見せられた動画で聞いた音声と同じです!あんなもの一度聞いたら忘れる訳ないですからっ!!そんな酷い事に私を利用していたなんて‥‥。そんな‥‥。私が恥ずかしがってちゃんと徹底的に確認しなかったから‥‥?なら、私のせいで八神くんは‥‥?」


 あまりに唐突な真犯人発覚にこの場にいる全員が動揺する中、先に声を出したのは委員長の立花さんだ。


「確かに男の人の声は聞こえてなかった‥‥はっきり男の人の姿が映った写真は一つもなくて‥‥私‥私‥‥」


 ぶつぶつと一人で自分を責めだす委員長。この様子だと彼女も本当にただ利用されていただけの被害者なのだと思う。


 だけど彼女を責めるのはお門違いも甚だしい。その意見は周りも同じなのかみんなが委員長を擁護する。


「委員長は何も悪くねえよ!そんな事言ったら俺だって‥。何も見ないで言われた事を鵜呑みにしてアイツを‥‥」

「そうよ‥っ!私も八神くんが悪いんだって決めつけて今までずっと‥‥」


 無実の人間に罪を着せ、辛い思いをさせてきた罪悪感を皆が感じる中、一人の体格に恵まれた男子がその空気を止める。確か名前は真田君だっただろうか。


「おい。ちょっと待て。違うだろ?自分を責めるのは後でいくらでもすりゃあいい。今真っ先に俺らが怒りをぶつけなきゃならねえのは、友達を犯罪者に仕立て上げたそこのクズ二人なんじゃねーのか!? こいつらがこんな事しなけりゃ俺たちは大河を‥。なあ皆、そーだろ!?!?」


 真田君は凛人と、青ざめ震えている斎藤麗奈に指を指して言った。


 その言葉にこの場にいる全員がハッとなったのか、先程までの教室の空気が一変する。


 そうだよ。本当にそうだ‥ふざけるな。どうしてこんな卑怯な事を?


 必死で幼馴染だから、親友だからと自分の中の怒りや憎しみを抑えようとしていたがもう限界だ。


 我に返った生徒達が憎しみを込めて二人に次々と罵声を浴びせる。


「クズ野郎共が!人の善意を利用しやがって!!」

「凛人!お前大河の親友じゃなかったのかよ!よく涼しい顔して裏切れるな薄情者が!!のうのうと二人して学校来やがって」

「麗奈が本物のクズじゃない!心配して損した!バッカじゃないの?

「マジでもう二人とも顔も見るのも嫌なんだけど。最悪。」


 怒涛の勢いの罵詈雑言にとうとう斎藤麗奈はその場で泣き出してしまう。


「私は‥凛人が一番大事で‥それで‥‥」


 振り絞るように言うが言葉の刃の勢いはまるで止まる気配が無い。むしろどうやらその一言が逆に火に油を注いだようで、皆の顔つきがより一層険しくなる。


 私も彼女には全く同情する気にはなれない。


「大事だから‥何なんだよ!誰にだって大事な奴いんだよ!それでも誰だってこんなふざけた事しねーんだよ!!しかもお前だって大河と仲良かっただろーが!!」

「もしかして、この状況で泣けば済まされるとでも思ってるの??一ヶ月もアンタらのせいで私達は大河を傷つける事になったのよ!?そんなんで済ます訳ないでしょっ!?」


 意外にも打たれ弱かったのか、斎藤麗奈は言われるがままで既に虫の息だ。


 その時、凛人が彼女を守るように前に立った。その様子にクラス中が嘲笑に包まれる。


「ハッ、騎士様の登場か?悪人同士仲が良いもんだな」

「ずっとイケメンと思ってた顔が、今では心底気持ち悪いと思えるわね」


 凛人は怖気付くどころか、憎々しげに彼を見るクラスメイトを鼻で笑う。


「お前らって本当に、愚かだな。」

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