表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マレビト来たりてヘヴィメタる!〈鋼鉄レトロモダン活劇〉  作者: 真野魚尾
第六章 あやかし まぼろし ゆめ うつつ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/124

第84話 おしゃれなミルクホール

 肥沃な土壌のもと農業と農学による発展を遂げた大都市・ウスクーブ。

 近代建築物が建ち並ぶ街並みを、詰襟の書生やセーラー服姿の女学生が行き交っている。


 おしゃれなミルクホールに集う若者たちの中に、(けん)()(みお)もいた。


「もぐもぐ……」

「……どんな感じ?」


 テーブルに置かれた帝国製の陶磁器には、一口大のトリュフチョコレートがいくつも積まれている。


「……ぅっ……ふえぇ……」

(なっ……泣いてる……っ!!)

「へぐっ……ふ、ふごく……おいひぃ……」

「お、美味しいんだ……よかったね」


 献慈はひとまず胸を撫で下ろす。澪は(ぼう)()の涙を流し、うんうんとしきりにうなずき返していた。


「ずるいぃ……ずるいよぉ、献慈ぃ! こんな美味しいお菓子しょっちゅう食べてたとかぁっ! こっ……もぐもぐ……こんなにっ、甘くてぇ、外側がパリッとしてて……んぐ、まろやかで、中がトロ~ってしてて……はむっ……ちょっと苦いけど香ばしくてぇ、甘くて……むほぉぃしいのにぃ!」

「うん。わかるよ。すごく美味しいよね」

「献慈も……グスッ、もっと食べて? 一緒に食べようって話だったでしょ?」


 澪は涙と鼻水だらけの顔を拭いつつ、献慈にもチョコを勧めてくる。


「一緒に……そんな約束したっけ?」

「約束まではいかないけど、でも言った! 私言ったからね? チョコ一緒に食べようって! 献慈はそうやってすぐ忘れるからぁ……」

「ごめん。でもさ――」

「あ、話逸らした」

「ち、違うって。澪姉、本当はカミーユや絵馬(えま)さんと洋服見て回りたかったんじゃないかなーって思って」


 変わらず袴姿の澪だが、新調したての上衣はモダンな柄を染め出した銘仙(めいせん)である。とても似合っているし、不満があるわけではない。


「……献慈は私といるのイヤなの?」

「そんなことないよ! そういう意味じゃ……なくてさ」

「じゃなくて?」

(澪姉こそ、どうなんだ? 俺なんかと一緒で……)


 無意識にサスペンダーをいじくる自分に気づく。下ろしたての立襟シャツとズボンも合わせて、澪がウッキウキでコーディネートしてくれた洋服だ。


「もしかして、私のお洋服姿見たかったとか?」

「ん……たしかに。それは見てみたいな」


 はにかんで見つめる澪の表情が一層輝く。


「献慈、今言ったね? 言ったよね? 今度はちゃんと憶えといてね?」

「あっ、うん。楽しみにしてるよ」

「わかった。待っててね、可愛いお洋服着れるように〝だいえっと〟するから……明日から」


 再び勢いよくチョコを頬張りだす澪を見て、献慈は気長に待つ決意を固めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ