第6話 メッセージのシンデレラ
今年のおみくじに「趣味がビジネスチャンスになる」って書いてありました。ホンマかよ~~~~~~~。
五ヶ谷と別れ、帰宅した後、夕飯や入浴などを済ませ、ベッドに寝転がって、天井を見つめてぼーっとしていた。
過去に戻ってきた。
どうやら本当にここは2016年の世界で、俺は高校生になっていた。17歳になっていた。
そして、未来から来たくせに、これから何が起こるかなんて、一ミリもわからない。ただわからないわけではなく、限定的にわからない。これからの高校生活だけわからない。
ややこしい事情を持っているせいで、俺が未来から来たっていう説得力もない。傍から見たら、不整合で、歪んでいて、もどかしくて、ムズムズするような状況だ。
―――人が一番思いを馳せる記憶って、なんだと思う?
あの女は、そんなことを言っていた。そして、今、この瞬間のことを「二周目の青春」と呼んだ。
二周目を送らなければならないくらい、一周目の俺の青春は、バッドエンドだったらしい。……バッドエンドだったから、あの大魔王は、俺の記憶を消したんだろうな。
だが、それ以上の情報は、一切持っていない。何を回避すればバッドエンドにならずに済むのか……どう生きれば、より良い未来にたどり着くのか。イエスとノーを、どのように選択していけばいいのか。五ヶ谷に啖呵を切ったとはいえ、どうすればいいのか、見当がついていない(五ケ谷はあまり本気で聞いていないと思われるが……)。
唐突に、枕元に置いていたスマホが震える。メッセージが届いた。
huyuka「やっほ。起きてる?」
ハンドルネームは「huyuka」。今日も、この人物からだ。
yusuke「ああ、どうした?」
huyuka「今日何してたの?」
yusuke「ほとんど知ってるだろ、君は」
huyuka「いやいや。そんなに君をしょっちゅう見てないし。ストーカーじゃん。って、それは君のほうかな~?」
yusuke「人聞きの悪いことを言うな。傍から見たらそうだけど」
huyuka「そんなの昔の話だし、今は友達だから。安心しなさいな」
yusuke「ああ、、、そうなってくれると助かる。今日は放課後、部活をやってきた。五ヶ谷がまたアホやってた」
huyuka「五ヶ谷さんは相変わらずだね」
yusuke「あのアホとずっと過ごしてると、疲れが溜まってしまって仕方がない」
huyuka「元気いっぱいだもんね」
yusuke「君は今日はなにしてた」
huyuka「授業受けて、部活やって、プリン食べた」
yusuke「ほのぼのだな」
huyuka「ほのぼのでしょ」
yusuke「あ、俺は五ヶ谷にアイス奢らされた。チョコミントの」
huyuka「ええ~。チョコミントって歯磨き粉じゃん」
yusuke「おい、全国のチョコミン党員に暗殺されるぞ。五ヶ谷はその息がかかっているエージェントなんだ。今もこの会話が傍受されているかもしれない」
huyuka「え! こわい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
yusuke「冗談だ。チョコミン党にそこまでパワーはない」
huyuka「よかった」
取り留めのないメッセージのやり取りを続けている。
yusuke「なあ、突然なんだけど。未来ってどう思う?」
俺は、唐突にそんなメッセージを飛ばした。
huyuka「突然すぎ。……未来かあ。うーん」
yusuke「マジごめん。今日、何となくそういうことを考える機会があってさ。より良い未来にするために、今なにができるんだろうなって」
huyuka「より良い未来ねえ……あ、祐介くんは運命って信じる?」
yusuke「あんまり信じたくないな。決まっちまってるものだろ、運命って」
huyuka「だよね。未来もそうなんじゃない?」
yusuke「適当だなあ」
huyuka「だって、今何かするとしてさ。その行動が、その先にたどり着いた未来に影響しました! いえい! ってなったとして。じゃあ、他の未来にたどりつくことはできなかったのか? とか、逆に、他の行動をとっても、この未来にたどり着いたんだよ! ベイべ! っていう証明は、誰ができるんだろう」
yusuke「テンション高いな。まぁ確かにそうだが」
huyuka「そう考えたらさ、今何ができるかなんて考えないでさ。やりたいようにやればいいんじゃない? 今、自分が選択した運命がベストなんだよ。観測できなかったら、平行世界も、ifも、そんなのないようなものだよ」
yusuke「そっか」
huyuka「私たちが観測できないことを考えたり、語り合ったり、そんなのって、意味ないし、答えが出ないから、不毛じゃない?」
yusuke「ああ。俺たちが語るべきは、ifでもなく、今なんだろうな。信じた道を行くよ」
huyuka「おー。がんばりんしゃい。そろそろ寝ようかな。おやすみ、今晩もありがとう」
yusuke「おう。また明日」
自分が選択した運命がベスト。
だが、俺がもし、ifの地点から来た存在だとしたら?
俺をこの時代に送ったあの女は、「俺の青春がバッドエンドだった」と口にしていた。
俺がこの時代に送られたのは、きっとそれを回避するため。ifの平行線の先に行くために…俺は、足掻く必要があるのだろう。
不親切なもので、ハッピーエンドのパラレルワールドに向かう条件が何かを明示されていない。だから、俺がどういう行動をすればその平行線に辿り着くのか、一切わからない。
だが……意志として、より違った未来に行くために、俺はより良く生きなければならない。より幸せな結末に向かうように……
手がかりがあるとしたら、今までの自分。自分を見つめ直して、自分が取らないような行動しをして行くこと、なのかなぁ……
そんなことを考えているうちに、俺は眠りについた。最後に覚えているのは、部屋の蛍光灯。眩く光る、光源だった。
cross words/base ball bear
※現在11月25日なのですが、適当に予約投稿しまくってたら、本来の周期ならこの回は年明けなので投稿できないということに。それを知らずにやってたので今回は12月31日、大晦日に投稿ということで。今年の間にこの回が投稿したかったんですよ。
2020年は散々な年でしたけど、こんな年も人生の中に一年くらいあるよね。今日の曲は「今年の曲」って感じです。




