90.5話 柚子の闘志です!
ついついアリス様が生き返られたのが嬉しくて舞い上がって、強気な行動に出てしまいました……。反省反省。
でもあそこまで脱いで布団に入ったのに襲って来ないだなんて、アリス様も意気地なしですよね? なんか傷つきました!
コンコンと部屋の扉がノックされる。アリス様たちが帰ってきたのかな?
「はーーい」
ガチャと扉が開き、中に入ってきたのはロマンちゃんだけ。
「あれ? アリス様とユリアンちゃんは?」
「ふ、2人で買い物をされてから帰ってこられるみたいですよ?」
へぇ……2人で。ってことは今はロマンちゃんと2人きりってことになるんだ。なかなか2人きりになる機会もなかったし、どんな話をすればいいんだろ。
「あ、あの! 柚子さん!」
「う、うん?」
ずいぶん気合の入った声量で私の名前を呼ぶロマンちゃん。どうしたんだろ。
「あ、あの……つかぬ事をお伺いしますが、アリス様のこと、どう思われているのですか?」
「え、ええっ!?」
まさかロマンちゃんからそんなことを聞かれるだなんて! たぶん尊敬とかそういう話じゃなくて、恋バナの方……だよね?
どうしよう……騎士団の方では誤魔化したりしてきたけど、ロマンちゃんには素直に言った方がいいのかな? 一応仲間なわけだし。
「えっと……好きだよ? すっごく」
「そ、そうでしたか! そうでしたか……」
聞いてきたくせに好きだと言うとプシューッと赤くなってしまうロマンちゃん。ウブだな〜可愛い。こういうところが妹的ポジションになる理由だよね〜。
「そ、そのお気持ち、アリス様には……?」
「あのね、ちょっとだけ難しい話だけど、アリス様は偉い方でしょ? そういう人に付き人の方から想いを伝えるのはマナー違反なんだよ」
「えっ!? そうなんですか?」
「うん。それに……想いを伝える勇気も出ない! アリス様が私のことを好きじゃなかったらと考えると一歩が出ないの!」
そう、結局はそこに行き着く。チキンだからね。
「あ、アリス様は柚子さんのこと、好きだと思いますよ」
「それはわかってるよ。でも……そういう好きか、同じ好きかはわからないじゃん? それが怖いの!」
あれ……楽しい! これが恋バナ……! アリス様といる時はなかなかこんな会話できないし、なんか新鮮! ロマンちゃん女子力高いところあるから恋バナの相手にはうってつけだし。
「まぁとにかく、使用人の立場である以上、出すぎた真似はできないんだよね。アリス様から好きだと言われたらもちろん喜んでお受けするけど」
「そ、そうですか……大変なんですね、使用人って……」
そう、大変なんだよ。特にアリス様の使用人は大変だと思う。だって将来日本っていう大きな国を……いや、世界すら背負うことを期待されている人なんだから。
「私は……アリス様のお力になりたい。アリス様の支えになりたい。アリス様を……お守りしたい」
ロマンちゃんに向かって決意を表明する。困惑気味のロマンちゃんには悪いけど、このスイッチが入ったら止まらないよ!
「私はアリス様に……自分の一生をかけて尽くすと決めたから。アリス様をお守りすると決めたから。どんな手を使っても」
私は……私は……アリス様を1番に考えて行動するんだ。だから許さないよ、【魔弾】。一度私からアリス様を奪ったんだ。その報いは必ず、必ず私が!
そう、密かに闘志を燃やすのでした。
でも……何だろう、どこか心に何かが引っかかっているような、そんな気持ち悪い感覚があるのは。……気のせい、だよね?
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