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88話 復活ですわよ

 ……あら? わたくしはいったい……


「やっほー☆ 生身では初めましてだねアリスちゃん♪」


 まず目に付いたのはうさ耳。キャラ付けにしては古臭いですわね……。そして紫の髪に少しつり目。ちょっとした女王様なオーラを出している。もちろんこの方との面識はないはず。ただ唯一の判断材料から誰かは特定できましたわ。


「その声……ミミちゃん!?」


 なぜミミちゃんが実態化しているのかしら。というかわたくし……【魔弾】と戦って……


「いや〜、アリスちゃんはとんでもないモノをもってるけど所詮は人の子だね〜。あそこが限界点だったか〜」


「どういうことかしら? というかここはどこなの?」


 白いふわふわとした不思議な空間。先ほどまでの沼地とは全く違う世界がそこには広がっていた。


「ここは……アリスちゃんの神器の中って言えばいいかな」


 神器の……中? なぜわたくしがそんなところに……


「【魔弾】はどうしたの? というかわたくしはなぜここに……」


「質問が多いね〜。頭がいいとそうなっちゃうの?」


 わたくしの質問ぜめに苦い表情を浮かべるミミちゃん。


「まぁ結論から言うとアリスちゃんは死にました。【魔弾】に殺されました。以上!」


「なっ……!」


 わたくしが……死んだ!? それも【魔弾】に殺されて……ですって!?


「ど、どういうことなの!? わたくしは戦っていただけで!」


「【魔弾】の能力だね〜。6発はただの弾丸だけど7発目は特別な力を込められた弾が出てくるんだ。その7発目は……【魔弾】が最も望む場所に必ず当たるという魔法がかけられているんだよ」


【魔弾】が最も望む場所……?


「つまり魔王軍の脅威になっているアリスちゃんの心臓に当たった、ってことだね」


「……なるほど。なぜそれを知っているのかしら?」


「神様だからね〜。初めから知ってたら教えてたけど、この情報収集は後出しになっちゃうからさ〜。ごめんごめん」


 ……人が死んだというのに軽いものですわね。


「それで? わたくしはこれからどうなるの? 天国行きかしら?」


「およ? 意外だね〜。もう諦めちゃうんだ?」


「……ということは諦めなければまだ生き返るチャンスはあるということね」


 そうわたくしが問うとミミちゃんがニヤッと笑った。どうやら期待していた返答ができたらしいわね。


「いいねぇアリスちゃんは。神器に入って良かったよ」


 ニヤニヤしたまま話すミミちゃん。品はないけれど……どこか強者のオーラを感じますわね。


「じゃあ生き返ろうか♪」


「そ、そんな軽いものでいいの……?」


「あ、もちろんタダで生き返らせるわけにはいかないよ。神様にも色々ルールってのがあるからね」


 ならなぜそんなご飯でも食べに行きましょうかみたいなノリで言ったのかしら……。


「それで? 生き返るためにはわたくしは何をすればいいのかしら?」


「生き返るためにすること、じゃなくて生き返った後にすることを伝えるね。まず魔王軍がこの世界に邪魔だから倒し切ってね♪ 次に神様を敬ってね♪ 最後、後追い自殺しようとしている柚子ちゃんをなんとか止めてね」


「柚子が?」


「今必死になってユリアンちゃんとロマンちゃんが止めてるよ。早くしないとアマちゃんに主人斬りの汚名が付いちゃう〜!」


「わかりましたわ。元よりわたくしは魔王軍は倒す気でしたし、神様にだって感謝をしていますわ。あと……柚子を止めるのは当然ですわね。生き返った後にあの子がいない世界なら生き返る意味がないわ」


「ヒューヒュー! 熱いね〜。ほんじゃ生き返らせるけど……神様のルール的に私に与えられた権能では生き返らせるのは1回きり。もう死なないでね♪」


「えぇ。もう不覚を取ることはしないわ」


 まさか一撃必殺の初見回避不能な技を持っているだなんて油断していたわね。わたくしの悪いところが出てしまったわ。


「じゃあ向こうの世界でまた会おうね〜。『Re:LIFE』」


 眩しい光に包まれる。それと同時にわたくしの意識はスゥッ……と薄れていき……やがて肉体を感じるようになった。


「ん……戻ってこれましたわね」


「「アリス様!!」」


 ユリアンとロマンがわたくしの顔を覗き見ていた。あら? 柚子はどこに……


「アリス様! 柚子さんを止めてください!」


「もう死んでしまうのです!」


 チラと柚子を横目で見てみると[ムラクモ]を首に構えて斬首しようとしている。まったく……世話の焼ける使用人だこと。

 死後硬直があったのかなかなか動きませんわね。でも……柚子のためなら死んでも動いてやりますわよ。自分の身体に鞭を打つことくらいわけないわ。


 ゆっくり体を起こして柚子の元へ。


「アリス様……今そちらに向かいます……もうこんな世界にいる意味はありません……」


 物騒なことを言う柚子の肩にポンと手を置く。


「ダメよ。貴女がいないとわたくし、何もできないもの、勝手に死ぬなんて許さないわよ?」


 わたくしの声を聴いて一瞬で振り返る柚子。もう……泣きそうな顔しないでよ、こっちまで涙が出そうになるじゃない。


「ぁ……ぁ……アリス様ぁ……」


 そのままポロポロと泣き出してしまった柚子。ここまで弱った姿を見るのは久しぶりかもしれないわね。

 泣いている柚子をそっと抱きしめる。


「ごめんなさいね。油断していたわ。もう……死なないから。だからそばにしてちょうだい」


「はい……! はい!」


 ふぅ。なんとかなりましたわね。


「良かったことなのですが、なぜアリス様は生きていらっしゃるのです?」


「私たちが確認した時には心臓が砕けていたのに……」


 まぁ2人の疑問も当然ですわね。わたくしだって他の誰かが生き返ったら同じような疑問を持つもの。


「ミミちゃんに生き返らせてもらったのよ、特別にね。さて……【魔弾】は去ったようね」


 完全にわたくしを殺した気でいたのでしょう。でも残念ね。わたくし……こういう運の面でも天才ぶりが発揮されるのよ。


「まずは帰りましょうか。一度死んだんだもの、ちょっと休みたいわ」


「「「はい!!!」」」

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