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75話 帰還ですわよ

 さて……どうやらあちらも決着がついたようね。


 両膝をつくルカさんとエデンさんの姿が見えた。【魔導士】の討伐は彼女たちに取られてしまったけれど、まぁわたくし1人だけで魔王軍幹部を倒す理由もないから別にいいわね。


「柚子!」


 決着しているのなら柚子の方へ向かう。意識は……


「アリス様……ありがとうございます……」


「『応急手当て』」


 良かった……。『応急手当て』で1番深い傷は癒すことができた。でもすぐに医務室へ連れていかないといけないわね。


「エデンさん! ルカさん! わたくしは今から柚子を連れて医務室へ向かいますわ!」


 大声で向こうにいるエデンさんとルカさんに伝える。向こうは叫ぶ元気はなかったのか、手で返事をしてきた。それを確認して柚子をお姫様抱っこする。


「もう少しの辛抱よ、柚子。頑張ってちょうだいね」


「は、はい……」


 柚子をお姫様抱っこしたまま飛翔! すぐに隊舎へと向かう。


 医務室は確か1階だったかしら?


「失礼しますわ」


「はーい……って大怪我しているじゃないですか!」


 柚子の怪我を見て心配そうな声を上げる先生。


「お願いします。柚子を……救ってください」


「お任せを!」


 柚子をベッドに寝かせ、医務室の先生に任せる。これでひと安心ね。

 しばらく医務室の前の椅子で座っているとなかなかにボロボロなエデンさんとルカさんも医務室へやってきた。


「……お疲れ様でした。ルカさん……ズルい人ですわね」


「はは……でもこれで完全に魔王軍とのパイプは無くなってしまいました。これからは完全に、【白百合騎士団】の副団長、ルカとして生きていきます」


 ボロボロの身体とは正反対の、キラキラした目でそう宣言するルカさん。エデンさんもそれを聞いてなんだか満足そうですわ。

 一礼をして、2人は医務室へ入っていった。



 そして……ひと月後……


「これまでお世話になりましたわね。ここで得た経験を無駄にしないようこれからも魔王討伐を目指していくつもりですわ」


 そう、今日でこの【白百合騎士団】とはお別れ。4ヶ月の仮入団の終了ですわ。でも……きっとまたこの方たちとはどこかで出会う。それは確信を持って言えますわ。なぜなら……お互い魔王の討伐を目指しているから。


「寂しくなりますね。それに……戦力ダウンも否めないのは事実です。どうです? 正式に入団されては……」


「そうね。ここの居心地は良かったわ。でも……わたくしたちは自由に戦うわ。それに……この世界において同じ目標を持つわたくしたちはいつまでも仲間ですわよ」


 わたくしの言葉にエデンさんもルカさんも、それからラファエルさんも笑顔になる。


「ではご機嫌よう。貴女達の活躍を願っているわね。ではまた」


「お世話になりました!」


 深く一礼をして【白百合騎士団】の本部がある【エクトル】の街を後にする。向かうはもちろん、【イリス】の街。


「懐かしいわね、この谷間の道も」


「そうですね、あの時はメルトさんも一緒だったんでしたっけ」


 そういえば……メルトさんとは最後まで仲良くなれなかったわね。まぁいいけれど。


「……あら、懐かしいのが出てきたじゃない」


「えっ?」


 前方に見えるのは……体長5メートルはあるかという岩の巨人。【エクトル】へ向かった時にも見た魔獣、[ロックゴーレム]ですわね。


「グゴゴ……!」


 あの時は『絢爛の炎』でかき消したのでしたっけ。今考えるとやりすぎでしたわね。なら……成長したわたくしを見せてあげましょうか。


「『絢爛の炎:瞬』」


 一瞬の輝き、一瞬の炎、一瞬の爆発。これで岩の巨人を吹き飛ばすには十分だった。


「勝つという結果は同じでも、成長したでしょう? わたくし達がこれだけ成長したのだから……」


「ユリアンちゃんとロマンちゃんは……!」


「期待できるわね。さ、行きましょ」


「はい!」


 しばらく歩くとようやく【イリス】の街が見えてきた。懐かしいわね。となると【アトロン島】が恋しくなってくるわ。まぁ今日帰るのだけれど。


「さて、ユリアンとロマンはどこかしらね」


「地下闘技場で修行しているんじゃないですか?」


「そうかもしれないわね。行きましょうか」


 というわけで地下闘技場がある領主塔へと向かう。当然のように警備をスルスルっと抜け、塔内に侵入。そのまま地下へと続く階段を下っていきますわ。


「……あれ? 誰もいませんね」


「実戦のためにクエストにいったかもしれないわよ」


「なるほどー!」


 ポンと手を叩く柚子。……ふぅん。なるほどね。


「「やあっ!」」


 右から手裏剣、左から短剣が伸びてきた。そしてピタッとわたくしに当たる直前で止まる。


「えっ!?」


 大声で驚く柚子。やっぱり気がついていなかったのね。


「柚子にバレずに潜んでいられるなんて、やるじゃない。ユリアン、ロマン」


「アリス様にはやっぱりバレていたのですか!」


「まだまだ敵いませんね」


 闘技場にたくさん置いてある岩陰から青髪ポニーテールを揺らすユリアンと赤髪ウェーブ髪を揺らすロマンがひょっこりと現れた。


「え、ええっ!? いつの間にそこに!?」


「最初からよ。久しぶりね、2人とも」


「はいなのです!」


「お久しぶりです、アリス様!」


 久しぶりに見るユリアンとロマンの顔は、どこか大人びて見えた。それに……


「2人とも少し背が伸びたかしら?」


「そうかもしれないのですね。気にしてはいなかったのですが」


「ちょっと伸びている……かも? しれないですね」


「ちょ、ちょっと! 3人だけで話を進めないでくださいよ〜!」


 話の輪に入れていなかった柚子が嘆く。まったく……怪我明けとはいえ2人の気配を感じることもできなかったほどに鈍っているのが悪いのよ。


「それで? 貴女達のレベルを教えてもらってもいいかしら?」


「はい! 私たちは今……」


「レベル42なのです!」


 素晴らしい! 【白百合騎士団】でも幹部に座すことができるレベル。それも4席レベルじゃない。

 これは……あとでなでなでしてあげないといけないわね。奥で倒れているニコラのことを。

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