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73話 vs魔女ですわよ

「何の冗談なの……ルカ」


 エデンさんの顔に初めて焦りが生まれる。それもそのはず。こちら側についていたと思った【魔女】、ルカさんが【魔導士】の側についているから。


「冗談? 何が冗談なの? エデン。私は魔王軍幹部。わかっていたことよね?」


「……でも貴女は私を……私について来てくれるって」


「それ、信じてたんだ。甘っちょろい女」


 今の言葉で膝から崩れ落ちるエデンさん。まずいわね……これじゃあエデンさんは戦力にならないわよ。3対2どころか2対2になるじゃない!


「ふん。なかなか見ものじゃないか。お前がエデンを殺れ、【魔女】」


 肩に置かれた手をルカさん……【魔女】は払いのける。


「私に命令しないで。あなたは私より格下よ」


「……なんだと?」


 眉をひそめる【魔導士】を気にすることもなく飛び、エデンさんの方へ。させない!


「柚子! 【魔導士】は任せたわよ!」


「はい! そっちはお願いします!」


 正直言って柚子1人で【魔導士】を相手にするのは荷が重いわ。10分以内に終わらせないと!


「エデンさん! 捕まって!」


 飛びながらエデンさんを避難させようとする。もちろんそれを黙って見ている【魔女】ではなかった。


「やらせませんよ。『薄氷』」


「なっ!?」


 わたくしの足に氷の膜が張られる。なんて質量……上手く飛べなくなってしまったわね。


「『フレイム』」


 炎で溶けるかと思ったけれどそう簡単にはいかないわよね……。氷はそこにあり続ける。厄介な……!


 異世界に来て1番のピンチ。こんなときこそわたくしの頭脳とひらめきで乗り切るしかありませんわね。


 ここはやっぱり……


「エデンさん! 立ってください! 貴女はその程度なの? ルカさんが離れたなら、もう一度屈服させればいいでしょうに!」


「……私は……」


 目に生気がこもっていない。このまま【魔女】と戦わせたら間違いなくエデンさんが死ぬ。


 ついに高度を保てなくなって地上へ。【魔女】は氷の床を作ってエデンさんに向かっていく。このままでは……一か八か、今思いついたことをやるしかないわね。


「『絢爛の炎:瞬』」


 両手から煌びやかな炎の魔法を一瞬だけ下向きに放出。それがターボになってわたくしの身体を持ち上げた。


「なに!」


「そういえばわたくし、天才でしたわね」


 エデンさんと【魔女】の間に降り立ち、いつものセリフを吐く。


「不快な……どいてもらえますか?」


「貴女こそ立ち去ってくれるとありがたいのだけれど」


【魔女】との戦闘は必至。ならば……


「ここはひとつ賭けをしませんか? わたくしが勝ったら、貴女の副団長の座をいただきますわ」


「ふっ。まだそんなことを……どうぞご勝手に。この【絶氷の魔女】、アリスさんに負けるほど弱くはありませんよ」


 わたくしのレベルや強さはある程度把握しているはずなのにこの発言。何か圧倒的な勝算があるということね。


「……『ライトニング』」


 試し撃ちのつもりで放った雷。これで倒せるなら楽なのだけれど……


「『アイシクル』」


 一瞬にして氷の柱を立てて雷を防いできた。まぁ……そう上手くはいかないわよね。


「『アイスブロック』」


【魔女】が手から氷の粒を……いや塊を生み出す……って


「冗談でしょう……?」


 その大きさは優にわたくしの身長をはるかに上回るものだった。あんなのが直撃したらただじゃすまない。というか、魔法で生み出されているのだから即死するわよね……。


「それならばこちらも考えがあるわよ……『フレイムトルネード』」


『サイクロン』と『フレイム』を掛け合わせる。しかもほぼ全力に近い。これだけの威力で撃てば氷も溶けるでしょう? 【魔女】が動くまで、手元で炎を回しておく。


「……その勝てると確信する傲慢な貴女が嫌いです」


「……それはどうも。でもあいにくわたくし、天才なのよ」


「それが……」


 氷塊を上に持ち上げる【魔女】。来るわね……。


「傲慢だと言っているんだ!」


 氷塊を思いっきりわたくしに投げつけてきた。速い……今対応を考えていたら遅かったわね。


「『フレイムトルネード!』」


 手のひらに準備しておいた炎の渦を氷塊に向けて放出! ぶつかった瞬間氷が砕け、辺りにダイアモンドダストのような輝きが生まれる。ここが戦場じゃなかったら柚子と景色を楽しみたいところだけれどね。


 肝心の氷塊は完全に……とは言わないまでも砕くことができた。


「……厄介な」


「よく顔に出るようになったじゃない。騎士団の頃はわたくしに顔を出さないようにしているように見えたけれど?」


「……貴女はエデン以上に底が知れないですからね。私の計画がバレないよう避けていたのは当然でしょう」


 わたくしからしたらエデンさんも十分得体がしれないのだけれどね。心はもう弱ってしまったようだけれど。


「おい! 【魔女】」


 ゾクッと背筋が凍るような感覚を覚える。なぜここに……【魔導士】が……


「あなた……柚子はどうしたの!?」


「俺の魔獣の実験台さ。もう……死んでいるかもしれんがな」


 落ち着きなさいアリス。まだそうであると決まったわけではないわ。柚子は強い子。どんな魔獣にだって負けやしないわよ。


「それより【魔女】、さっき俺を格下だと言ったな?」


「事実でしょう? 私の方が強いのですし」


「何だと……貴様ぁ!」


【魔導士】が【魔女】の首根っこを掴む。まったく表情が変わらない【魔女】とは対照的に【魔導士】の顔は怒りで支配されていた。

 ……そんな時だった。


「かかったわね、おバカさん。『アイシクル!』」


【魔導士】の腹を、氷の柱が貫通した。

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