表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/114

72話 vs魔導士ですわよ

「【魔蟲】め、雑な仕事をするものだ。俺の仕事が増えたか」


【魔導士】が同じく魔王軍幹部である【魔蟲】に対して悪態をつく。


「どうした? 早くかかってきたらどうだ?」


「……せっかちな男は嫌われるわよ」


「……少なくともお前みたいな得体の知れない女にモテたいと思ったことはないな」


 奇遇ね。わたくしも男にモテたいと思ったことは無くてよ。

 白い男が手を挙げる。


「柚子」


「はい」


 わたくしと柚子の警戒を感じ取ったのか、【魔導士】が薄く笑う。


「そんなに警戒をするな。ただ……楽しもう」


 パチンッ! と【魔導士】が指を鳴らす。すると空から大量の言葉にできないほど混沌とした魔獣が降ってきた。


「なっ……!」


「この醜悪さこそ、強さの証だ。征け、なき者達よ。せめて俺を楽しませろ」


 ニイッと笑いながら指令を出す【魔導士】。好きにさせてなるものですか!


「柚子、ここで討伐するわよ!」


「はい! 『紫電:一刀両断』」


 蠢く混沌とした魔獣を切り裂く柚子。が、刀が通らない! まさか……神器ですら!?


「ふっ、面白い。魔獣をこうも掛け合わせるとこんな結果が得られるか」


 まるで研究者のようなことを口走る【魔導士】。いや……本当に研究者なのかもしれないわね。魔獣を開発する専門家かもしれないわ。


 こんなに強い魔獣を大量にどうすれば……と思ったけれど、この魔獣のほとんどが動かずに地に伏している。


「失敗作どもめ……」


 なるほど、魔獣を掛け合わせた実験の成れの果て、結果がこれというわけね。なら今動けている数体も時間の問題かもしれないわね。


「柚子、できるだけ時間を稼ぐわよ」


「は、はい!」


「チッ。勘のいい女め」


 おそらく魔法も効かない。その分安定感は皆無。なら逃げ切れば……


「グ……キ……」


 ばたりばたりと気色の悪い魔獣たちが地を這い、絶命していく。


「つまらん。興じることもできぬか」


「……魔獣に対して何らの関心もないけれど……命を弄ぶ貴方のやり方、嫌いだわ」


「ふん。弄ばぬ命になど価値はない。弱者の命は強者の自由だ」


 ……どうやら一生相入れることはないようね。ならば……討伐するのみよ。


「貴様らの命も例外ではない。魔術と魔獣の研究を極め、【魔導士】と言われるまでとなった俺の力に……その命、弄ばれるがいい」


「……気色悪いわね。この世界の男性はこんなのばっかりなの?」


「そういえばロクな男に会ってないような……」


 柚子と意見が合致したわね。最初の最初に話しかけた道案内の男性くらいかしら?


「さて……これで死ぬなよ? 『ヴァイス!』」


【魔導士】の身体が白く輝いたと思ったらそのまま突っ込んできた!


「柚子! 警戒を!」


「はい!」


 真っ直ぐに向かう先は……わたくし!


「生意気な貴様から殺してやる! 反転しろ……『シュバルツ!』」


 白いオーラが一気に黒くなり、放射される。それくらいなら予測済みよ!


「『ダークネスシールド!』」


 闇の渦で盾を作る。天才であるわたくしだからこそできた即興の魔法ね。黒色の波動を受け止め、渦でかき回し、弱める。成功したようね。


「いいぞ。もっと俺を楽しませろ!」


 気にくわない……戦いを楽しむその心も笑顔も……最悪だわ。


「見せてやるよ……魔術の煌めきをな!」


 くる……! 体に力を込めて防御の体制をとる。早めに『絢爛の炎:瞬』で決めたいところだけれど、ここまで狡猾な男だと何を用意しているか分かったものでは無いから……下手に動けないのが現状ね。


「『マギア・ブランカ』」


 白色に発光した【魔導士】の体から、何本もの輝く光線が放射される。


「柚子! 飛ぶわよ」


「は、はい!」


 返事を最後まで聞くことなく飛翔! あれだけはマズイわ……。


「ふっはっはっはっ! 逃げるか! それもいいだろう。だが……逃げ切れると思うなよ!」


 光線はうねり、曲がり、わたくしの方へと進路を変えた。ホーミング性能ですって!? 空中で柚子を抱えながら防御の魔法は撃てない……! どうすれば……


 甘んじて受けるしか無い、そう思った時……


「『サファイアクリスタル』」


「「えっ!?」」


 わたくしと柚子を取り囲むように透明の宝石が現れた。まさか……この魔法は!


「ほう。団長自らお出ましか」


「……エデンさん」


 オレンジ色の髪の毛をなびかせながら宝石のような剣を振るったエデンさんが、そこに立っていた。隣には……ルカさんもいる。


「間に合いましたね。良かったです」


「……どうしてこちらに?」


「その話は後でもいいでしょう。今は……【魔導士】の討伐が先決です」


 そうね。確かにその通りだわ。いったん降りましょうか。


「さて【魔導士】さん、初めまして。【白百合騎士団】団長のエデンです。今日は貴方の命をいただきに参りました」


「あぁ。噂に聞いているぞ。人間のくせにレベル70の領域にたどり着いた化け物だとな」


 やはり……エデンさんはレベル70を超えた強者だったのね。


「女性に向かって化け物という言葉は失礼ですよ。モテませんね」


「……少なくともお前みたいな得体の知れない女にモテたいと思ったことはないな」


 わたくしに返した言葉と同じ言葉で返す【魔導士】。


「4対1よ? まさかまだ楽しむつもり?」


「当たり前だ。命のやり取りに楽しみがなければ、戦う理由はそこにはない。……それと、1つ勘違いをしているな。4対1ではない。3対2だ」


 そうか……この男はルカさんを【魔女】として仲間だと思っているのね。


「さぁ、【魔女】よ、俺の元へ来い。ここでこいつらを根絶やしにしようぞ……」


「……そうですね」


 ルカさんが【魔導士】の元へ行く。あれも……演技なのよね?


「ルカ! そっちに行ってはダメ!」


「エデンさん……?」


 まさか……エデンさんの作戦外にある行動ということ?


「え、もう何が何だか……」


 柚子は混乱して状況を理解できていないようね。


「おめでたい奴らだなぁ、【魔女】よ。まさかスパイであることをわざと知らせて二重スパイをさせた気でいるのだからな」


 ということはまさか……ルカさんは……!


「さて、アリスさん、柚子さん、エデン……処刑の時間よ」


 ルカさんは……魔王軍側の人間だったということ……!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ