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54話 戦場ですわよ

 ルカさんに付いて行きC地区とやらへ。本当に街なのかと思うほど、地面がボコボコになっている。凄まじい戦闘が起きていることは言うまでもなさそうね。


「そういえばメルトさんは?」


「あの子はA地区に。あれでも第5席ですから」


 ……この世界基準では相当な強さのはず。それを「あれ」呼ばわりするルカさん……ただ者ではないとわかるわね。


 しばらく歩いて進むと簡易的な建物と少しの人員が見えてきた。あそこをC地区の拠点としているのね。


「る、ルカさん!? どうしてこちらに……」


【白百合騎士団】の用意した白い服装に身を包んだ女性が驚いて駆け寄ってくる。


「こちらの2人は?」


「新規メンバーのアリスさんと柚子さんよ」


「どうも」


「よろしくお願いします!」


 ルカさんに軽く紹介され挨拶を済ます。駆け寄って来た女性も安心したようで挨拶を返して来た。


「戦況は?」


「上々です。C地区の半分を取り戻しました」


「ふぅん。やるじゃない」


 C地区の地図を見ながら2人が会話をする。今のところわたくし達に入る余地はないわね。


「アリスさん、柚子さん、どうぞこちらへ」


 ルカさんに促されようやく地図を見ることができた。赤いところが【白百合騎士団】の勢力、黒いところが魔獣や魔王軍の勢力ということかしら。


「この状況、どう見ます?」


「いいと思います!」


 柚子が何も考えていないかのように即答する。


「これは1日でどれくらい勢力が変わりますの?」


「早ければ1日でC地区が落とされることもありますよ」


「もちろん、そうなれば団長や副団長が駆けつけてくださりますが」


 なるほど。先ほど驚いていたのは優勢なのにルカさんが出て来たから不安になったからだったのね。


「さて、私たちも戦場に向かいましょうか。今は相手しているのは?」


「魔獣[サンドシャーク]です。おそらく、魔王軍が送り込んだものかと」


「砂に潜り込むサメ……脅威ね」


 わたくしが呟くとルカさんは頷く。


「えぇ。レベル40。強敵です」


 ということは今戦っているのはかなりの腕利きがたくさん。ということね。戦力が足りていなければすぐに壊滅するもの。


「大蛇以上ですか……怖いなぁ」


 レベル65が良く言えたわね。まぁレベルだけがすべての世界ではないのだけれど。


「というかルカさん、この2人……新人ですよね? サンドシャークのところに連れて行っても大丈夫なんですか?」


「えぇ。だってこの2人……幹部志望者ですから。これくらいで死んだらそれまでです」


 ……ずいぶんと冷たい言い方ね。まぁわたくし達はそれでいいのだけれど、他の幹部志望者にも同じような扱いをしているのかしら? だとしたらかなり非人道的よね……。


「さ、つべこべ言わずに行きましょう。こういうのは思い切りが大事ですから」


 そういうルカさんに再び付いていく。シフトも交代の時間だったようで拠点にいたメンバーはみんな付いて来た。


「交代だ! 全員退避!」


「「「ハッ!!!」」」


 おぉ……これはかなりの人数で戦っていたようね。10……いや15くらいかしら?


 後退する【白百合騎士団】の兵士たちを黙って見送るサンドシャークではない。砂嵐を起こしてこちらに向かわせてくる。ここはわたくしの『ウィンド』で対抗を……


「『ストーム!』」


 と思っていたらルカさんが思いっきり風を放出して砂嵐を押し返した。とんでもない威力だったわ……。


「「「ふ、副団長!?」」」


 今戦っていた部隊もまた、先ほどの方たちのようにみんな驚いている様子。すごい存在なのね、幹部は。


「さぁ……戦闘開始です。私が来たからにはこの時間で終わらせてしまいましょう」


「「「おおー!!!」」」


 交代で戦闘に入る兵士たちが叫ぶ。早くもリーダーシップを見せてくれるじゃない。


「あ、アリス様……」


 柚子が不安そうに呟く。この中で戦果を挙げることができるか、たしかに不安もあるけれど……わたくしに不可能はないわ。だってわたくし、天才だもの。


 もうほとんど実力が割れている【白百合騎士団】に力を隠す必要はないわね。


「柚子、力の8割近くを出しなさい。いいわね?」


「は、はい!」


 柚子の耳元でそっと囁く。警戒心の強いルカさんも流石にこれには気がついていない様子ね。


「では……飛翔!」


 地を這うサメに対し、わたくしは空から攻撃を図る。


「なっ! 飛んでる!?」

「嘘……高等魔法じゃない!」


 黒赤のドレスを風になびかせサメの真上へと到達。さぁ……焼き焦げなさい!


「『フレイム!』」


「グオオッ! オオオオッ!」


 一度炎を浴びたもののすぐに雄叫びをあげて地中へ潜り込んだ。


「やるじゃないですか!」


 一瞬ギョッとした。この高度を取っているのにルカさんが横にいたからね。


「な、なぜ……って」


「そうです。私の魔法『セイントタワー』です」


 魔法で塔を建てて上から攻撃を仕掛けられるというわけね。飛べない人にとってはとんでもなく便利な魔法じゃない。


「……あれを倒せば幹部に近づけるかしら?」


「どうでしょう。ただ、倒さず何もしていないよりは進めますよ?」


 アドバイスをしているようで、当たり前のことを言っているだけのルカさん。ズルいわね。


「そんなにわたくしに幹部になられたら困るのかしら?」


「えぇ。私もこの席に命をかけていますから。そう易々と幹部になられては沽券に関わります」


「なるほどね」


 くだらない……とは言い難いわね。権力者の世界で生きていた者を見てきたわたくしにとってその感情は理解できないものではないわ。ただ……わたくしの目的は達成させてもらうわよ?


「オオオッ!!!」


 サンドシャークが大声をだして地中から姿を現した。と、同時に砂嵐を身体から全方位に向けて放出する。さっきより強い!


「お先に失礼します。『ストーム!』」


 ルカさんが再び風で押し返そうとする。……しかし先ほどのように上手くはいかず、なかなかに拮抗した押し合いに。


「くっ……」


「……『ウィンド』」


 わたくしがルカさんを助ける形で風の魔法を放つ。同じ騎士団にいるんだもの、負けるより勝った方が気持ちがいいわ。


 それでも足りない。押し返すには……どこか1つに穴を穿つ必要がありそうね。なら……


「柚子! 砂嵐を斬りなさい!」


 下にいる柚子に大声で指令をだす。頼んだわよ、わたくしの頼れる使用人さん?


「はい! 行くよ[ムラクモ]。『紫電:十文字斬り!』」


 大きな砂嵐を十字に斬り裂いた柚子の一撃を皮切りに、わたくしとルカさんの魔法が優勢になる。


「「はああっ!!」」


 2人の生み出した風が砂嵐を完全に押し返した。サンドシャークの姿が見れない……砂嵐を放っては潜るを繰り返す気? 面倒ね……。


「……アリスさん?」


「何かしら」


 ルカさんに改まって話しかけられる。


「アリスさんが隠されている本気、出していただけませんか?」


「……なんのことかしら? さっきから本気なのだけれど」


「……こちらが貴女のレベルを掴んでいないとでも?」


 ということはやはり【アイン】の領主室に何か仕掛けがあったということね。気がつかなかったわたくしの責任だわ。


「……いいでしょう。ただ……」


「ただ?」


「貴女の隠されていることも、いつか見せてくれると嬉しいわね」


「ッ……!」


 さぁて、出てきなさいサンドシャーク。本気になったわたくしの力、特別に見せてあげるわ。


「オオオッ!!!」


 出てきた! ここね。


「『ライトニング!』」


 雷の魔法を全力で放つ! 初めて本気の本気で撃った雷の魔法は分裂させる意思がなかったのに勝手に分裂。しかも一撃一撃が今までの倍近い力を持っていた。


「グギョオオオ!」


 その魔法を撃った後に残っていたのは、サンドシャークの叫び、ただ1つ。

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