表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/114

24話 vs魔蛇ですわよ②

 こうしている間にも柚子と【魔蛇】は戦いを続けている。レベルでは柚子の方が優位でも魔法・スキルのレベルはおそらく【魔蛇】に軍配が上がる。あまりグズグズしてられないわね。


「簡潔に、結論だけ言うわよ。貴女たちの力を貸しなさい。わたくしたち4人で、【魔蛇】を倒すわよ」


「「……へ?」」


 わたくしの言葉が衝撃的だったのか、2人は目を見開いて固まった。


「わ、私たちの力を……?」


「そ、そんなの無理なのです!」


 固まった数秒後に意識を取り戻し、わたくしに反論の言葉を投げてきた。


「何も【魔蛇】を倒せとは言ってないわ。隙を作れと言っているだけよ」


「あなたたちでも勝てない【魔蛇】になんて、立ち向かえません!」


「隙を作ることすら無理なのです!」


 どんな言葉を投げかけても、帰ってくる言葉は 無理・無理・無理。ふぅん。


「だいたい、私たちはいつもこうなんです!ハーランドにパーティに入れられた時も、好待遇をチラつかせてきたくせに最後はポイ捨て……」


「私たちが意見を言えばいつも決まって『女は黙っていろ。』アリス様もそうなのです! たとへ【魔蛇】に勝てたとしても女である以上この世界ではうぐっ!」


 強い反論の弁を投げかけてきた2人の生贄ちゃんの襟を掴む。右手で赤髪を、左手で青髪の方を。


「"女だから"無理? "女だから"上手くいかない? それは違うわ」


 握る手は弱く。しかし語る口調は強く、わたくしの思いをぶつける。


「人間性差はあれど所詮は"個人"。貴女達は今までの待遇で"女"ではダメだと決めつけたにすぎないの! ならわたくしの生き様を見なさい! どんなに虐げられようと、邪魔されようと、疎ましく思われようと構わない! なぜなら私は"1人の女"じゃない! "御陵院有栖"だからよ! 貴女たちは違うの? "1人の女"でしかないの?」


 ……言葉をいい終わり、2人の首を離す。


「「わ、私たちは……」」


 わたくしの言葉をしっかりと聞いた2人は顔を晴らせ、立ち上がった。


「私は……ロマン」


「私は……ユリアン」


 その目にはさっきまで尻餅をついていた時とは明らかに違う意思を感じる。さしずめ1人の人間になった目ね。


「よろしい。なら……貴女たちの限界を超えるわよ!」


「「はい!」」


 さぁ、わたくしも準備とイメージトレーニングを進めないといけないわね。成功するかは一か八か。でもこれに賭けるしか手はないわ。



「はぁ! やあっ!」


「ふははっ! だんだん鈍ってきているわよぉ?」



 柚子の方も限界が近いようね。早めに進めないと……。


「アリス様、私たちは……」


 「合図を出したら各々の攻撃を仕掛けてちょうだい。ユリアンは【魔蛇】の腕。ロマンは足に向かってね」


「「は、はい!」」


 さぁ……今行くわよ、柚子。あなたの主人を信じなさい。

 まずはわたくしからね!


「『ライトニング!』」


「んん〜? 私には魔法でダメージを与えられないわよぉ?」


「それはダメージの話でしょう? ならこれはどうかしら?」


 魔法の雷を【魔蛇】の手前で屈折! ここは森。当然木は生い茂っているから……雷は木に直撃して木をなぎ倒した!


「ふぅん。悪くない手ね。でも」


「『スネークウェーブ!』」


 数百の蛇をうじゃうじゃと召喚して木々を塞きとめる【魔蛇】。ここね!


「ロマン、ユリアン、今よ!」


「「はい!!」」


 わたくしが[武装熊]からダメージを受けたところから察するに、レベル差はダメージが入るか入らないかには影響を与えないはず。つまりレベル9の2人でも【魔蛇】に少なからずダメージは与えられるということ。いけないいけない。こんなこと冷静になって考えている場合じゃありませんでしたわ!


「やぁぁぁあ!!!」


 ロマンが短剣を構えて果敢に攻めた。しかし【魔蛇】もすぐに体制を立て直し……


「……ふん!」


 尻尾で思いっきりロマンを叩いた!


「ぐべっ!」


「ロ、ロマン! この! 喰らえなのです!」


 ユリアンの投げた手裏剣は【魔蛇】の足めがけて進む。


「ちっ。面倒ね!」


 手裏剣も尻尾で対応しようとする【魔蛇】。さぁ、2人が命がけで作った隙よ、必ずものにするわ!!!


「はぁぁぁぁ!!! 『紫電:一文字!』」


「なにっ!?」


 柚子が倒れた木の間から飛び出して斬りかかる。ナイスよ!


「くそ……がぁ!」


 ついに【魔蛇】にダメージらしいダメージを与えることができましたわね。


「ゴホッ、ゴボッ……」


「ロ、ロマン……!」


「『応急手当て』」


【魔蛇】のなぎ払いを直撃したロマンは口から血を吐いている。『応急手当て』でなんとか止血と回復はできたけれど【アイン】に戻ったらすぐに医者に診せた方がいいわね。


「2人とも良くやってくれたわね。ありがとう。あとは任せなさい」


「「は、はい」」


 2人とも安堵の表情を見せる。が、当然まだ終わりではない。


「バカな小娘たちねぇ! 私を怒らせなければ気持ちよくなっていつのまにか死を迎えている。そんな幸せを感じられたというのに自ら苦しい方を選ぶだなんてね!」


 腹の一部が裂けている【魔蛇】が嘆きの声をあげる。あなたは女の子に欲情できてもわたくしは蛇には欲情できないのよねぇ。顔はいい線いってるとは思うのだけれど。あ、少し思考にも余裕が出てきましたわね。


「柚子、あとどれくらい戦えるかしら?」


「……もって10分です」


「了解よ。変わらずメインは柚子が。サポートはわたくしがするわ」


「はい! はあぁっ!」


 紫の靄を放つ[ムラクモ]を懸命に振り、【魔蛇】を仕留めにかかる。手負いとは言え流石魔王の幹部。軽い身のこなしで柚子の刀をかわしていく。となると……


「『ライトニング!』」


 よりいっそうわたくしのサポートが重要になってくるわね。


「くそ……ちょこまかと!」

 

「よそ見ですか!」


「ぐっ!」


 放っておくには厄介なわたくしを倒そうとすると至近距離の柚子が襲いかかる二段構え。でも柚子によるとこれを続けられるのはあと10分……。わたくしの方は準備は万端。あとはどう出るかね。勝負は時の運というやつだわ。


「あぁぁぁ!!! 邪魔くさい! もういい! まとめて死ねぇ!『千蛇侵攻!』」


「「なっ!?」」


【魔蛇】の大きく開いた口から弾丸のように毒ヘビが飛んでくる。なんて危険な……!


「くっ!『フレイム!』」


 魔法でダメージが与えられないのは【魔蛇】に対してのみ。召喚された蛇たちになら効果あるのね。


「ふふ……今度隙を作ったのはそっちね!」


「しまっ……ぐっ!」


 首を掴まれ……まずい!


「アリス様!」


 横目で柚子が追いかけてくるのが見える。が、間に合わない。万事休すね……。


「『忍法:爆裂手裏剣!』なのです!」


「なにっ!」


 わたくしの首を掴んでいる【魔蛇】の腕に手裏剣が刺さり、爆発!


「ぐうぅ……!」


 焼けた腕を抑えるためにわたくしの首は解放された。横目で手裏剣が飛んできた方向を見ると、ユリアンが得意げに笑っていた。


「ありがとう。助かったわ」


「良かった……アリス様!」


「くそがぁ! もう魔法なんていらない! 全員引きちぎってやる!」


 血眼になった【魔蛇】。確実に冷静さを欠いているわね。これなら……。


「『飛翔!』」


 一旦飛んで上から柚子のサポートね。


「ふふっ。はははっ!!!」


「なっ!」


【魔蛇】が尻尾をバネに大跳躍。わたくしと同じ高度まで迫ってきた。


「まずは一匹ね♡」


 腕を引き、殴る姿勢を取る、ところで……


「これを待っていたわ。『ストレージボックス!』せやぁあ!!!」


「な、に!?」


 空中で発動した『ストレージボックス』から取り出したのは、柚子へのプレゼントのつもりで購入した大剣。取り出すと同時に【魔蛇】の胴を切り裂いた!


「柚子!」


「はい! 『紫電:瞬突!』」


「うあぁぁぁぁ!!!」


 柚子の刀が、【魔蛇】の胸を突き刺した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ロマンとユリアン、活躍しましたね。レベル差が大きいけど、それでも立ち向かっていった二人は、アリス様や柚子さんに大きく貢献したと思います。アリス様が魔蛇に首を掴まれた時のユリアンの行動はナイス…
2020/09/03 21:36 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ