103話 vs麒麟なのです
アリス様と柚子さんが走って奥へと向かわれる。それに【魔弾】は焦る様子もなく、ただ見つめている。
ただ、私たちが戦うべき相手、【麒麟】はどうやら違うようなのです。
「フォオーン!」
堂々と生えたツノに雷を蓄える【麒麟】。直感的にアリス様たちに攻撃を仕掛けることがわかる。
「させないのです! お前の相手は……私たちなのです!」
【麒麟】に向かって手裏剣を投げる。ロマンもすでに短剣を抜いている。ラファエルさんとやらも赤い剣を構えていた。準備万端なのです!
「フォア!」
手裏剣に全く気がついていなかった【麒麟】に手裏剣が突き刺さった。そのまま忍法をつかうのです。
「『忍法:爆裂手裏剣』」
ボン! と一回派手な爆発を起こしてみる。さぁ……どうなのです? 効くのです?
煙が晴れるとそこには……無傷の【麒麟】が悠々と立っていた。まったくの無傷だと自信を無くすのです。
でも目的は達成したのです。【麒麟】の相手はアリス様ではなく、私と伝える。それが重要なことなのです!
「さぁロマン、ラファエルさん、戦いの始まりなのですよ!」
「うん!」
「御意」
ラファエルさんという人はよくわからないのですが、強そうなのですね。
「ファラァァァァ!」
怒りの感情を込めた咆哮を見せる【麒麟】。冷静でなくなった生き物は大抵負けるのです! アリス様はいつも冷静だから勝てるのですよ?
「いくぞ[ヒノカグツチ]。最後の戦いだ」
神器だったのですね。赤い剣にさらに赤い炎が追加される。見た目はとんでもなく派手なのです……!
「まずは私が先陣を切ろう。その後に続くといい」
「わ、わかりました!」
ラファエルさんが先陣を買って出てくれた。任せられるところは任せた方がいいのですね。
「はい、任せたのです!」
私たちが任せるとニヤッと笑うラファエルさん。戦いたくてうずうずしていたのです? そういえばどこか軍人さんらしい雰囲気があるのです。
「いくぞ魔獣! 『一刀焔』」
炎の剣が2倍ほどに伸びた。あれなら比較的安全なところから大ダメージが見込めそうなのです!
「『獄炎斬』」
ラファエルさんの先陣にふさわしいド派手な攻撃が炸裂!
「フォウ!」
「なっ!」
ツノで炎の斬撃をかき消した!? 思わず感心してしまうくらいに凄かったのです……。
「ロマン、作戦"甲"でいくのです」
「うん。私たちもやらないとね」
よし、ロマンと私とコンビネーションは無敵なのです! さらにレベルまで上がった今の私たちに、敵はいないのですよ!
「じゃあ行ってくるね、ユリアン」
「任せたのです」
作戦"甲"……別名奥義作戦。私たちの奥義を連続で出す、難しい連携なのです。でも決まれば大ダメージを見込める連携技。ここで仕留めるのは難しくともダメージだけは与えておきたいところなのです。
「ロマン!」
「うん。『忍法:潜風脚』」
その名の通り風に乗って速度を上げるロマン。
「グルゥゥ……」
流石というべきか、【麒麟】も警戒を強めたようなのですね。でもこの速さのロマンはとんでもなく強いのですよ。
「『忍法:滝登り』」
瞬時に【麒麟】の足元へ潜り込んだロマンは今度は足を踏み込んで空へ向かってジャンプをする。短剣を【麒麟】の肉に差し込みながらのジャンプ。決まったのです!
「フォ!?」
よし、【麒麟】がよろめいた! 今なのです! 私もそろそろ準備を……
「新しい奥義、お見せします。『奥義:一極刺斬』」
ロマンが選んだ差し込む場所は、ツノ。硬いツノにロマンの短剣が大きな傷をつける。
「ァアァァァァァァ!」
よほどツノが大事なのか、大声をあげて怒り狂う【麒麟】。ロマンの奥義は強力でも使用後の隙が大きい。だから私の技でカバーするのです!
「作戦"甲"開始! 『忍法:分裂手裏剣』」
2つ手裏剣を投げる。もちろんその手裏剣は瞬時に4つに分裂。さぁ、ここから奥義なのです。
「新奥義発動なのです! 『奥義:風車』」
4つの手裏剣が吹き荒れる風をどんどん吸収して大きくなっていく。これが私の新奥義なのです。
風を吸収した手裏剣は力を増し、巨大化し、【麒麟】の首を落とさんと前へと進んでいく。そして何より大事なのはふんわりとした風を起こしてロマンの戦線離脱を手助けすること。これこそ連携なのです!
「ロマン、お疲れ様なのです」
「うん。ありがとう、ユリアン」
ロマンの笑顔……いいのです!
「元気100倍なのですよ! そのまま突き進むのです!」
巨大な4つの風手裏剣を前に、【麒麟】は動こうとしない。諦めたのです? ……いや、違う。何か溜めているんだ。力を溜めてはじき返す気なのです!
「フォオオオオオオオ!」
思いっきり叫ぶ【麒麟】。ひび割れたツノが輝き、魔力が集中しているのがわかる。そのまま一気に魔力を解放して私の手裏剣とぶつかった。
「ぐっ……なんて威力なのです!?」
このままじゃ押し切られる……まずいのです!
「よくやったご両人。あとは任せてくれ」
「ら、ラファエルさん!?」
確認も何もせず突っ込んでいってしまったのです! どうする気なのです?
「素晴らしい技だ。この風に、炎を加えよう。 『獄炎斬』」
4つの手裏剣すべてにラファエルさんの魔力が練りこまれたのを感じた。あったかいのです……。
「名付けて……『奥義:火焔手裏剣』」
勝手に名付けられたのです! ま、まぁいいでしょう。そのまま……いけぇ!
4つの炎の手裏剣が【麒麟】の魔力を押し切った。私とラファエルさんの力。それにロマンがツノを壊してくれたおかげなのです!
「いっけぇ! なのです」
「お願い!」
「フォオオオオ!?」
4つの手裏剣が魔力を切り裂き、【麒麟】の本体に突き刺さった。そのまま【麒麟】は地に伏して倒れる。
「私たちの……勝ちなのです!」
あとはお願いするのですよ、アリス様、柚子さん!
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